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2021年02月01日

【進化の過程で捨て去られた】希少糖


 希少糖とは、自然界での存在量が少ない単糖(最小単位の糖)や糖アルコールのことを指し、50種類以上あります。アルロース、アロース、グロース、イドース、タロースいった単糖、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコールが代表的な希少糖です。昨今これらの希少糖には、人に役立つさまざまな生理活性があることが解明されつつあります。





 これまであまり研究されていなかった希少糖の生理活性が、次々に解明され、食品関連、医療関連などさまざまな市場への用途開発に向け、研究が進展しています。進化の過程で捨て去られ、意味のないものと考えられていた希少糖は、今後活躍の場が増えようとしています。





 アルロースの甘味度は、砂糖の70%程度で、清涼感があるキレのいい甘さがあります。アルロースは体内の酵素で分解できず、エネルギーを生み出すことができません。アルロースに期待される生理活性としては、食後の血糖値の上昇抑制、肥満の予防、動脈硬化の予防などがあります。アロースの甘味度は、砂糖の80%程度で、砂糖によく似た自然な味質を有しています。カロリーはほとんどありません。期待される生理活性としては、活性酸素の除去、血圧の上昇抑制、臓器虚血障害保護作用、破骨細胞の分化抑制などです。タガトースの甘味度は、砂糖の90%程度です。期待される生理活性としては、虫歯予防、血糖値上昇抑制、大腸がん抑制、プレバイオティクス効果などです。





 キシリトールは、糖アルコールの中で最も甘く、砂糖と同じ甘味度を持っています。キシリトールは溶けるときに熱を奪うので、口に含むとスーッとした冷たい感覚があります。キシリトールを始めとする糖アルコールは、むし歯の原因となりません。糖アルコールからは、口の中で歯を溶かすほどの酸はつくられないためです。また、キシリトールは甘みが強いので、その甘味により唾液も出やすくなります。酸をつくらないこと、唾液の分泌を刺激して酸を中和することが、キシリトールがむし歯の原因にならない理由です。さらにキシリトールをガムやタブレットの形で一定期間以上口の中に入れると、むし歯の原因となる歯垢が付きにくくなるだけでなく、歯の再石灰化を促し、歯を固くします。





 エリスリトールは、きのこ、果物、ワイン、しょう油、みそなどに含まれる糖アルコールです。ぶどう糖を原材料として、酵母で発酵させて製造します。エリスリトールは、体内で分解されないため、代謝されることはありません。経口摂取したエリスリトールの90%以上は尿に排出されます。エリスリトールは、水に溶かしたときに熱を奪う特性を持つため、冷感のあるスッキリとした甘さとなります。また、エリスリトールは、むし歯の大きな原因であるミュータンス菌に利用されないため、虫歯の原因となる酸が生成せず、虫歯になりにくい甘味料としても利用されています。エリスリトールは、大量摂取すると体調や体質により、お腹がゆるくなる緩下作用があります。



希少糖


 希少糖とは、自然界での存在量が少ない単糖(最小単位の糖)や糖アルコールのことを指し、50種類以上あります。自然界の単糖は、その多くがぶどう糖であり、ほかに果糖、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボースなどが多く存在しています。これらはエネルギー源として利用されるため、生物の進化とともに大量に存在しています。





 一方、微量ながらアルロース、アロース、グロース、イドース、タロースいった単糖、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコールが代表的な希少糖です。自然界に少ないことは、生物の進化の過程であまり必要とされてこなかったと理解されており、その存在の理由が謎でした。しかし、昨今これらの希少糖には、人に役立つさまざまな生理活性があることが解明されつつあります。





 既に日本で幅広く認知されている希少糖として、虫歯予防に効果があるとされるキシリトール、低カロリー甘味料として市販されているエリスリトールがあります。これらの製品は、天然の糖質をもとに酵母による醗酵、反応を利用して工業的につくられた糖アルコールです。





 アルロースやアロースは、大量生産がこれまで難しい希少糖でしたが、国内の大学で生産方法についての研究が進み、新しい酵素の発見によって量産化に成功しました。こうしてつくられた希少糖のさまざまな機能について、日々研究がなされています。



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希少糖の可能性


 これまであまり研究されていなかった希少糖の生理活性が、次々に解明され、食品関連、医療関連などさまざまな市場への用途開発に向け、研究が進展しています。進化の過程で捨て去られ、意味のないものと考えられていた希少糖は、今後活躍の場が増えようとしています。





 カロリーの過剰摂取による肥満や生活習慣病といった人類社会の課題解決に向けて、希少糖は一役を担う可能性を秘めています。





・アルロース





 アルロースの甘味度は、砂糖の70%程度で、清涼感があるキレのいい甘さがあります。アルロースは糖の一種なので、体内で従来の糖代謝の仕組みに入ろうとしますが、体内の酵素で分解できず、その結果エネルギーを生み出すことができないため、過剰な糖摂取による健康課題を持つ人にとって、好ましい生理活性を発揮することが期待されます。アルロースそのものにカロリーはほとんどなく、これは希少糖に共通した特徴です。アルロース1gあたり0.4kcalで、ぶどう糖や果糖は1gあたり4.0kcalであることから、エネルギー量は10分の1であり、低カロリー甘味糖質と言えます。





 希少糖は自然界での存在量が極めて少ないにもかかわらず、普段の食事で全く口にしていないというわけではありません。ウスターソース、カラメルソース、黒糖、メープルシロップ、レーズンなど普段の食事にもアルロースは含まれています。しかし、その量はとても少なく、期待されているような生理活性を得られるほどの量ではありません。





 単糖のアルロースは、化学式で書くとC6H12O6で、ぶどう糖、マンノース、ガラクトースなどと同じですが、その構造に違いがあります。





 アルロースに期待される生理活性としては、食後の血糖値の上昇抑制、肥満の予防、動脈硬化の予防などがあります。





・アロース





 アロースの甘味度は、砂糖の80%程度で、砂糖によく似た自然な味質を有しています。カロリーはほとんどありません。





 期待される生理活性としては、活性酸素の除去があげられます。アロースの活性酸素除去作用はビタミンCやビタミンEなど還元力による抗酸化作用と異なり、さまざまなストレスを受けたときに細胞から活性酸素が発生することを抑制します。そのほかに収縮期血圧及び拡張期血圧の上昇抑制、臓器虚血障害保護作用、破骨細胞の分化抑制などの働きがあることが既に報告されています。こうした働きから、神経変性疾患、脳梗塞、心筋梗塞、高血圧症などへの効果が期待されています。 また、糖は合成化学薬品に比べて副作用も極めて少ないと考えられています。





・タガトース





 天然に存在する希少糖の一種で、ピンポンノキ属の熱帯植物に存在するほか、発酵させた乳製品などにも含まれています。砂糖に近い甘さで、甘味度は砂糖の90%程度です。エネルギー量は1gあたり2.0kcalとなります。乳糖を原材料とした極めて安全性の高い糖で、海外では食品として使用されています。





 期待される生理活性としては、虫歯予防、血糖値上昇抑制、大腸がん抑制、プレバイオティクス効果などです。





 化学式は、果糖と同じで、構造が一部異なります。





・キシリトール





 キシリトールは、糖アルコールの中で最も甘く、砂糖と同じ甘味度を持っています。キシリトールは溶けるときに熱を奪うので、口に含むとスーッとした冷たい感覚があります。





 ミントの味によく合うことから、キシリトールを使ったお菓子には、ミント味が多く見られます。また、果物の味をより新鮮にする効果、苦味を消す効果もあります。さらに、冷却効果があることから、布地に応用した夏用の肌着や寝具、そして化粧品も市販されています。





 キシリトールを始めとする糖アルコールは、むし歯の原因となりません。糖アルコールからは、口の中で歯を溶かすほどの酸はつくられないためです。ソルビトールやマルチトールといった糖アルコールからは、歯垢(プラーク)の中で少量の酸ができますが、キシリトールからは、酸が全くできません。また、キシリトールは甘みが強いので、その甘味により唾液も出やすくなります。酸をつくらないこと、唾液の分泌を刺激して酸を中和することが、キシリトールがむし歯の原因にならない理由です。





 キシリトールをガムやタブレットの形で一定期間以上口の中に入れると、むし歯の原因となる歯垢が付きにくくなるだけでなく、歯の再石灰化を促し、歯を固くします。さらに、キシリトールには、むし歯の大きな原因であるミュータンス菌の活動を弱める働きも持っています。このような働きは、他の甘味料には見られない、キシリトールだけの効果です。





・エリスリトール





 エリスリトールは、きのこ、果物、ワイン、しょう油、みそなどに含まれる糖アルコールです。ぶどう糖を原材料として、酵母で発酵させて製造します。





 エリスリトールを経口摂取すると、大半が小腸で吸収され、血中に移動しますが、体内に分解する酵素がないため、代謝されることはありません。経口摂取したエリスリトールの90%以上は尿に排出されます。そのため、日本ではカロリーゼロの甘味料として知られており、血糖値を意識した食事にも使用されています。





 エリスリトールは、水に溶かしたときに熱を奪う特性を持つため、冷感のあるスッキリとした甘さとなります。また、エリスリトールは、むし歯の大きな原因であるミュータンス菌に利用されないため、虫歯の原因となる酸が生成せず、虫歯になりにくい甘味料としても利用されています。エリスリトールは、ガムやキャンディ、清涼飲料水などに使用されています。





 エリスリトールは、大量摂取すると体調や体質により、お腹がゆるくなる緩下作用があります。体重60kgの成人男性であれば、摂取限度量は1日あたりおおよそ40gとなります。



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まとめ


 希少糖とは、自然界での存在量が少ない単糖(最小単位の糖)や糖アルコールのことを指し、50種類以上あります。アルロース、アロース、グロース、イドース、タロースいった単糖、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコールが代表的な希少糖です。昨今これらの希少糖には、人に役立つさまざまな生理活性があることが解明されつつあります。





 これまであまり研究されていなかった希少糖の生理活性が、次々に解明され、食品関連、医療関連などさまざまな市場への用途開発に向け、研究が進展しています。進化の過程で捨て去られ、意味のないものと考えられていた希少糖は、今後活躍の場が増えようとしています。





 アルロースの甘味度は、砂糖の70%程度で、清涼感があるキレのいい甘さがあります。アルロースは体内の酵素で分解できず、エネルギーを生み出すことができません。アルロースに期待される生理活性としては、食後の血糖値の上昇抑制、肥満の予防、動脈硬化の予防などがあります。アロースの甘味度は、砂糖の80%程度で、砂糖によく似た自然な味質を有しています。カロリーはほとんどありません。期待される生理活性としては、活性酸素の除去、血圧の上昇抑制、臓器虚血障害保護作用、破骨細胞の分化抑制などです。タガトースの甘味度は、砂糖の90%程度です。期待される生理活性としては、虫歯予防、血糖値上昇抑制、大腸がん抑制、プレバイオティクス効果などです。





 キシリトールは、糖アルコールの中で最も甘く、砂糖と同じ甘味度を持っています。キシリトールは溶けるときに熱を奪うので、口に含むとスーッとした冷たい感覚があります。キシリトールを始めとする糖アルコールは、むし歯の原因となりません。糖アルコールからは、口の中で歯を溶かすほどの酸はつくられないためです。また、キシリトールは甘みが強いので、その甘味により唾液も出やすくなります。酸をつくらないこと、唾液の分泌を刺激して酸を中和することが、キシリトールがむし歯の原因にならない理由です。さらにキシリトールをガムやタブレットの形で一定期間以上口の中に入れると、むし歯の原因となる歯垢が付きにくくなるだけでなく、歯の再石灰化を促し、歯を固くします。





 エリスリトールは、きのこ、果物、ワイン、しょう油、みそなどに含まれる糖アルコールです。ぶどう糖を原材料として、酵母で発酵させて製造します。エリスリトールは、体内で分解されないため、代謝されることはありません。経口摂取したエリスリトールの90%以上は尿に排出されます。エリスリトールは、水に溶かしたときに熱を奪う特性を持つため、冷感のあるスッキリとした甘さとなります。また、エリスリトールは、むし歯の大きな原因であるミュータンス菌に利用されないため、虫歯の原因となる酸が生成せず、虫歯になりにくい甘味料としても利用されています。エリスリトールは、大量摂取すると体調や体質により、お腹がゆるくなる緩下作用があります。



posted by Kaoru at 04:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の成分
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