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2020年12月25日

【細胞死】アポトーシスとネクローシスに関与する食材


 細胞死には、アポトーシス(予定されている能動的な細胞死)とネクローシス(細胞壊死)との2種類があります。アポトーシスは、多細胞生物の細胞で増殖制御機構として管理、調節された細胞死です。ほとんどの場合、DNAの断片化を伴い、遺伝子によって制御されています。一方、ネクローシスは栄養不足、毒、外傷などの外的環境要因により起こる受動的細胞死です。





 アポトーシスにおいて、細胞はサイズの急速な縮小に続き、隣接細胞から離れ、DNAの断片化、細胞の断片化が起こります。細胞膜の機能は保たれたまま、白血球の一種であるマクロファージなどがこの細胞を貪食し、細胞内容物の流出は起こりません。このため、内容物の流出が起こるネクローシスと異なり、炎症を伴いません。ネクローシスの場合は、通常外部からの作用で細胞が破壊されますので、細胞の内容物が周囲に拡散し、この状態を炎症と言います。





 体内ではさまざまな細胞が常に分裂し、次々と新たな細胞を産み出しています。その一方で、役目を終えた細胞や寿命を迎えた細胞は、アポトーシスを起こします。このようなアポトーシス細胞は、マクロファージなどにより貪食、除去されることによって体内に蓄積されないように制御されています。アポトーシス細胞が体に悪影響を及ぼすことなく処理されるメカニズムは、生体の恒常性の維持に欠かせない重要なシステムのひとつです。一方、このシステムに破綻が生じると、アポトーシス細胞は体内に残存することになり、残存したアポトーシス細胞は、やがてネクローシスに陥いります。ある研究によると、年をとった動物のマクロファージは、アポトーシス細胞を貪食する能力が低くなっていること、老化した動物は多くのアポトーシス細胞が生体内に残存し、ネクローシス細胞へと変化していることが明らかとなりつつあることから、年をとるとアポトーシス細胞に対する脅威に晒されやすいことになります。





 食品の成分のうち、エビやカニの甲羅、サケなどの赤い部分の色素であるアスタキサンチンには、神経細胞のアポトーシスを抑制する効果があることが分かってきました。また、動物実験の結果から、アポトーシス制御機構に異常が生じ、制御できない細胞を死滅させる可能性のある食材として、ショウガ、ウコン、にんにく、ブロッコリー、大豆、お茶などが報告されています。これら食材は、アポトーシス作用に加え、抗酸化作用、免疫機能向上、抗炎症作用、エストロゲン作用などを併せ持っています。





 バランスの優れた食生活に加え、これらの食材を取り入れることで、いつまでも健康的な日々を過ごすことができるかもしれません。



アポトーシスとネクローシス


 細胞死には、アポトーシス(予定されている能動的な細胞死)とネクローシス(細胞壊死)との2種類があります。アポトーシスは、多細胞生物の細胞で増殖制御機構として管理、調節された細胞死です。ほとんどの場合、DNAの断片化を伴い、遺伝子によって制御されています。一方、ネクローシスは栄養不足、毒、外傷などの外的環境要因により起こる受動的細胞死です。



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 アポトーシスにおいて、細胞はサイズの急速な縮小に続き、隣接細胞から離れ、DNAの断片化、細胞の断片化が起こります。細胞膜の機能は保たれたまま、白血球の一種であるマクロファージなどがこの細胞を貪食し、細胞内容物の流出は起こりません。このため、内容物の流出が起こるネクローシスと異なり、炎症を伴いません。アポトーシスは、おおよそ2〜3時間で生じ、処理されることになります。





 体内では、さまざまな臓器あるいは組織の余分な細胞の除去、がん化した細胞や内部に異常を起こした細胞の除去、自己抗原に反応する細胞の除去などに重要な役割を果たしています。人体の細胞において作用しているアポトーシスの具体的な例としては、胎児における手足の指の形成、胎児における尾の部分の消失、目の水晶体における透過性の確保、脳内における効率的な中枢神経システムの形成、ウイルスに感染した細胞の除去、がん細胞化などの重大な遺伝子異常をきたした細胞の除去、外敵のみを撃退する適切な免疫システムの構築などです。また、オタマジャクシからカエルに変態するときに尻尾がなくなりますが、これは尻尾の細胞がアポトーシスを起こして分解されるからです。





 がん細胞では、正常細胞と異なりアポトーシス制御機構に異常が生じ、細胞は無限に分裂増殖します。多くの抗がん剤の作用機構は、がん細胞のアポトーシス誘導によるものとされています。





 アポトーシスを起こす共通経路は、活性部位にシステインを持つカスパーゼという酵素が関与しています。





 ネクローシスは、壊死(えし)とも呼ばれます。例えば、外傷などの怪我で細胞膜が破損、ウイルスの感染、脳梗塞や心筋梗塞などのように血管が詰まって、生存に必要な酸素の供給がストップすることで、細胞が突然死んでしまう現象を指します。





 ネクローシスの場合は、通常外部からの作用で細胞が破壊されますので、細胞の内容物が周囲に拡散します。この状態を炎症と言い、周囲の細胞が炎症性の生理活性物質などを放出して、異常事態が発生したことを体に伝えます。





 原因や周囲の状況により、ネクローシスは凝固壊死(組織が凝固した状態で壊死)、融解壊死(組織が液状になった状態で壊死)、壊死した組織が外界と接して変色する壊疽(えそ)があります。植物は部分的にネクローシスを起こして、他の健全な部分への病原体の侵入を防ぐことがあります。



アポトーシスと加齢


 体内ではさまざまな細胞が常に分裂し、次々と新たな細胞を産み出しています。その一方で、役目を終えた細胞や寿命を迎えた細胞は、アポトーシスを起こします。このようなアポトーシス細胞は、マクロファージなどにより貪食、除去されることによって体内に蓄積されないように制御されています。貪食はアポトーシス細胞が体内に出現するとすみやかに行われ、アポトーシス細胞は直ちに除去されます。アポトーシス細胞が体に悪影響を及ぼすことなく処理されるメカニズムは、生体の恒常性の維持に欠かせない重要なシステムのひとつです。





 一方、このシステムに破綻が生じると、アポトーシス細胞は体内に残存することになり、残存したアポトーシス細胞は、やがてネクローシスに陥いります。ネクローシスに陥った細胞は、細胞膜の破壊に伴い、細胞内容物を放出します。細胞内容物の一部は、さまざまな細胞に働きかけ、炎症を引き起こすきっかけとなります。この炎症が、多くの疾病の治癒遅延や悪化、自己免疫疾患の原因になると考えられています。





 ある研究によると、年をとった動物のマクロファージは、若い動物に比べてアポトーシス細胞を貪食する能力が低くなっていること、老化した動物は多くのアポトーシス細胞が生体内に残存し、ネクローシス細胞へと変化していることが明らかとなりつつあります。この結果は、年をとるとアポトーシス細胞に対する脅威に晒されやすいことを意味します。



アポトーシスに影響を与える食材の成分


 エビやカニの甲羅、サケなどの赤い部分の色素であるアスタキサンチンには、神経細胞のアポトーシスを抑制する効果があることが分かってきました。また、神経細胞のアポトーシスをもたらすDHAヒドロペルオキシドという物質は、その過程で活性酸素を生成します。アスタキサンチンは、発生する活性酸素も除去します。





 また、動物実験の結果から、アポトーシス制御機構に異常が生じ、制御できない細胞を死滅させる可能性のある食材が報告されています。これらの食材は、アポトーシス作用に加え、抗酸化作用、免疫機能向上、抗炎症作用、エストロゲン作用などを併せ持っています。具体的には、ショウガに含まれるジンゲロールやショウガオール、ウコンに含まれるクルクミン、にんにくのアリシンやジアリルジスルフィド、ブロッコリーやカリフラワー、キャベツ、ケールなどのアブラナ科の野菜に含まれるスルフォラファン、きな粉などの大豆製品に含まれる大豆イソフラボン、お茶のエピガロカテキンガレート、トマトのリコピン、オリーブオイルのオレウロペインやチロソールなどです。





 バランスの優れた食生活に加え、これらの食材を取り入れることで、健康的な日々を過ごすことができるかもしれません。



1692848_s.jpg


まとめ


 細胞死には、アポトーシス(予定されている能動的な細胞死)とネクローシス(細胞壊死)との2種類があります。アポトーシスは、多細胞生物の細胞で増殖制御機構として管理、調節された細胞死です。ほとんどの場合、DNAの断片化を伴い、遺伝子によって制御されています。一方、ネクローシスは栄養不足、毒、外傷などの外的環境要因により起こる受動的細胞死です。





 アポトーシスにおいて、細胞はサイズの急速な縮小に続き、隣接細胞から離れ、DNAの断片化、細胞の断片化が起こります。細胞膜の機能は保たれたまま、白血球の一種であるマクロファージなどがこの細胞を貪食し、細胞内容物の流出は起こりません。このため、内容物の流出が起こるネクローシスと異なり、炎症を伴いません。ネクローシスの場合は、通常外部からの作用で細胞が破壊されますので、細胞の内容物が周囲に拡散し、この状態を炎症と言います。





 体内ではさまざまな細胞が常に分裂し、次々と新たな細胞を産み出しています。その一方で、役目を終えた細胞や寿命を迎えた細胞は、アポトーシスを起こします。このようなアポトーシス細胞は、マクロファージなどにより貪食、除去されることによって体内に蓄積されないように制御されています。アポトーシス細胞が体に悪影響を及ぼすことなく処理されるメカニズムは、生体の恒常性の維持に欠かせない重要なシステムのひとつです。一方、このシステムに破綻が生じると、アポトーシス細胞は体内に残存することになり、残存したアポトーシス細胞は、やがてネクローシスに陥いります。ある研究によると、年をとった動物のマクロファージは、アポトーシス細胞を貪食する能力が低くなっていること、老化した動物は多くのアポトーシス細胞が生体内に残存し、ネクローシス細胞へと変化していることが明らかとなりつつあることから、年をとるとアポトーシス細胞に対する脅威に晒されやすいことになります。





 食品の成分のうち、エビやカニの甲羅、サケなどの赤い部分の色素であるアスタキサンチンには、神経細胞のアポトーシスを抑制する効果があることが分かってきました。また、動物実験の結果から、アポトーシス制御機構に異常が生じ、制御できない細胞を死滅させる可能性のある食材として、ショウガ、ウコン、にんにく、ブロッコリー、大豆、お茶などが報告されています。これら食材は、アポトーシス作用に加え、抗酸化作用、免疫機能向上、抗炎症作用、エストロゲン作用などを併せ持っています。





 バランスの優れた食生活に加え、これらの食材を取り入れることで、いつまでも健康的な日々を過ごすことができるかもしれません。



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