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走る俺たち

中学生になっても、結局極真に入門は出来なかった。
親はかたくなに許してくれなかった。
ならば何か別の格闘技と思ったが、柔道や剣道だけで、その当時俺がやりたいと思う格闘技を教えている所は近所に無かった。せめてボクシングやキックボクシングなどのジムでもあれば良かったのだが。

極真に入ると心に決めていたので、それまでの筋トレのつもりで中学の陸上部に入った。
俺の通っている中学に格闘技系の部活は無かった。

小学生の時は運動が嫌いで苦手だった俺は、走るのもあまり早くなかったので、競技場に行っては部活の時間中トラックを何周も走らされているだけだった。

いつの間にか中、長距離の選手にされていた。

今は走るのも好きだし、ベアフットランニングなどとても楽しいと思えるが、当時はただただ苦しいだけで、初めて味わう内臓系の苦痛にひたすら耐えていた。
酸欠状態で失禁しそうになったりする、体の反応に驚いたりしていた。

それもこれもどんなトレーニングよりも過酷で厳しいと噂され、梶原一騎から刷り込まれた、極真の稽古に耐えられるようになるため、陸上部の退屈でつらい練習も耐えた。

時々友達や先輩などと空手の話しになるのだが、俺は大山倍達の著書を読み漁って、知識だけは膨大だったので、ここぞとばかりに喋りまくっていた。

ところが息吹の説明で、やって見せたら先輩たちは大爆笑する。

大山倍達曰く、「息吹を正しく行い、息吹の頂点ではどんな攻撃を受けてもダメージは無い」という説明を俺は丸呑みに信じ、自分でも息吹らしきものを、映画「地上最強のカラテ」で見たイメージでよくやっていた。

今のようにすぐに動画で確認なんか出来ないので、本の分解写真と映画でやってたみたいに「コォオオオ」と喉をしぼってまねしてみるしかなかった。

しかし、間違っているとも合っているとも思えなかった。何より攻撃されれば必ずダメージを受ける。じゃこの息吹は間違っているのか。よく解らなかったが、友達や先輩からは笑われてしまった。「じゃ、殴ってみろ」とは言えない。なにしろ空手をやったことも無いのだから。
知識だけはある、単なる極真ファンだった。

後年、息吹に関しては益々疑問が深まった。極真でやる喉を絞って「コォオオ」と息を吐くやり方がどれほどの鍛錬効果があるのか疑問だった。極真を学んだ時は内蔵を強化して身体を締める為と教わってその方法でずっとやってきたが、疑問は解消されなかった。

一つヒントになったのは沖縄空手の宇城憲治先生のサンチンを見たとき「ハァーハッ」という感じでやっていて、喉を絞ったり、呼吸を響かせたりはしていなかった。

もともとは息吹はあんなに喉を絞めたり呼吸音を響かせたりするものでは無かったんじゃないのか、と今は思っている、そして鍛錬効果はスピードに出るんじゃないかと仮説を立てているが、本当の所はまだ解らない、まだまだ道は遠いな。

シャドーボクサー


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プロフィール

ハイキック
ほんとは出来ないハイキック。 股関節を痛めてしまって。 でも、まだまだ鍛えることはあきらめていません。 

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