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2019年04月18日

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える8

3 まとめ

 井上靖の「わが母の記」に登場する男と女についてデータベースから心理学統計による人物評価をしてみると、不安度に関して差があることが分かった。

【参考文献】

井上靖 わが母の記 講談社文庫 2012
実吉綾子 心理学統計入門 技術評論社 2013
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 井上靖の「わが母の記」のデータベース 2017

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える8

3 まとめ

 井上靖の「わが母の記」に登場する男と女についてデータベースから心理学統計による人物評価をしてみると、不安度に関して差があることが分かった。

参考文献

実吉綾子 心理学統計入門 技術評論社 2013
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風社 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教学研究会上海分会論文集 2018  
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会上海分会論文集 2019    
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 中国日语教学研究会上海分会論文集 2020
花村嘉英 井上靖の「わが母の記」のデータベース 2017

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える7

1 最初は井上靖と桑子とで不安度に差がないと予測する。両者の平均値を取ると、井上靖 1.1、桑子 1.3になる。この差は誤差の可能性がある。 
2 具体度の1、2は独立変数であり、それにともなう不安度の大小は、従属変数になる。
3 独立変数そのものの1、2が要因で、独立変数の実際の値である不安度が水準になる。
4 ここでは、どちらの水準も同じ標本からデータを集めているため、具体度という要因は、参加者内要因になる。
5 得られた有意確率(p値)を有意水準と比較する。危険率は通常5%未満のため、ここではt検定を採用する。
6 t検定では、二つの平均の差を表す統計量(t値)、データの規模を表す自由度(df)、p値(p-value)を説明する。
[不安度のt検定]
井上靖 1.1、桑子 1.3、よってt値=0.2。
自由度は、独立した標本の個数から1引いたものである。よってdf=8。
p値は0.02にする。ここでは5%以上のため、帰無仮説を採用し有意な差があるとする。


花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて井上靖の『わが母の記』を考える」より

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える6

具体度2
・「東京時代も三十ぐらいのときのことが一番多かったようね。いまも同じだとすると三十ぐらいでとまっているのかしら。たいへんね。赤ちゃんになるまで」靖弱い不安1、桑子強い不安1
・「同じことさえ繰り返さなかったらほんとにいいおばあちゃんだけど」弱い不安1、弱い不安1 
・「おばあちゃんも、とうとう姉さんを憤らせてしまったわね。でも、よく今日まで続いて来たようなものよ」弱い不安1、弱い不安1 
・「おばあちゃんは今日はご機嫌よ。昨日は少しいけないおばあちゃんだったけど、今日はお利口さんなの、ねえ」弱い不安1、弱い不安1
・「おばあちゃん、わたしたち、おばあちゃんの話をしているのよ」弱い不安1、弱い不安1 

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて井上靖の『わが母の記』を考える」より

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える5

2.3 「わが母の記」の不安度

 「わが母の記」は、認知症を患う作者の母が年齢とともに様々な事件を引き起こし、家族を振り回し、次第に衰えていく様子が描かれている。ここでは、この小論の研究テーマ、性別による不安度の違いついて、作成したデータベースを基に考察していく。

解答 性別による不安度の違い
具体度1
・母にしてみれば東京などにすむより知人も多い郷里の生活の方がいいに決まっていた。靖弱い不安1、桑子強い不安2
・母が弟と妹に連れられて東京の家に入って来た時、私は母が別人のようにやつれているのを見た。強い記憶2、強い不安2
・そんな祖母と孫娘の会話を聞いていると、もう心配はなく万事はうまくいくだろうと、私には思われた。弱い不安1、弱い不安1
・「さあ、おばあちゃん、同じことを何度でも言っていいよ。こちらは酔っているから今夜は一向にお応えない」弱い不安1、弱い不安1
・私は思わず笑い出した。私は自分が何を言ったか覚えていなかったし、勿論母からそのようなことを言われたことも覚えていなかった。弱い不安1、弱い不安1

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて井上靖の『わが母の記』を考える」より

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える4

2.2 実験計画

【研究テーマ】
質問1 性別による不安度の違い。
帰無仮説 男性と女性とで不安度に差がない。
対立仮説 男性と女性とで不安度に差がある。
【実験計画】
独立変数 実験や調査をする人が仮説を検証するために使用する変数。原因と結果でいうと原因である。
従属変数 独立変数の操作に応じて変化すると考えられる変数。原因と結果でいうと結果である。
【要因と水準】
要因 実験者が使用する変数。独立変数そのもの。
水準 実験者が使用する種類。独立変数が実際にとる値。
【参加者間要因と参加者内要因】
参加者間要因 水準のデータが異なる標本から集められる場合。
参加者内要因 水準のデータが同じ標本から集められる場合。
【有意確率】
帰無仮説を前提としたときに、誤差から偶然ある程度の差が標本に生じる確率のこと。危険率とかP値という。また、誤差には、本当はないのに誤って誤差があるとする第一種と誤差があるのに誤ってないとする第二種とがある。実吉(2013)では、5%水準を基準にしている。

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて井上靖の『わが母の記』を考える」より

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える3

【検定の流れ】
帰無仮説と対立仮説を立てる → 独立変数と従属変数を具体的に決め、実験計画を立てる → データを取る → 実験計画に応じた統計検定を行う → 得られた有意確率(p値)を有意水準と比較する → 帰無仮説の棄却、採択を決定する

 ここで、帰無仮説とは、比較する数値の間に差がないという仮説である。対立仮説は比較する数値間に差があるとする仮説である。検定では、まず帰無仮説が正しいことを前提に検討され、帰無仮説が成り立たなければ、それを棄てて対立仮説に移り、差があるという結論にする。つまり背理法による命題の証明である。

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて井上靖の『わが母の記』を考える」より

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える2

2 心理学統計

心理学統計では、心の働きを数値化しながら客観性を計り、集計や分析を試みる。心を測定する時は、様々な要因がデータに含まれるため、データには誤差が付き物である。そのため、統計学により誤差を取り除き真の値を求めていく必要がある。そうすると、限られた人数のデータから人間一般に共通する心の働きも推測可能になる。

2.1 有意性検定

 科学では全般的に仮説を立てて検証する方法が使われる。実吉(2013)によると、検定の際に仮説が成り立つかどうかは、作成したデータから決めていく。検定の対象は、そこに有意性の差があるかどうかである。例えば、男女で不安度に差があるのかどうか、または満足度に差があるのかどうか。こうした問題に対してデータを集めながら検定すると、解答が見えてくる。

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて井上靖の『わが母の記』を考える」より

心理学統計の検定を用いて井上靖の「わが母の記」を考える1

1 先行研究との関係

データベースを作成ながら購読脳と執筆脳を分析するシナジーのメタファーの研究も次第に安定してきている。これまでにバランスの調節のための二個二個のルールに基づき多くの組み合わせを作ってきた。統計についても、バラツキ、相関関係、多変量分析と進み、今回の心理学統計を含めれば、バラツキと相関、多変量と心理という組み合わせができる。この小論では、実吉(2013)の心理学統計の検定の手法に従い、井上靖の「わが母の記」を題材にして男女の不安度について考えていく。 

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて井上靖の『わが母の記』を考える」より

中島敦の「山月記」の執筆脳について−パーソナリティ障害10

4 まとめ

 李徴は、この場面でベースとプロファイル型で外部から情報を取り込み、旧情報を基に問題未解決から問題解決へ向かっている。そのため「自尊心と自己愛性パーソナリティ障害」と「人生と思考」という組が相互に作用し、「中島敦と思考」というシナジーのメタファーが成立する。
 この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。 

【参考文献】

中島敦 山月記 青空文庫 1998 
日本成人病予防協会監修 健康管理士一般指導員通信講座テキスト ヘルスケア出版 2014
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む  華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默−ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019

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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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