シンデレラは嘲笑う。今さら得た命なんて何になる?
どうせなら楽しく使わなきゃ。自分を馬鹿にした母と姉たち。優しいだけの間抜けな王子様。全部ぜーんぶ書き換えよう!
その為には、とても面倒くさいけど。死者の国からクソ作者にお出まし願わねば。それには供物が必要だ。
シンデレラは笑う。これから重ねる犠牲の数を数えて。
純白の正義と黒灰の卑劣。あまりにも相性は最悪で、笑えるほどに正反対。スノウの瞳は嫌悪を浮かべ、シンデレラの口元は嘲りに染まる。
許せない。殺したい。ぐちゃぐちゃにしたい。正したい。
作者の復活のためにその欲望を真綿で包み、二人は視線を交わし合った。
それは決して理解し合うことのない嫌悪の同盟。
戦いが舞う不毛な空間、ライブラリ。自分以外の全てが化物であると思ってたその場所で、少女達は邂逅する。
生を束縛されるアリス。正義に囚われるスノウ。
彼女達は出会った瞬間に理解した。お互いの思想が相容れない事を。
そして……作者を復活させる為には、目の前にいる少女を殺さねばならない事も。
正しき者を阻む事は出来ない。正しき者を罰する事は出来ない。
正善なる刃は光となり、正善なる鉄槌は秩序となる。
だから正義の名の下に。数多の命を捧げよう。
我が主を復活させる事、それこそが私の正義。
スノウは認識する。どこまでも続く黒い闇。赤く染まった雪の中。己が歩むべき道を見る。
細切れのこよりを集め一つに紡いだグリム兄弟。為すべきは恩ある主の復活ただ一つ。
その願いの前に、たとえ無数の犠牲が必要だとしても彼女は進む。
この使命、阻むモノ全てを踏みつけて。
スノウと別れたアリスは、敵を求めてライブラリ世界の中を彷徨う。
ここは巨大な森。それぞれのキャラクター達が持ち寄った様々な世界観が融合した奇妙な場所。
巨木の陰からナイトメアが現れる。自我を失った虚ろな目。奴らは乾いた喉を潤したいかのように、他者の命を求める。
アリスは剣を抜く。殺した数を数えるのは、とっくの昔にやめていた。
奇妙な人形達の声が聞こえる。「キキキ……愉快愉快デス……」「囚われていますね」「作者を助ければ全てが終わると」「信じていマスネ!」
自覚していた。ただ、答えの無い虚空で彷徨う事に耐えられなかったのだ。
だから、私は戦う。たとえこの願いが束縛と呼ばれる感情の化け物だろうとも。
アリスは目覚める。漆黒の中、薄暗い音。血の匂い。
この世界がどこなのかは知らない。だが為すべき事は判っていた。自分を生み出した作者ルイス・キャロルを復活させる事。
そしてアリスは知っていた。その願いを成し遂げる為には他のキャラクター達を全て殺す必要があるという事を。
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