道端で、すやすや眠るいばら姫。そこに赤ずきんが通りがかった。
すやすや、すやすや。求める眠りに包まれて、幸せそうないばら姫。
それを見ていた赤ずきん。にっこり笑みを浮かべると、
さも当然というようにいばら姫に殴りかかった。
とってもとっても眠いのにいばら姫眠れない。お話の中では100年も、惰眠を貪る事ができたのに。
もう嫌!眠るの!眠らせて!
けれど押し寄せるナイトメア。姫の願いは叶いません。
ああいやだ。どうして眠らせてくれないの?
ふわあ、と小さな欠伸を1つ。眠たげな瞳を開いて、いばら姫は考える。
……眠い。ベッドから出たくない。ずっとずっと微睡んでいたい。目覚まし王子は邪魔なだけ。
――そうだ。それなら作者にお願いしてずうっと寝ていられる世界にしようっと!
その望みに必要な代償が他人の命だとしても。
あなたは兄様?いいえ、違います。あら、そうですか。死んでください。
あなたは兄様?はい、そうです。嘘はやめて。死んでください。
少女は最早、彷徨う凶器。現実逃避の、悲しい狂気。
苦しくつらい森の中。ここから連れ出してくれるのは――
ふらふら歩く、夜の森。ガサゴソ聴こえる茂みの音。
ねえ、兄様。怖いです。私に何かお話をして?……ふふふ、そんなの嘘でしょう?兄様ったら冗談ばかり。
幸せそうな笑みを浮かべて、少女は1人でお喋りをする。闇に覆われたのは道の方?それとも、少女の心でしょうか?
それは本人さえも、わからない。暗く深い迷いの森。
ある日、卑劣と妄執が出会った。
いつもの通り、シンデレラは言葉の刃を投げかける。いつもの通り、少女は鳥籠の中の首に話しかける。
一方的な言葉。噛み合わない会話。
相手を傷つけて楽しむ、卑劣を謡う灰かぶり。けれど彼女は、珍しく眉を顰めた。
少女は呟く。ここはどこ?私は誰?
ああ――私は私。愛しい兄様、御機嫌よう。
あら?なぜ武器を持たせるの?これで殺すの?誰を?どうして?作者を復活に必要だからと言われても、私には何もわかりません。
でも、兄様がそう言うのなら殺します。絞った贄の甘い血でとろけるお菓子を作りましょう。
純白の正義と黒灰の卑劣。あまりにも相性は最悪で、笑えるほどに正反対。スノウの瞳は嫌悪を浮かべ、シンデレラの口元は嘲りに染まる。
許せない。殺したい。ぐちゃぐちゃにしたい。正したい。
作者の復活のためにその欲望を真綿で包み、二人は視線を交わし合った。
それは決して理解し合うことのない嫌悪の同盟。
12時の鐘に怯える自分はもういない。魔法をかけた魔女もかぼちゃの馬車も必要ない。
彼女はそれだけの強さを手に入れた。ああ、それなのに。
この忌々しいガラスの靴だけ捨てられないのは何故だろう?
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