2017年01月03日
衝動篇〈シンデレラ〉二章
一節
ある日、卑劣と
妄執が出会った。
いつもの通り、シンデレラは
言葉の刃を投げかける。
いつもの通り、少女は
鳥籠の中の首に話しかける。
一方的な言葉。
噛み合わない会話。
相手を傷つけて楽しむ、
卑劣を謡う灰かぶり。
けれど彼女は、
珍しく眉を顰めた。
言葉で人の心を傷つけるのは簡単だ。
けれど。
言葉が通じない相手の心を
傷つけるのは難しい。
Normal
- 【グレーテル】兄様……私の愛しい兄様……
- 【シンデレラ】そいつ、もう死んでるだろ?
- 【グレーテル】ふふ、兄様。お菓子はもう駄目ですよ。
- 【シンデレラ】なあ、アンタ人の話を――
- 【グレーテル】虫歯になったら、私が抜いてあげますね。
- 【シンデレラ】……駄目だ、こりゃ。
Hard
- 【 ギシン 】【この二人ヲどう思う?
- 【 アンキ 】シンデレラが若干不利かもデス。
- 【 アンキ 】ダッテあの子ニ言葉は通じナイ。
- 【 ギシン 】【あの子ノ世界にハ兄様一人。
- 【 アンキ 】ちょっと面白味に欠けマスネ。
- 【 ギシン 】【うーん、がんばれ。シンデレラ!
二節
その夢見る瞳を曇らせて。
微笑む口元を歪ませたい。
それなのに、アイツに言葉は届かない。
三節
ねえ、兄様。愛しい兄様。
私達はいつでも一緒。
2人で1つ。兄様は私。私は兄様。
兄様、兄様、大好きです。
四節
あの虚ろな瞳を傷つけるには
どうしたらいいだろう?
何が一番有効かな?
ああ、考えるのが楽しくて仕方ない!
五節
兄様は時々お返事をしなくなる。
怒っているの?どうして?
それは、私が……
六節
じっくりゆっくり観察して。
相手の一番大切な物を、
刃で一気に斬り裂くタイミングはいつ?
七節
私の一番大切な兄様。
私があなたを守ります。
意地悪な魔女のお腹に
収めてなるものか。
八節
なあ、1つ聴いていい?
アンタの大事な兄様は、
とっくの昔に死んでいる。
――誰が、兄様、殺したの?
九節
生きている。兄様は生きている。
生きて生きて生きて生きて生きて生きて
生きて生きて生きて――
じゃあ、死んだのは、誰?
十節:前半
あなたは魔女?
そう呟いた少女の声は低い。
だったらどうする?と
口元を歪めて笑うシンデレラ。
それは軽い挑発。
ようやく自分を見た少女に
やっと届いた言葉の刃。
けれど、それは両刃の剣。
いつも空を漂う虚ろな瞳。
そこに、憎悪の炎が灯された。
押しては駄目なボタンほど、
押したくなるのは何故だろう?
それはきっと、悪魔の誘惑。
Normal
- 【グレーテル】お前が……お前が兄様を!
- 【シンデレラ】ち、ちょっと待て!倒す相手が違うだろ!
- 【グレーテル】うるさい!魔女め!竈に放りこんでやる!
- 【シンデレラ】ま、魔女はあっち!あっちの敵!な?
- 【グレーテル】魔女……殺すころすコロス!
- 【シンデレラ】あっぶな〜……ん?まさか、こいつ……
Hard
- 【 ギシン 】【シンデレラがスイッチ押しタ!
- 【 アンキ 】魔女は地雷デ、覚醒スイッチ!
- 【 ギシン 】【コレハ楽シイ事ニなってキマシタ!
- 【 アンキ 】虚妄が現実ニ帰ル時。
- 【 ギシン 】【真実が1つ、明かサレル。
十節:後半
魔女魔女魔女魔女。
魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女。
何度も何度も呟きながら
少女は敵に刃を振り下ろす。
だからこそ、気づいてしまった。
兄を殺したのは彼女なのだと。
ああ、それは何て悲しく
なんて愚かで
なんて――面白いんだろう。
虚妄の君を憐れんで、卑劣は笑う。
最高の喜劇をありがとう、と。
悲しい事実、つらい現実。
それから逃げるのは悪いこと?
――悪い、と。したり顔でいう奴は
きっと誰かの不幸を望んでる。
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