2017年01月08日
衝動篇〈ピノキオ〉四章
一節
操る糸の持ち主を探し、
ピノキオは冒険を続ける。
アッチだ、コッチだと、
手にした杖が
教える道は嘘ばかり。
従うだけのピノキオは、
疑いも無く
受け入れる。
その様子を見て、杖はゲハハと
下品に笑う。
――おや?おかしい。
気のせいか、
杖の鼻が伸びている?
嘘をついたら伸びる鼻。
一目で偽りだと分かるけど、
嘘をついた意味は何?
Normal
- 【 ピノキオ 】鼻が伸びるなら僕だよね?
- 【 ギシン 】今の君ハ人間ダカラ。
- 【 アンキ 】鼻が伸びたらクリーチャー!
- 【 ピノキオ 】そうだよね。でも、僕――
- 【 ピノキオ 】いつ、人間になったんだろう?
Hard
- 【 ギシン 】今のピノキオは人間デスネ?
- 【 アンキ 】紛うことナキ人間デスヨ?
- 【 ギシン 】星の女神様が叶えた奇跡。
- 【 アンキ 】人形を人間にした奇跡!
- 【 ギシン 】でもソレ……本当カナ?
二節
僕は、努力が嫌いです。
僕は、勉強も嫌いです。
楽できそうな話には、
呆れるほどすぐに飛びつきます。
三節
ある時は、スターになれると言われて
見世物小屋に。
でも、そこに掴まって
焼き殺されそうになりました。
四節
ある時は、遊びに行こうと誘われて
海の向こうの遊園地でロバにされ、
売り飛ばされそうになりました。
五節
僕は本当に考えなしで。
全ては他人の言うなりで。
でもゼペットじいさんは、
そんな僕を愛してくれました。
六節
……そういえば。
僕はどうして人間になれたのだろう?
七節
お馬鹿で間抜けな僕だけど。
あなたが良い子になれば、
人間にしてあげると、
星の女神は言いました。
八節
僕は、いつ良い子になったのだろう?
今の僕は、良い子だろうか?
こんなにも、他人に依存してるのに?
九節
もしかして、僕はまだ
人間になれない紛い品
なのかもしれないな……
十節:前半
ピノキオは驚愕した。
元を辿れ自分は人形。
ゼペットじいさんが削り出した
木の人形だ。
だから、同じ人形が
何体あってもおかしくない。
けれど――
目の前に現れたピノキオは
あまりにも全てが
そっくり過ぎた。
気をつけて。
ちょっとした事で気を抜くと、
すぐに代わりの人形がやってくる。
Normal
- 【 ピノキオ 】あれは僕……だよね?
- 【 ギシン 】ソノ通り!紛れもなくピノッキオ!
- 【 アンキ 】だけど、闇に染まったピノッキオ!
- 【 ピノキオ 】そんな……じゃあ……
- 【 ピノキオ 】僕もいつか、ああなるの?
Hard
- 【 ギシン 】もう一人の自分に震えてマスネ。
- 【 アンキ 】アぁ可哀想。雨に濡れた子犬ノよう!
- 【 ギシン 】ガタガタブルブルきゅーきゅー泣いて。
- 【 アンキ 】たっぷり同情を集めた後に。
- 【 ギシン 】自分が生きル為ニと言って――
- 【 アンキ 】相手を犠牲にスルのでショウ?
十節:後半
ガクン、と力が抜けるように
もう1人のピノキオは倒れ伏した。
耳を塞ぎたくなるような
暴言を吐きながら、
手にした杖が追撃する。
操られるままに、
死体に鞭を打ちながら
ピノキオは1人考える。
ああ、誰か。
この戦いの意味を教えてください。
もう1人の自分は、
バラバラに砕け散った。
闇に染まった同じ形代。
そこに己の行くを末垣間見て、
元人形だったものは
カチカチと震えだした。
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