2017年01月07日
衝動篇〈かぐや姫〉四章
一節
かぐや姫は、
自分を虐めて
くれる相手を探して
歩き続けました。
けれど、出てくるのは
弱いナイトメアばかりで、
誰もかぐや姫を
虐めてくれません。
姫は疼く体を
持てあましながら、
戦い続けなければなりませんでした。
誰にでも、虐められたいわけじゃない。
自分を虐める相手は選びたい。
そこに、喜びを見つけたい。
Normal
- 【 かぐや姫 】ああ、誰かにこの身を縛ってほしい……
- 【 ギシン 】ワー、変態ダ!ヘンタイダーッ!
- 【 かぐや姫 】ち、違います。私はただ……
- 【 アンキ 】思いっきり虐められタインデショ?
- 【 かぐや姫 】ん……
- 【 ギシン 】わぁ、頬を染めて頷いタ!変態ダー!
Hard
- 【 ギシン 】そろそろ気付いてイルのかな?
- 【 アンキ 】ソロソロ悟ってキタのかな?
- 【 ギシン 】自分を縛るホドに強いモノ――
- 【 アンキ 】自分を思いっきり虐めてくれるモノ――
- 【 ギシン 】出会えないネェ。フフフフフ……
- 【 アンキ 】理想は高いネェ。ヒヒヒヒヒッ!
二節
かつて、求婚してきた5人の貴公子。
私のご主人様に成り得るのかと、
1つ試練を課しました。
三節
石作皇子は「仏の御石の鉢」を。
けれども、彼は嘘をつきました。
四節
車持皇子には「蓬莱の宝の枝」を。
けれども、彼も嘘をつきました。
五節
右大臣阿倍御主人には「火鼠の裘」を。
けれども、彼は騙されました。
六節
大納言大伴御行には「龍の首の珠」を。
けれども、彼はあまりの苦労に
私を逆恨みするようになりました。
七節
中納言石上麻呂には「燕の子安貝」を。
けれども、彼は怪我をして、
あれよあれよと弱り果てました。
八節
私はただ、強い人が欲しかった。
強く虐めて欲しかった。
この身体をお仕置きして欲しかったのに。
九節
私を心行くまで虐めてくれる
素敵な素敵なご主人様は
いったい何処にいらっしゃるのですか?
十節:前半
強い相手を求めるかぐや姫。
その前に、願ってもない
相手が現れました。
それはドラゴン。
数ある物語に住む、
最強の幻想です。
ああ、やっと!
やっと願いが叶いますわ!
かぐや姫は瞳を潤ませて。
火照る体を
押さえるように、
その手に武器を持ちました。
たとえ相手が人間でなくとも、
求めるものを与えてくれるのならば
構わない。
強さがあるなら、構わない。
Normal
- 【 かぐや姫 】あの方、とっても強いですよね?
- 【 ギシン 】そりゃぁモウ!
- 【 アンキ 】なんてったってドラゴンですカラ!
- 【 かぐや姫 】ああ……なんて素晴らしい……!
- 【 ギシン 】ウワッ、泣いてル!?
- 【 アンキ 】ヤッパリヤッパリ変態ダーッ!?
Hard
- 【 ギシン 】望み望んダ存在にヤット出会えた?
- 【 アンキ 】圧倒的な存在にヤット出会えた!
- 【 ギシン 】サア、思う存分虐めて貰おウ!
- 【 アンキ 】骨の髄まで痺れヨウ!
- 【 ギシン 】アぁ、デモ残念。このナイトメア――
- 【 アンキ 】かぐや姫より弱いカモネ?
十節:後半
かぐや姫は泣き崩れました。
期待したお仕置き
は受けられず、
火照った体が
冷えていきます。
どうして。
どうしてみな、
私より弱いのですか?
ぽろぽろと涙を零しながら、
かぐや姫は改めて認識しました。
作者だけが、
自分を痛めつけてくれる存在
だという事を。
やっと気づいた真実は、
実に簡素で簡単で。
物語で一番強いのは誰でもない。
その作者という事だった。
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