2017年01月08日
衝動篇〈ピノキオ〉一章
一節
ピノキオは恐れる。
わけのわからない場所にいる自分を。
何をしたら良いのか、
わからない状態を。
ピノキオは恐れる。
自らが手にした武器を。
酷く醜い言葉を吐く杖を。
恐れのあまり、ピノキオは
作者に助けを求めた。
しかし、作者を蘇らせるには
他人を殺す
必要がある事を
ピノキオはまだ知らなかった。
自分の意思を持たない人形は
操り主を求めて歩き出す。
これは、人形が人間になる物語――
……だったらいいのにね。
Normal
- 【 ピノキオ 】そ、そんな!僕には出来ないよ。
- 【 ギシン 】デモ、殺さないと作者は復活シナイヨ?
- 【 アンキ 】ソレが決まり。ソレが絶対!
- 【 ピノキオ 】うう……どうしよう……
Hard
- 【 ギシン 】何事モ自分で決メル事が苦手な人形。
- 【 アンキ 】この先イッタイどうするのでショウ?
- 【 ギシン 】心配いらないデス。
- 【 ギシン 】だって彼ニハ――『杖』がアル。
- 【 アンキ 】杖……杖ネェ……フフ……ヒヒヒ……
二節
とりあえず、作者を復活させよう。
だって僕には何もできないから。
三節
作者のいない物語。
それは羅針盤を失った航海のようだ。
差し詰め僕は、漂う小船。
四節
ゲハハハハッ!
殺レヨ犯セヨ引キ裂ケヨ!
正々堂々殺セルナンテ、
コンナ機会ハ滅多ニナイゼ!
五節
殺せ、殺せと杖が煽る。
こんな武器、本当は手放してしまいたい。
けれど、1人になるのが怖くて
手放せない。
六節
嘘をつくと鼻が伸びる物語。
作者がいない今ならば、
多分嘘をついても大丈夫だろう。
だから言おう。「君が必要」と。
七節
臆病者ハ片隅デ
ガタガタブルブル震エテナッ!
敵ハ皆、尻カラ顔マデ串刺シテ
鵙ノ早贄デキアガリ!
八節
僕の邪魔をするのなら、
残念けれど戦おう。
だって今はそれしか道がない。
九節
別に望みはない。
強いて言えば、僕は誰かに
引っ張って貰いたいだけなんだ。
十節:前半
乱暴な杖と共に
ピノキオは敵を倒す。
本当は殺したくないのだと、
悲しさに顔を歪めながら、
罵詈雑言を放つ
杖に見を委ね、
ピノキオは死体の山を築く。
まるで、この戦いは
自分の意志では無い
のだと言うように。
人形は1人では動けない。
人形は1人で考えられない。
だから人形は誰かの手を求めるの。
Normal
- 【 ピノキオ 】ああ、もう嫌だなぁ……
- 【 ギシン 】デモ、倒したのは自分。
- 【 アンキ 】デモ、殺したのは自分。
- 【 ピノキオ 】違うよ!あれは杖がやったんだ。
- 【 ピノキオ 】だって、僕1人じゃ何も出来ないもの……
Hard
- 【 ギシン 】自分の手を汚したノニ。
- 【 アンキ 】自分のセイでは無いと言い張るのデスネ。
- 【 ギシン 】トんだ根性腐れ野郎♪
- 【 アンキ 】とんダ腰抜け腑抜け野郎♪
- 【 ギシン 】人形はしょせん人形なんですカネ?
- 【 アンキ 】人形ネェ……
十節:後半
ピノキオは望む。
自分以外の誰かに
道筋を決めてもらいたいのだと。
ピノキオは望む。
だから一刻も早く
作者を復活させて、
自分をどうにかしてもらおうと。
自分の意志を恐れ、
他人の意志に身を委ねる事を
強く望むは人形ゆえか。
依存
それは、ピノキオを吊る 操りの糸。
依存というカラクリ糸で
がんじがらめの憐れな元人形。
その名はピノキオ。
人間のなりそこない。
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