2017年01月08日
衝動篇〈ピノキオ〉三章
一節
ピノキオは探す。
自分の意志を任せられる存在を。
ピノキオは探す。
自分の操る糸の持ち主を。
かぐや姫は駄目だった。
では、今は誰に頼ればいいのだろう?
その時、手にした武器が唸りを上げた。
オレダ、オレヲ頼レと
がなり立てる奇妙な武器。
大層品がないな
と思いながらも、ピノキオは
意志を預ける事にした。
自分以外の誰かに頼るのは
とても簡単でとても楽。
だけど、本当にそれでいいのかな?
Normal
- 【 ギシン 】そうヤッテ、いつも誰かに頼っテル。
- 【 アンキ 】自分の意志は無いノデス?
- 【 ピノキオ 】意志なんて……僕は元々人形だし。
- 【 ギシン 】それはお話の中デノ事デショウ?
- 【 アンキ 】今は違ウ!今は自由!
- 【 ピノキオ 】自由なんていらないのになぁ……
Hard
- 【 ギシン 】今のピノキオは人間なノニ。
- 【 アンキ 】もうお馬鹿な人形ではないノニ。
- 【 ギシン 】いつまでも人形のツモリでいるのデス?
- 【 アンキ 】だってその方が楽ダカラ。管理サレル方が楽ダカラ。
- 【 ギシン 】ああ、それもアル意味人間ラシイ!
二節
オレニ任セテオケバイイ。
好キ放題ニブチ殺シ、
作者ヲ蘇ラセテヤル。
ダカラ、オマエハ黙ッテ見テナ?
三節
杖は勝手に敵を打ち倒す。
振るっているのは僕だけど、
僕の意志はそこにない。
それはとても楽で――安心できた。
四節
ゲハハハハッ!
ナイトメアハ皆殺シダ!
ドンナニ泣イテモ足掻イテモ、
無駄ダト思イ知ルガイイ!
五節
いくら敵とはいえ、殺し方が酷過ぎる。
けれど、杖に任せているのは自分。
文句を言うのは筋違いだろう。
六節
1人目ノ頭ヲ砕ク。
2人目ノ胴ヲ切リ離ス。
3人目ハ首ヲ斬ル。
4人目ハ、サアドウシヨウ?
七節
楽しそうに敵を倒していく杖だけど、
武器を振るうのは僕だから、
少しだけ気が滅入る。
殺した感覚が、手に残るから。
八節
ソウダ。殺シテイルノハオマエ。
俺に任セテ、殺スノヲ
選択シタノハオマエダ。
逃ゲテンジャネエヨ、クソ野郎?
九節
僕は倒していない。
殺しているのは武器だから。
それは僕の責任じゃないから。
僕は逃げたりしていない。
十節:前半
ピノキオは、早く作者に
復活してもらいたかった。
そうすれば、
この野蛮な杖に
頼る事もなく、
作者のペンに
全てを委ねるだけだから。
そうすれば――
こんな
恐ろしい敵とは
戦わなくて済むのだから!
頼ってばかりの人間は
いちばん大切な場面で
痛い目を見ることになる。
人形が理解するにはまだ早い?
Normal
- 【 ピノキオ 】ド、ドラゴン!?
- 【 ギシン 】物語の世界デハお決まりデスヨ?
- 【 ピノキオ 】僕の話には出て来ないよ!?
- 【 アンキ 】残念。今ハ君のお話じゃないカラネエ。
- 【 ピノキオ 】せめてサメなら何とかなるのに!
Hard
- 【 ギシン 】ドラゴン相手にどうするデスカ?
- 【 アンキ 】また杖に頼って言いなりになるダケ?
- 【 ギシン 】ソロソロ自分の意志で立ち向かってミテハ?
- 【 アンキ 】無理ムリ!だってこの子はピノッキオ。
- 【 ギシン 】得体の知れナイ杖を信ジル愚かな子!
十節:後半
何とかドラゴンを倒したピノキオは、
手にした杖に感謝を告げる。
君の事は嫌いだけれど、
君がいないと何にも出来ない。
そんなピノキオの
情けない性格を嘲笑い、
杖はガハハと下品に鳴いた。
とてもとても下劣な僕の杖。
けれど、どうしても手放せない。
だって僕は
1人で決めるのが怖いんだ……
誰かに決断を頼る人は
責任を負いたくない人。
いざという時、逃げたい人。
とってもとっても卑怯な人。
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