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2017年01月04日

衝動篇〈グレーテル〉三章

一節

ふらふら歩く、の森。
ガサゴソ聴こえる茂みの音。

ねえ、兄様。怖いです。
私に何かお話をして?
……ふふふ、そんなの嘘でしょう?
兄様ったら冗談ばかり。

幸せそうな笑みを浮かべて、
少女は1人でお喋りをする。
闇に覆われたのはの方?
それとも、少女の心
でしょうか?

それは本人さえも、わからない。
暗く深い迷いの森。


居心地の良い歪な森の中。
ゆったりふわふわ漂って。
気づけばそこは、絶望の底なし沼。


Normal

  • 【グレーテル】ねえ兄様、今度は何を作りましょうか?
  • 【グレーテル】甘いクッキー?それともマフィン?
  • 【グレーテル】ああでも食べ過ぎは駄目ですよ?
  • 【グレーテル】だって魔女に見つかってしまうから。
  • 【 ギシン 】ズット1人で話してるネー。
  • 【 アンキ 】キモい!キモいヨー!

Hard

  • 【 ギシン 】首ダケ兄様の口ヲこじ開けお菓子を詰めル。
  • 【 アンキ 】ヤってる事は魔女と変わらナイね?
  • 【 ギシン 】兄様は首ダケだから太れナイのにネ。
  • 【 アンキ 】わかっちゃいるケドヤメられナイ♪
  • 【 ギシン 】わかっちゃいるケドワカリたくナイ♪

二節

兄様の歌がとても好き。
なのに、どんな声だか
思い出せなくなるのです。

三節

兄様の柔らかな手が好き。
だけど、あたたかさが
思い出せないのです。

四節

兄様の優しい瞳が好き。
けれど、その色が思い出せないのです。

五節

兄様の早い足が好き。
でも、今は競争できないですね。

六節

兄様の腕が好き。
それなのに、抱きしめられた時の
強さを忘れてしまったの。

七節

ねえ兄様。
私達、いつから手を繋ぐのを
やめたのかしら?

八節

ねえ兄様。
私達、いつから話すのを
やめたのかしら?

九節

ねえ兄様。答えて兄様。
私を1人にしないでください、
どうかお願いですから。

十節:前半

何度も目をこすっては、
目の前の光景に目を見張る。

だってそこにあるのは
愛しい愛しい兄様の姿。

手を繋いで夜の森。
お菓子の家で魔女に会い。
命からがら抜け出して。
そして、この手で――

愛しいきょうだい
名を呼びながら
少女は歓喜の涙を流した。


深い深い闇夜の森に、
突然現れたお星様。
けれど、それは希望ではなく。
罪を照らす記憶の灯り。


Normal

  • 【グレーテル】兄様……そこにいらしたのですね!
  • 【 ギシン 】違うよ、あれはナイトメア。
  • 【 アンキ 】モウ1人の自分。だけどナイトメア!
  • 【グレーテル】ああ、兄様。早く私を抱きしめて!
  • 【 ギシン 】あ、駄目だコリャ。全く話ヲ聞いてナイ。
  • 【 アンキ 】だって現実ヲ見てないモン!

Hard

  • 【 ギシン 】オぉ「悪夢」を見テモ動じナイ!
  • 【 アンキ 】あらら、ソンなの当たり前デス。
  • 【 ギシン 】ソウダった。だってアノ子は――
  • 【 アンキ 】望んで悪夢ヲ見続けているのダカラ。

十節:後半

その白い腹を引き裂き
湯気立つ内側に頬ずりして、
ああ愛しき人よと咽び泣く。

それは闇に染まった自分だと、
何度言われても理解しない。

その虚ろな瞳に映るのは、
病的なまでに愛したきょうだいの姿。

……あの時は何を間違った?

涙ながらに口づけた彼女は、
お菓子のように甘かった。


闇夜の森にお菓子の家。
そこに捕らわれたきょうだいは、
いまだ悪夢に捕らわれたまま、
罪に泣きながら、甘いお菓子を貪り食う。

posted by 白の書 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 衝動篇
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