2017年01月01日
衝動篇〈アリス〉二章
一節
奇妙な人形達の声が聞こえる。
「キキキ……愉快愉快デス……」
「囚われていますね」
「作者を助ければ全てが終わると」
「信じていマスネ!」
自覚していた。
ただ、答えの無い虚空で
彷徨う事に耐えられなかったのだ。
だから、私は戦う。
たとえこの願いが
束縛と呼ばれる
感情の化け物だろうとも。
見よ。束縛される少女を。
見よ。世界に牙剥くその様を。
Normal
- 【 アリス 】もし……この戦いが無意味だとしたら……
- 【 ギシン 】私達ハ本当に約束を守りマスよ?
- 【 アンキ 】作者は必ず復活サセマス。ご安心クダサイ!
- 【 アリス 】一番信用出来ないのは、お前達だ。
- 【 ギシン 】フフフフッ
- 【 アンキ 】アハハハハッ!
Hard
- 【 ギシン 】キャラクター達は創造主である作者を欲スル
- 【 アンキ 】シカシ、作者とは一体何?
- 【 ギシン 】キャラクター達を産んだ親?
- 【 アンキ 】ソレトモ……
- 【 ギシン 】キャラクター達を殺した親?
二節
理解されないだろう。この想いは。
私は歪んでいる。私は歪んでいる。
それだけは知っている。
三節
彼に逢えなくてもいい。
彼に愛されなくてもいい。
そこに、生きていてさえくれれば。
四節
失い続ける痛みと代償が、
私がまだ戦っている事を
知らせてくれる。
五節
救われたいとは思っていない。
ただ、あの人さえいてくれれば。
六節
どうしてこんなに不安なんだろう。
どうしてこんなに寂しいんだろう。
七節
自分も世界も間違っている。
八節
夢想する。ある日の幸せを。
幾多の屍を乗り越えて手に入れた
優しい光の平穏を。
九節
願いを叶えてしまったら……
私はどうなってしまうのだろうか。
十節:前半
そうだ。繰り返される物語の
輪廻の中で、
私は孤独だったのだ。
永遠に続く壊れた世界。
その中に差し込む一条の希望が
作者による救済だったのだ。
既に死した人間を生き返らせる事が
世界の理に
逆らっている事は知っている。
だが、構わない。
もう、私は全てを失って
しまっているのだから。
愚かである事と
愛する想いは
どこか似ているのだろうか?
Normal
- 【 アンキ 】さあ恐ロシイ亡霊達を倒すノデス
- 【 ギシン 】さあ醜イ生命を消し去るノデス。
- 【 アンキ 】存在スル事が無意味ナ奴ラナノデス。
- 【 ギシン 】殺しマクッテも問題ナシなのです!
- 【 アリス 】……うるさい。
Hard
- 【 ギシン 】命ッテ何だろうね?
- 【 アンキ 】亡霊は命を持ってイナイね?
- 【 ギシン 】デモ貴方は本当にイキテル?
- 【 アンキ 】今、イキテル証明は出来る?
- 【 ギシン 】フフフ……キキキッキキ。
十節:後半
亡霊が叫び声を上げながら消えてゆく。
痛みと怨嗟の残響が、
ライブラリ世界の中に広がって消えた。
「殺してスッキリデスよね?」
「デモいいの?本当に良イノ?」
黙れ。
騒がしい人形達に剣を向け、伝える。
せめて呪いの魂が消えるまで。
ギシンとアンキは、その顔に
汚れた笑みを
貼り付けたまま
ゆっくりと存在を消していった。
彼女は鎮魂など望まない。
その死から目を離さないだけだ。
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