というわけで、量子力学で用いられるパウリ行列を題材に選んでみました。
複素数の範囲で考えると 2 つの平方数の和を
a2 + b2 = (a + bi) (a − bi)
というように簡単に因数分解することができますね。しかし 3 つの平方数の和
a2 + b2 + c2
については、たとえ複素数を使っても積の形に分解することはできません。そこで ......
問題45 パウリ行列で因数分解 [大学2★★☆☆☆]
次のようなパウリ行列を定義します。定義から明らかなように
σx2 = σy2 = σz2 = E
が成り立っています。 ただし E は単位行列です。3 つの平方数の和
(a2 + b2 + c2) E
を 2 つの行列の積で表してください。
[ヒント] ある形の行列の 2 乗となります。
解答45(パウリ行列の性質を用います)
問題文で与えられたパウリ行列の性質がヒントになっています。P = (a2 + b2 + c2) E とおくと、
P = a2 σx2 + b2 σy2 + c2 σz2
= (a σx + b σy + c σz)2
− a b (σxσy + σyσx) − b c (σyσz + σzσy) − a c (σxσz + σzσx)
ここで、パウリ行列を計算すると
σxσy + σyσx = σyσz + σzσy = σxσz + σzσx = O
となることがわかるので(O は零行列)、
P = a2 σx2 + b2 σy2 + c2 σz2 = (a σx + b σy + c σz)2
と分解できることがわかりました。実際の成分で表すと、
となります。