トラクトリックス(追跡線/牽引線)
牽引線とか犬曲線と呼ばれたりもします。
「え? 犬曲線?」と驚かれるかもしれませんが、下図を見てご理解ください。
ポチ(P)は飼い主さんに伸び縮みしない紐でつながれています。
で、図にあるように飼い主さんは水平移動していくのです。
ポチは嬉しそうに尻尾を振って飼い主さんの後を追うわけですが、そのときポチの動く軌跡がトラクトリックスです。でも「犬曲線」なんてあんまりですよね。なので、もっと飼い主さんの愛情が伝わりそうな名前をつけておきました。名づけて……
わんこのお散歩曲線
です! どうですか? ダメ? それなら……
ポチと楽しくお散歩曲線
これもダメですか? まあ皆さんのお好きな名前で呼んでくださいな。
トラクトリックスは次のような微分方程式の解になっています:
(a 2 - y 2) y′2 = y 2
思わず「う!」と唸りたくなるような強面の式ですが、見かけ通りけっこう手強い方程式です。微分方程式の扱いに自信のある方は解いてみてください。「どうしても解き方を知りたい!」というコメントがあれば解法を載せますが、できればそのコメントは勘弁してほしいです(たくさんの数式をブログに載せるのは本当に手間がかかるのです)。ネットか大学の図書館で探せばたぶん見つかります。
解は対数を含んだ陰関数(implicit function)で表されます:
定数が煩わしいので a = 1 としておきましょう:
媒介変数 t を用いると、
x = t - tanh(t), y = sech(t) [2]
のように簡単な形に書けますが、今回は [1] のままで話を進めます。
x = 0 で尖がった形のグラフです。
この尖がりは √… の項に原因があります。
それを確かめるために、この項を取っ払ってみましょう:
尖がりがなくなって滑らかに連結していますね。
では再び項を元に戻して、log(…) の項に cos(y) をかけてみます:
原点付近でぐるりと1周する関数です。
cos(y) の代わりに exp(y) をかけると・・・・・・
丸みを帯びた帽子のような形になりました。
最後に欲張って cos(y) と exp(y) の両方をかけてみると・・・・・・
三角帽子の出来上がり。今回はこれでおしまい。