こばとの数学基礎講座
三角関数とベクトル編F xy 平面上でベクトルを表してみましょう
足し算、引き算を矢印のつなぎ合わせで考えるのは楽しかったですけど、数直線上の実数を扱っているだけなら、特に必要な概念ではありません。1 次元の向きは正か負の 2 方向しかないわけですから、数字と「 + 」、「−」という記号があれば事足りるのです。
ところが2次元になると、平面上の点は (1, 1) とか (2, 3) とかいうように、2つの数字を指定して座標で表すことになります。関数 y = f(x) 上の点 (x, y) を表すだけなら、これだけでも十分ですけど、このままでは「 + 」とか「−」という演算が1次元の数直線上に限られてしまって窮屈だし、少しも発展性がないので
「平面上の点を使って、今までみたいに 1 + 1 = 2 のような計算ができないかなあ」
と頭を悩ませるのです。そして考えに考えた末に ......
「そうだ! (x, y) ひと組で1つの数を表すことにしたらどうかな! 例の矢印を使えば、そんなこともできちゃいそうだよ!」
と思いつくのです(ちょっと強引な展開?)。試しに原点から (1/√2, 1/√2) まで矢印を引いてみます。
三平方の定理により、この矢印の長さは 1 です。つまり数直線上の 1 という実数を、大きさはそのままにして、向きだけを変えた「数」とみなすことができます。なので、この矢印をベクトル a と名づけて
と縦並びに書きましょう。これは x 軸方向に 1/√2, y 軸方向に 1/√2 という移動方向を示す記号です。座標点と同じように (1/√2, 1/√2) と書くこともあるけど、なんだか紛らわしいので縦に並べたほうがいいです。今度は原点から座標 (-1/√2, −1/√2) まで矢印を引いてみましょう。
このベクトルに b と名づけます。
このベクトルも長さは 1 です。
実数で扱っていた絶対値記号をそのまま借用して、
と書くことにします。数直線上の絶対値記号は、数の正負を問わずに原点からの距離を表していましたけれど、その考え方はそのまま平面上でも適用されているわけです。向きを少しずつ変えれば、大きさ 1 のベクトルはいくらでも作り出すことができます。
つまり数直線上の +1 と −1 に相当する数が平面上では無数に存在することになるのです。ところで上の図にあるように、大きさ 1 のベクトルの先端は半径 1 の円を描くことがわかります。つまり半径 1 の円の方程式はベクトルを用いて
と書くこともできます。ここまでくれば、前々回に少し触れた三角関数とのつながりが見えてきますね。半径 1 の円周上の点は x 軸から反時計回りに測った角度θを用いて (cosθ, sinθ) と表されていたのですから、原点から円周上の点に引いたベクトルは
と表されることになります。そして三角関数の基本公式
は「ベクトルの長さが 1 ですよ」ということを表しているのです。
≫ 平面ベクトルの足し算