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2024年05月16日

「妖怪の飼育員さん」のパロディの元ネタ(その6)

妖怪10.jpg
 コミックス第10巻は、あからさまなパロディから「もしかしてパロディ?」まで、オンパレードです。

 第105話「百々爺」は、最初の妖怪モブシーンからして「頭のてっぺんに毛が三本」「手塚治虫の漫画みたい」などのセリフが続出。妖怪・百々爺の脱走のくだりは、アニメ「ルパン三世」の第4話「脱獄のチャンスは一度」。陸奥先生も、露骨に「はかったなルパン!」と言っちゃってます。平木さんが言う「大人気妖怪漫画」とは、先の妖怪モブシーンで「やめろ、その歌は歌っちゃなんねえ」と言われたモノと同じです。続く「子供向け妖怪図鑑」と言うのも、恐らくは、水木しげる御大が編纂した妖怪図鑑のこと。

 第106話「産女」の、大源さんと巨大赤ちゃんのやり取りは、「大悟郎」(時代劇「子連れ狼」)なんてセリフも出て来ますが、むしろ、漫画「どろろ」(by 手塚治虫)のどろろと子ども妖怪の組み合わせを彷彿させます。オチの部分は、わざと、特撮もの「仮面ライダー」の本郷猛と蛇口のエピソード(第1話)に合わせたのでしょうか。

 第107話「手の目」では、またまた、「ウルトラマンレオ」の中より、伝説のジープ特訓(第6話)が使われています。

 第108話「毛羽毛現」における、妖怪・毛羽毛現の合体した姿は、ほぼ、怪獣ヘドラ(東宝映画「ゴジラ対ヘドラ」)。ちなみに、ヘドラも合体怪獣です。

 第109話「こそこそ岩」に出てくる借金取りの3人組は、実は、赤塚不二夫キャラのイヤミ、ハタ坊、デカパンをリアルに描き直したもの。彼らの事務所には「これでいいのだ」と書かれた額縁まで掛かっています。

 第110話「夜釜焚」には、水木しげる漫画タッチに、平木さんがビビビビビビンと平手打ちするシーンがありました。このビビビ叩きは、すでに、第84話「吸血鬼」の中でも使われています。

 第112話「枕返し」は、さりげなく、コブラ(漫画「コブラ」by 寺沢武一)がモブ出演していますので、皆さん、そちらにばかり目が向いてしまっているようなのですが、実は、本話の一部が「ブラック・ジャック」の一編「気が弱いシラノ」と被っています。

 第113話「ふくろさげ」には、「なんかいもよみがえるワニ」「破滅の刀」と、最近の大ヒット漫画(のパロディ)が二つも登場。どちらかと言うと、時事ネタと見なすべきか?

 とにかく、パロディが絶好調の巻でした。

posted by anu at 09:27| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ・本

2024年05月13日

「妖怪の飼育員さん」のパロディの元ネタ(その5)

 コミックス第9巻より

第101話「山精」〜 第104話「なめくじら」
 確信犯のパロディだったのかどうかは分かりませんが、妖怪・山精のルックスが、マッドメンにそっくりです。この「マッドメン」は、諸星大二郎氏の漫画で有名ですが、それ以前に、実際に存在しています。
 なお、山精を捕まえようとする大源さんの後ろには、はっきりと「サザエさん」タマが描かれていました。
「妖怪と生物の未来を考える会」の会長がセリフを言う時、なぜか、ジョジョ立ち「ジョジョの奇妙な冒険」)をしています。
「千年ガマ」と言うネーミングは、巨大怪獣と言う設定とともに、特撮もの「仮面の忍者 赤影」(1967年)が初出。ただし、実際の伝承でも、千年生きたガマは変化すると言われています。
 今回の妖怪・餓者髑髏の合体シーンは、かなり凝った演出で描かれています。いろんな合体ロボットの合体シーンの演出を混ぜたのではないかと思われるのですが、具体的にどの作品なのは、私の方では割り出せませんでした。
 陸奥先生の締めのセリフは、「また医者っぽいセリフ」(大源さん談)どころか、完全に「ブラック・ジャック」の一編「ダーティー・ジャック」のラストのセリフの完コピです。この作者さん、ほんとに「ブラック・ジャック」がお好きなようです。

posted by anu at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ・本

2024年05月12日

女の子のポスター

 今から40年近くも前、まだ大学生だった私は、出前のアルバイトなどをしておりました。
 はっきり言って、ひ弱な文系男子だった私には、かなりキツい仕事でもあったのですが、色々あって、結局のところ、大学を卒業するまで、ずうっと、そのバイトを続けていたのでした。
 自転車に乗って、町中を走り回って、不得手な接待の業務もこなして、しんどい事だらけだったのですが、そんな中でも、ちょっとだけ、胸がときめく事もありました。

 それは、得意先のビルの何ヶ所かに、女の子が笑っているポスターが貼ってあったのです。それが妙に可愛らしく見えて、そのポスターを目にするたびに、疲れた私はほんのりと癒されたのでした。

 それは、消防のポスターでした。女の子は、ショートカットで、白いトレーナーを着ています。実は、この女の子とは、アイドルの酒井法子さんだったのでした。
 当時の私は、そこまでアイドルに精通していませんでしたので、それに気がつかずに、彼女の正体も知らずに、ただ「可愛いなあ」と思っていたのでした。

 その後、15年以上が経ち、インターネットの時代が来ると、ふと、私は、このポスターの事を思い出しました。「ひょっとして、あのポスターのことが、何か、分かるのでは?」と思って、ちょこちょこっと調べてみますと、すぐに、こうした真実が判明したのでした。
 同時に、辛いバイトの最中の私を癒してくれた問題のポスターとも再会する事ができたのです。(ちなみに、このポスターはネトオクに出品されていますので、その気になれば、現物も入手できます)

のりこポスター.png
 今、見直してみると、確かに、このポスターの子は酒井法子さんに違いないのですが、当時の私は、「一般公募のシロウトの子かな」などと妄想して、ほのかに恋心を抱いたりもしたのでした。

 まあ、なんとも甘酸っぱい青春時代の思い出の話でありました。

posted by anu at 13:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 自分の事

2024年05月09日

「妖怪の飼育員さん」のパロディの元ネタ(その4)

妖怪8.jpg
 コミックス第8巻より

第88話「三吉鬼」
 本話の全編が、特撮もの「快傑ズバット」(1977年)のパロディになっています。妖怪・三吉鬼の「秋田では日本一」の設定を聞いたら、作者さんは、どうしても、このパロディを描きたくなってしまったのでしょう。
 昭和の特撮ファンでしたら、この回は、すぐに元ネタが分かって、ゲラゲラ笑えるのですが、今どきの読者は「ズバット」も知らないらしくて、ネットでそのような感想を見かけた時は、少しさびしく思いました。

 コミックス第9巻より

第94話「猫南瓜」
 本話のオチとなっている映画は、実際に存在する海外のB級ホラー映画のパロディ。あまりに有名な作品なので、あえて、ここには題名は書きません。
 また、妖怪・コロボックルのレルラさんが口にした「昔のこわ−い漫画」とは、短編「人くい一族」(by 古賀新一)のこと。少年チャンピオン・コミックス版「エコエコアザラク」の第19巻の巻末に収録されています。

第100話「疱瘡婆」
 秘密結社「氏名指名団」は、特撮もの「愛の戦士 レインボーマン」(1972年)に出てきた敵組織・死ね死ね団のパロディ。団員のコスチュームも、まるっきり同じです。

posted by anu at 10:11| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ・本

2024年05月05日

「妖怪の飼育員さん」のパロディの元ネタ(その3)

妖怪7.jpg
 コミックス第7巻より

第73話「蛟龍 その3」
 モブシーンの1コマが、なぜかギャグタッチ。実は、このコマに出ている3人のキャラは、全員、漫画「パーマン」(by 藤子不二雄)の主人公の家族です。元ネタ内でも、同じようなシーンがあったかどうかは、私の勉強不足で、ちょっと確認できませんでした。

第76話「ちんちろり」
 陸奥先生に「どっかで聞いたようなオチだな」と言われた締めの言葉は、特撮もの「ウルトラセブン」メトロン星人の回(第8話「狙われた街」)の有名なエンディングのパクリ。ちなみに、この「狙われた街」を監督したのは、第24話「屏風のぞき」にも名前が出てきた実相寺昭雄さんです。

第77話「砂かけ婆」
 平木さんが口にした「心理学の天才がホテルで働く漫画」とは、作者の藤栄道彦氏の漫画「コンシェルジュ プラチナム」自分の漫画の話をしているものだから、他のキャラも、ツッコまないで、ただ呆れています。

第80話「煙々羅」
 大源さんのセリフ「や〜れやれだぜ」は、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」(by 荒木飛呂彦)の主人公・空条承太郎の口ぐせ
「ジョジョの奇妙な冒険」を元ネタにしたギャグは、他にも、第52話「ぬらりひょん」の中などでも使われています。

posted by anu at 15:50| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ・本

「妖怪の飼育員さん」のパロディの元ネタ(その2)

妖怪5.jpg
 コミックス第5巻より

第53話「臼負い婆」
 最後のページが、まるまる、漫画「ブラック・ジャック」(by 手塚治虫)の一編「水とあくたれ」のラストシーンのパロディ。セリフや絵の構図まで、ほぼ完コピです。その為か、本話公開時は、ネットニュースで盗作扱いまでされていました。
 そもそも、この作者さんは、「ブラック・ジャック」が、相当、お気に入りのようでして、この回の以前から、「ブラック・ジャック」を彷彿させるようなセリフや絵などが、ちらほらと散見していました。のちの第145話「白蔵主」なんて、全編が「ブラック・ジャック」の1エピソードのパロディとなっております。
 
第56話「ぬっぽり坊主」
 妖怪・ぬっぽり坊主が憧れるアニメ(恐らくは、「ルパン三世」)の話も出てきますが、本話の最大のパロディは、そこではありません。
 唐突に現れた平木さんのセリフ「その顔はなんだ!その目はなんだ!その涙はなんだ!」なのであります。このセリフは、実は、特撮もの「ウルトラマンレオ」(1974年)の中で使われた名ゼリフ(第4話)なのでした。ちなみに、このセリフをネットで検索してみても、きちんとヒットします。
「ウルトラマンレオ」がらみの小ネタとしては、他にも、第39話「九尾の狐(後編)」で、すでに、「ウルトラ念力」なんてワードが出てきていました。

posted by anu at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ・本

2024年05月02日

「妖怪の飼育員さん」のパロディの元ネタ(その1)

妖怪1.jpg
 藤栄道彦氏の漫画「妖怪の飼育員さん」(2015年〜)の作中では、多数のパロディや時事ネタが登場します。

 パロディに関しては、最初こそ、「古くても名作はネタが色あせなくて良いですわね」(第5話「小豆あらい」)とか「若いコ、わかるかねえ」(第17話「吹消婆」)などのツッコミで、それがパロディだと分かるような配慮がなされていたのですが、回が進むにつれて、畳み掛けるように時事ネタが連発されるようになり、それに伴い、小ネタのパロディについても、いちいち指摘されなくなっていきました。(特に、第50話「マンドラゴラ」あたりから)

 時事ネタがらみのパロディは、発表当時に読めば、すぐ分かるものばかりなのですが、時間が経ってしまうと、ピンとこなくなったものも多いかも知れません。しかし、それ以上に、作者の趣味なのか、特撮ものとか漫画のパロディが、「妖怪の飼育員さん」内には、ふんだんに盛り込まれているのです。

 私が個人的に衝撃を受けたのは、第93話「白うねり」でして、妖怪・白うねりに怪獣ナース(特撮もの「ウルトラセブン」の格好をさせたカットがあり、これなんて、特撮に詳しくない人は、パロディだった事すら、気が付かなかった事でしょう。

 そんな訳で、この度、「妖怪の飼育員さん」の中に挿入されたパロディの中でも、特に特撮や漫画・アニメ関連のものばかりを、私が判明できた範囲で、定期的に、こちらで紹介する事にいたしました。「妖怪の飼育員さん」を再読する際の足しにしていただければ、幸いでございます。

posted by anu at 09:19| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ・本

2024年04月20日

日立のCMソング

 日立製作所のCMソングと言えば、誰もがご存知の「この木なんの木」「日立のうた」です。

 私の場合は、この歌は、海外ホラードラマ「事件記者コルチャック」と、記憶が結びついています。

 なぜかと言いますと、およそ半世紀前、日本では、「事件記者コルチャック」は、日曜の夜10時半から放送されていたからです。
 この「コルチャック」を観るために、当時、小学生だった私は、一度、布団についてから、10時半少し前に、わざわざ、また起きてきました。そして、この「コルチャック」の手前の時間帯で放送されていた番組のエンディングで「日立のうた」が流れていたように、覚えているのでした。

 そのせいか、「日立のうた」を聞くと、私は、今でも、ちょっと怖い気分になるのでした。(まさに、「コルチャック」の影響です)

 さて、今回、この話を書く為に、この件について、少し、ネットで調べてみました。すると、この問題の「日立のうた」が流れていた番組とは、日立プレゼントの「すばらしい世界旅行」だったみたいです。

 ところが、もっと良く、データを確認してみますと、どうも情報が一致しません。wikipediaによりますと、「コルチャック」が放送されていた時期(1976年)は、「すばらしい世界旅行」は日曜の夜7時半から放送されていたらしいのです。これまた、一体、どうして?

 同じ日曜の放送だったので、私が勘違いしていただけだったのでしょうか。それとも、私が住んでいた地方の局では、「すばらしい世界旅行」は夜10時半から放送されていたとか?

 ひとまず、この謎については、しばらく保留のままで、まだ解けなさそうなのでした。

posted by anu at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 自分の事

2024年04月09日

小説「世界最後の日」

オムニバス「ボクたちの好きな異世界転生」の中に納めてあった一編。
キリスト教の神様は、最後の審判の時に、なぜ、全ての人間も滅ぼしてしまうのか、その理由。

 世界の最後の日がやって来た。その日は、夜中の盗人(ぬすびと)のように訪れた。
 この日付を、正確に割り出して、事前に発表していた科学者や予言者は、一人もいなかった。それでも、世界中の人間には、この日が世界の終わりの日だと、何となく分かったのである。

 この日が来てから、皆は、急に騒ぎ立てて、不平や不服を言いだした。

 ごくごく平凡に、普通に生きてきた小市民たちは怒った。ーー確かに、種としての人類は、ダメな部分もいっぱい有ったかもしれない。いまだに戦争や内乱で殺し合っている国があるし、環境破壊だって止められずに、現代進行形で地球を蝕み続けているだろう。だが、個としての人間は、むしろ、無害で善良な人たちばかりなのだ。特に自分たちはそうである。自分たちは、戦争だってした事はないし、わざと環境破壊に加担したつもりもないのだ。それなのに、なぜ、我々までもが裁きを受けて、世界ごと滅びなくてはいけないのだ。

 戦争をしている国の指導者や、環境破壊を推し進めた大企業などは反論した。ーー我々だって、自分の欲望のために、戦争をしたり、地球を汚してきたのではない。全ては、国民に喜んでもらう為なのだ。お前たちが望んでいると思ったからこそ、敵国をやっつけたり、環境を壊してでも、国民の生活向上を図ったのだ。我々ばかりが悪者あつかいされるのは、聞き捨てならない話だ。
 それよりも、もっと、お前たち自身の身近に目を向けたら、どうなのだ?悪い事をしている個人や犯罪者はいっぱい居るではないか。まずは、彼らこそが、我々よりも非難されるべきではないのか?

 犯罪者や悪い事をしている人間たちは言い返した。ーーふざけるな!オレたちが、いつ悪い事をした?悪い事をしたのは、オレたちを怒らせた奴ら(被害者)の方じゃないか。オレたちに歯向かったり、従わなかったりして、オレたちを怒らせたから、連中を懲らしめてやったのだ。どうだ、オレたちの言っている事は間違っているか?

 彼ら、犯罪者や悪い事をしている人間たちは、さらに言った。ーーだいたい、騙されたり、いじめられるような奴が悪いのだ。だって、この世は弱肉強食じゃないか。競争社会なのだ。他人に食い物にされるような人間こそが、世の中に不適合な悪い存在なのだ。いじめられたり、騙されたりしても、自分でやり返しもしなかった奴らに、被害者だと名乗る資格はない!だったら、オレたちも悪者呼ばわりされる筋合いはないのだ。

 彼ら、犯罪者や悪い事をしている人間たちは、調子に乗って、こんな事も言い出した。ーーそれよりも、善人ヅラした一般人どもよ!お前たちこそ、オレたちを責められるほど、立派な生き方をしているのか?ほんとに、悪い事は何もしてこなかったと言い切れるのか?躾にかこつけて、子供を叩いた事もないのか?友達を、ふざけて、いじめたり、からかった事もないのか?できのワルい職場の部下をどやしつけた事もないのか?他人に対してウソをついた事もなければ、暴力をふるった事もないと言うのか?たとえ、ちょっとでも、そんな事をした経験があるならば、お前たちだって、オレたちと同類なのだ。お前たちには、オレたちばかりを責める権利などないのだ。

 少しでも身の覚えのある人々は、急に言い訳しだした。ーーちょっとぐらいのウソや乱暴は大目に見てくれてもいいではないか。そこまで厳しい事を言ってしまうと、世の中、暮らしていけなくなってしまう。そうだ。どうしても皆が悪い事をせざるを得ないのは、この世の中がいけないのだ。社会が悪いのだ。社会の仕組みが良くないから、生活が貧しくて、不満がいっぱい生まれて、誰もが悪い事をしないと、暮らしていけなくなるのである。この腐った社会こそ、本当の悪の根源なのだ!

 再び、国の指導者たちは、慌てて、弁明したのだった。ーー待ってくれ。人間社会が、全体的にあまり幸せじゃないのは、今に始まった事じゃない。古い時代から、ずうっと、そうだったではないか。それでも、奴隷制や身分制があった時代と比べたら、今の時代は、ずっとマシになったんじゃないかと思う。我々(国の指導者)だって、少しずつでも、社会を良くしていきたいとは考えているのだ。もし、社会で、いまだにダメな部分があると言うのならば、それは、きっと、前の時代から引きずってきた悪い慣習なのだ。それらの慣習を社会に定着させて、悪いとも思っていなかった先人たちにこそ、文句を言ってくれ。

 すると、墓場からは、死んだ人間たちが次々に蘇ったのだった。生前に権力や財力を独り占めにしたまま、大往生した有力者たちも復活した。罪を裁かれる事もなく、ついに最後まで逃げ切って、天寿を全うした極悪人たちも蘇った。彼らは、無理やり生き返らされて、再び、この世で、世界最後の日に付き合わされる事になったのだ。
 だが、生き返ったのは、そんなあからさまな悪人ばかりではなかった。あらゆる、全ての人間が死の世界から引き戻されたのである。いっさいの例外は認められなかった。この世に誕生した人間は、全員、復活させられて、世界最後の日に、あらためて、その人生の報いを受けさせられる事となったのである。

 もはや、死ですらもが、罪からの逃げ場所ではなくなったのだ。

 周囲の慣習に流されて、自分も、ささいな悪事(嘘とかイジメとか悪口とか)をしていた人々は、必死に抗議しだした。ーーこの程度の悪を行なっていたのは、私たちだけじゃない。きっと、他の人もしていたはずなのだ。実際、私だって、他人からいじめられたし、嘘もつかれたし、悪口も言われてきた。お互い様なのだ。私が悪いと言うのであれば、私をいじめた奴らだって、いっしょに非難されるべきだ。私ばかりが責められるのは、納得がいかない。まず裁かれるのは、私を苦しめた奴らからだ。

 そして、空からは、恐怖の大王・神が降りてきたのだった。神は大声で怒鳴った。
「お前たち人間は、自分たちが、なぜ滅ぼされる事になったのか、まだ、その理由が分からないのか!どうして、自分の罪は自分の罪だと素直に認めない?なぜ、自分の罪の原因を、他人のせいにしたりするのだ?そうやって、悪事の責任を皆でなすりつけ合った結果が、今日の日なのだ。お前たちが訴えた通りになってしまったのだ。皆で、他人が悪いと言い合ったから、世界の全てが裁かれて、滅びてしまう事になったのだ。悪い事をしたのがイケナイのではない。そうやって、自分の罪まで他人に押し付け合うような事をしたからこそ、そのような形で、全世界で責任を取る事になったのだ」

 神のおごそかな言葉の前には、誰一人として、言い返す者はいなかったのだった。

posted by anu at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2024年04月01日

生成AIの未来

 公開された初期こそ、SiriやオーケーGoogleなどとも大差がないように思えた生成AIですが、最近になって、急速に進化を遂げているようです。文章を書けるだけではなく、ついには、リクエストした映像まで作れるようになったらしいのです。

 これって、もしや?
 近い将来には、頼めば、まるまる一本の映画だって作っちゃうのではないのでしょうか。

 本格的な大作映画だけは、さすがに、プロの映像作家にでもならない限り、作れないかと思っていたのですが、それが、シロウトでも気軽に長編映画を作れる世の中が来るかもしれない、という訳です。

 つまり、私の書いたシナリオのみ、シノプシスのみの映画用作品も映画化できる、と言う事です。私の「ゴジラ対ゴラス」「秘密美少女ドクガール」なんかが、まさかの本物の映画になるかもしれないのです!

 いや、それだけではありません。「主役はこの俳優で」と注文をつければ、それも可能だと言う事になります。恐ろしい事に、すでに死んだ役者を指名したり、「この俳優の子供の頃の姿で」なんて提案も、生成AIの映画ならば難しくないはずなのであります。

 商業映画では、様々な大人の事情で実現しなかった内容が、何もかも思い通りに作れるのです。ヘタに、プロとして商業用映画を作るよりも、ずっと楽しいかもしれません。

 そんな時代が来るのを、ひそかに楽しみにしていたいと思います。


タグ:映画 生成AI
posted by anu at 15:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ネタ
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