小路幸也氏の本は、勿論昔かずら知っておりましたし、何冊か読んだ記憶もあります。
「東京バンドネオン」やジャズやポピュラーの名曲をタイトルにしたシリーズが有名
ですね。非常にセンスが良く、軽快な作風で、涼やかな風が吹き抜けて行ったような
印象です。
今回の「恭一郎と七人の叔母」はしかし、今までとは大分印象が違いました。まあ、言
ってしまえば、恭一郎の母を含めた八人姉妹とその家族の物語なのですが、なかなか奥
の深い物語です。
舞台は更屋家。更屋家は素封家、昔ながらの土地持ちの豪農であったが、明治の時代に
植木屋、造園業に鞍替えした。そして原史とトワの間に生まれたのが、恭一郎の母さき
子を含めた八人の姉妹であった。この八人姉妹と恭一郎が同じ更屋家の中で暮らしてい
く、さき子はともかく残りの七人の叔母が一癖も二癖もあり、恭一郎を良くも悪しくも
翻弄して行く。物語はその恭一郎と謎の女性の回想で進んで行くのであるが、一話一話
が我々の身近な問題として考えさせられる。
ここでそれぞれの叔母を紹介しようと思う。恭一郎の母長女のさき子、次女の志乃子、
三女の万紗子、四女の美津子、因みに万紗子と美津子は双子の姉妹である。次は五女の
与糸子、六女の加世子、七女の喜美子、最後に八女の末恵子の八人である。私は昭和24
年(1949年)生まれの70歳であるが、私の同級生には7-8人の兄弟姉妹は結構いた記憶が
ある。戦後のベビーブームの最盛期でもあったのだ。
長女のさき子は夫が事故死をした後は、実家で暮らしている。次女の志乃子は歯科医の
妻で息子と娘がいるが、浮気の噂が。双子の万紗子と美津子は、同じ双子の吉田兄弟と
結婚できるのか。更屋家で一番頭が良く手がかからない五女の与糸子は、だらしのない
双子の姉に対して何をしたのか。姉妹の中で一番存在感の無かった六女の加世子が、意
外や意外、あの御曹司に見初められて。そして色っぽく触り魔で、いち早く水商売に入
って行った七女の喜美子には、意外な営業のセンスが。そして最後の八女の末恵子には
大変な絵の才能があったが、担当の絵画教師の絵のヌードモデルとなってしまいとそれ
ぞれの叔母たちに隠された秘密と問題は解決していくのか。
この叔母たちの物語が、それぞれしゃれた短編の一章のようでとても清々しい。綺麗毎
ばかりのテーマではないのに、いやらしさを感じさせないのは、筆者の感性か。自分に
は姉という存在が無かったせいもあるのか、正直恭一郎の境涯がとても羨ましい。
最後に恭一郎と会話していた女性の正体は。それはご自身で本書を読んで確認して下さ
い。それでは又。
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