またまた書評で恐縮です。作者の柚月裕子氏については、以前に「検事の使命」などの
書評を書いていたように思っていたのですが、完全に私の錯覚で、今回が初めてでした。
そして今回の「あしたの君へ」については、家裁調査官補の物語なので、従来の検事・
検察物ほど重くはなく、気軽に読めそうと勝手に解釈していましたが、とんでもござい
ません、失礼いたしましたという内容の濃いものでした。丁度良い機会になりましたの
で、改めて紹介させていただきたいと思います。
内容は5話から作られておりまして
@ 背負う者 (17歳 友里)
A 抱かれる者 (16歳 潤)
B 縋る者 (23歳 理沙)
C 責める者 (35歳 可南子)
D 迷う者 (10歳 悠真)
夫々が、けっこう考えさせられる重いテーマを持っています。詳しくは読んでからのお楽
しみという事ですが、現代に蔓延する普遍的なテーマとでもいうものでしょうか。大きく
共通するのは、家庭・家族です。そこにそれぞれ病気、夫婦関係、親子関係、離婚問題な
どが複雑に絡み合って、人間関係をより修復不可能なものにしてしまう。それに気後れし
ながらも、果敢に立ち向かっていく家裁調査官補の物語です。
主人公は望月大地。裁判所職員採用総合職試験に合格し、現在は福森市で2年間の養成課
程研修の真っ最中。同僚の藤代美由紀、志水、先輩の溝内、上司の真鍋、露木などのかか
わりの中で、時に喧嘩し、悩み、諭され、元気づけられしながら、自分では自信の持てな
い家裁調査官という仕事について戸惑う事ばかり。そんな大地に次々と解決が難しいと思
われる案件が降りかかる。果たして大地の運命は?
この本を読んで痛切に感じたのは、当事者同士でも関わりたくない親子問題、家族問題、
夫婦問題、その他諸々の家庭・家族に関する事案に、真摯に寄り添っている家裁調査官と
いう職業があり、そういう人たちが現実にいるんだという事。つまり今までは離婚調停、
あっ、家庭裁判所ねという軽い感覚で、家裁調査官という人がいる事も、他人の事案にこ
れほどかかわって仕事している事も、全く知らなかったという反省です。
正直やりがいのある仕事であるし、第3章の理沙の言葉で「自分では問題を解決できずに、
調停委員や家裁調査官という他人に、頼るしかない人間もいるの。望月君も、頑張って悩
んでいる人の力になってあげて」という泣かせるシーンもあるが、お前にやれるかと問わ
れれば、例え資格があったとしても考えてしまう程、重い仕事です。
毎度の事ですが、柚月さんの小説には本当によく泣かされます。でもその後はとても清々
しい気分になります。それでは又。
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