2019年11月30日
ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代 その本当の恐ろしさとは
ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代 その本当の恐ろしさとは
〜ダイヤモンド・オンライン 11/29(金) 6:01配信〜
舛添要一氏
〜SNSを駆使して過激発言を連発するトランプ大統領 何故大衆を惹き付けるのか ヒトラーに付いて現代人は学ぶ必要がある。前東京都知事の舛添要一氏が『ヒトラーの正体』 (小学館新書)を出版した。自身の経験も織り交ぜながら、明快な文章で独裁者ヒトラーの実像に迫る入門書だ。長年に渉りヒトラーを研究し続けて来た舛添要一氏に、何故ヒトラーに付いて知ら無ければ為ら無いのか語って貰った(清談社 村田孔明)〜
ヒトラー研究は 政治学者の原点だった
ヒトラーに付いて「独裁者・ユダヤ人の大虐殺・親衛隊」と、断片的なワードを知って居る人は多い。しかし全体像を把握 人は意外に少ないのではないか。実は舛添氏も 過ってはそうだったと云う。
「初めてヒトラーに興味を持ったのは1965年公開の映画『サウンド・オブ・ミュージック』オーストリアの退役軍人の家族がナチスから逃れる為に、徒歩で山を越えてスイスに亡命するストーリーです。主演ジュリー・アンドリュースの美声と豊かなアルプスの自然に魅せられ、ヨーロッパへ留学する切っ掛けにも為りました。多感な高校生の時に見た事もあり、ヒトラーが憎くてしょうが無かったですね」(舛添氏)
処が30歳手前の頃、留学先のミュンヘンで下宿屋の小父さんから「ヒトラーの時代が一番好かった」と告げられた。
「下宿はアメリカの研究者が多く、日本人は私だけでした。70歳位の親父は『ヤパーナー(日本人)一寸来い』と、私をお茶に誘って呉れる。日本とドイツは同じ枢軸国だったので気に入って呉れたみたいで、古いアルバムを開いて『俺の人生の中で、ヒトラーの時代が一番好かった』と嬉しそうに話をして呉れたんです。
ミュンヘン郊外にはダッハウ収容所跡があり、見学する度に余りにも悲惨なユダヤ人虐殺の歴史を教えて呉れました。それなのに下宿に戻れば、親父はヒトラーが好かったと云う。このギャップがズッと頭から離れませんでした」
それから50年間近くヒトラーの研究を続けて来た舛添氏だが、何故今に為って、専門書では無く入門書と云う形で発表したのだろうか。
「子供が大学生と高校生に為りました。父として、子供達が社会に出る前に、どうしてもヒトラーの事を語り聞かせたかった。民主主義の対極は独裁です。それなのに民主主義から独裁者が生まれてしまった。この歴史を知ら無ければ民主主義は守れません。現代はトランプ大統領の誕生、ブレグジット、移民排斥を主張する極右政党の躍進等、世界中でポピュリズムが広がって居る。ヒトラーが誕生した時代に似て来て居ます」
何故ヒトラーがノーベル平和賞候補に為ったのか
もしヒトラーが第2次世界大戦前に死んで居たら「ドイツ史上最も偉大な宰相に為って居た」と舛添氏は分析する。
「ナチスの正式名称は『国家社会主義ドイツ労働者党』です。ヒトラーの率いたナチスは右翼政党と思われて居ますが、政治手法は左翼のポピュリズムそのもの。労働者の為の政策を次々と打ち出し、熱烈な支持を受けました」
第1次世界大戦に敗れたドイツは、国内総生産(GDP)の約20倍に及ぶ賠償金に苦しめられる。そこに1929年のウォール街大暴落に端を発した世界恐慌が重なり、1933年にヒトラーが政権を執る頃には、ドイツ全土に大量の失業者が溢れ返って居た。
「ヒトラーはアウトバーンと呼ばれる高速道路等の公共事業を推進し、僅か3年で600万人居た失業者を完全雇用状態にしました。天文学的だったインフレの抑制にも成功し経済は安定します。今で言う働き方改革も行い、労働時間を8時間に制限し長期休暇も取得し易くした。財形貯蓄の制度を整え、大型客船で労働者を海外旅行にも連れて行ったのです」
外交でもヒトラーは手腕を発揮する。
「ヒトラーは戦争で失った土地を外交と国民投票で次々と取り戻しました。自信と誇りを回復した国民は更に熱狂します。そして1938年のミュンヘン会談では、これ以上の領土は求め無いと声明を出し、戦争を回避したとノーベル平和賞の候補にも為ったんです。最も、この声明はイギリス・フランスを欺いたもの。詰まり、ヒトラーは約束を守る積りは無かったのですが」
着々と積み上げる業績の裏で、ヒトラーは独裁体制の強化と戦争の準備を進め、ユダヤ人や障害者、同性愛者等への激しい迫害も徹底して行う様に為ったのだ。
トランプ大統領・ブレグジット・・・ 世界各地のミニ・ヒトラー現象
舛添氏は、現在の国際情勢はヒトラーが誕生したドイツに似て居ると危機感を募らせる。
「ベルリンの壁が崩壊して30年。ライバルが居なく為った資本主義は、リーマンショック、タックスヘイブンと遣りたい放題で、格差も広がって行くばかりです。過つてのドイツの様に職が見付から無い、働いても報われ無いと、世界各地で人々が自信を失い、自国第一主義・移民排斥を主張するミニ・ヒトラーに投票する。そして、そんな大衆の不満の捌け口に利用されるのが移民です。ユダヤ人がスケープゴートにされたのと同じ構造ですよ」
更にヒトラーの編み出した宣伝活動は、SNSの登場でより効果的に為って居る。
「ヒトラーは『真実で無くても、自分だけを一方的に褒め、責任は敵に負わせる事』が宣伝の主眼だと述べて居ます。まさにトランプ大統領がSNSでフェイクニュースを拡散させる手法です。『パンとサーカス』を求める大衆も真実かどうかは気にせず、面白いものなら受け入れてしまう。『ウソは大きければ大きい程好い』ともヒトラーは言って居ます。日本でも『NHKをぶっ壊す』や『消費税廃止』としか言って居ない政治家に、面白そうだと思って投票した人が相当数居たのではないでしょうか」
舛添氏は「ヒトラーを正しく知ら無ければ、再びヒトラーの様な独裁者が現れたとしても恐れる事も出来無い」と、ヒトラーの本当の恐ろしさを訴える。
村田孔明
つづきは・・・ヒトラーに信長 独裁者の「人を動かす技術」を暴く
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