2021年04月18日
風評被害を懸念「死活問題」 処理水の海洋放出決定で地元漁業者ら
風評被害を懸念「死活問題」 処理水の海洋放出決定で地元漁業者ら
4/13(火) 22:30配信
4-18-6 東電福島第1原発の敷地に並ぶ処理水等を保管するタンク 福島県(芹沢伸生撮影)
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が正式決定した13日、福島県や隣県の漁業関係者らからは風評被害を懸念する声が上がった。「ドンなに『安全』でも『安心』出来なければ誰も買わ無い。皆が安心して福島の魚を食べられる様にして欲しい」
東日本大震災と原発事故から10年。着実に歩みを進めて来た漁業者は風評の恐ろしさが身に染みて居る。原発事故後、操業自粛を余儀無くされた福島県内の漁業関係者は、漁業再開に向けて基礎情報を集める試験操業を実施。魚介類の安全性が確認されたとして先月末に試験操業を終え、今月1日から数年後の本格操業を見据えた移行期間に入ったばかりだった。
同県いわき市の大型施設にある魚介類市場に出店して居る水産会社社員・山田佳祐さん(31)は「海洋放出を決めた以上は、風評対策をキチンとして貰いたい」と云う「今の売り上げはコロナ禍前の半分以下。コンな状況で、お客さんが『福島産は怖い』と云う意識に為ったら死活問題だ」と危機感を募らせる。
同県相馬市に在る松川浦観光旅館組合の管野正三組合長(60)に取って、処分方法決定の知らせは「寝耳に水」だった。松川浦は福島第1原発の北に位置する観光名所でノリの養殖などで知られる。
管野組合長は海洋放出に付いて「キチンと処理され、他の原発で流して居るものと同じ処理水である事が大前提」とした上で「そうせざるを得無いのは分かって居る」と一定の理解を示した。一方で「風評払拭や補償等の対応策を先に決めるべきだった。早い段階で前に進む議論をして置かないと・・・」と悔しさも滲ませた。
「海洋放出ありきの議論。風評被害等に対する詳細な対応策の説明も無く、水産業を潰す様なものだ」と話すのは、宮城県漁業協同組合の寺沢春彦組合長(59)「最終的には補償と云う話に為るだろうが、補償により生産者の『良いものを作ろう』と云うマインドが削がれると云う懸念もある」と語った。
以上
【官製風評 処理水海洋放出】賠償前提を疑問視
和解案拒否傾向 識者・東電の対応懸念
4/18(日) 8:38配信
政府は東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の処分に関する基本方針で、海洋放出によって新たな風評被害が生じた場合、東電に賠償させる方針を示した。風評対策を徹底する前から、損害を賠償で穴埋めしようとする姿勢に識者は疑問の声を上げる。
政府は賠償に関する仕組みの「ひな型」を東電に作成させるとして居るが、裁判外紛争解決手続き・ADRでは、和解案を東電が拒む事例が相次いで居る。専門家は「被害の実態に見合った適切な賠償が成されるか疑問だ」と懸念を示す。
政府小委員会が昨年二月にまとめた報告書で、処理水の処分に伴い「風評被害防止・抑制・補てんのための経済対策」を強化すべきとして居た。只、風評への具体的な対策を講じぬまま政府が放出方針を決定した為「補てん」に偏った議論が横行する危うさが指摘されて居る。
小委の委員を務めた辰巳菊子氏(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会顧問)は「漁業者は風評で生活を断たれる恐れから海洋放出に反対して居る。政府が金銭で解決しようとする姿勢は原子力政策の負の仕組みに他なら無い」と断じる。「賠償に付いては被害者自身が立証に大変苦労して居る」内堀雅雄知事は十六日に県庁で東電の小早川智明社長と会談した際、福島第一原発事故を巡る賠償手続きが難航している現状を指摘した。
その上で、海洋放出で新たな風評が生じた場合「損害が有る限り、最後迄確実に賠償を実施すると共に、被害者の立場に建って負担と為ら無い簡便かつ柔軟な方法で迅速に対応する様取り組んで欲しい」と述べ、賠償の適切な枠組み作りを小早川社長に課題として突き突けた。
政府は海洋放出に伴う風評対策として、処理水の科学的な安全性の発信・漁業者への支援・販路開拓・観光誘客促進等を基本方針に盛り込んだ。一方、この様な対策を講じても生じる風評被害は東電が賠償する様指導するとした。
賠償の考え方としては「客観的な統計データの分析」等を踏まえ「風評の影響を合理的かつ柔軟に推認する」とし「損害に関する立証の負担を被害者に一方的に寄せる事無く迅速に対応する」としている。
東電は16日に公表した賠償方針で、期間や地域・業種を限定せずに賠償すると明記した。商品やサービスの取引量の減少・価格の下落等に基づき損害額を算出する。只、基準などの具体的な内容は定まって居ない。
東電が構築する仕組み次第では、風評と損害の因果関係を厳しく審査され、被害が有るのに救済され無い可能性もある。福島第一原発事故に伴う賠償を求める方法は主に
(1)東電に対する直接請求
(2)国の原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介によるADR
(3)訴訟
・・・の三つ。このうちADRの申立件数は、2020(令和2)年末現在で約2万6千件に上り、この内二割に当たる約6千件は和解に至って居ない。東電が和解案を拒否する傾向が続いて居り、原発事故の原因者として賠償責任をどう果たすかが問われている。
原発事故による賠償制度の問題点を研究している除本理史(よけもと・まさふみ)大阪市立大大学院経営学研究科教授は、政府方針で「立証の負担を被害者に一方的に寄せ無い」と表記した点に付いて「裏を返せば、賠償するかどうかは東電が決めるとも読める」と指摘する。
東電が賠償する対象を絞り込んだり、新たな風評に苦しむ被害者自らが損害の立証を強いられたりする可能性が有るとして「その様な事態は絶対に避け無ければ為らない」と釘を刺した。
以上
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