2020年07月27日
【ノンフィクション怪談】『飲みかけのコーラ』。
その日、
ぼくは仕事に疲れ、ふらふらになりながら、
ようやくアパートに帰ってきた。
持っていた『飲みかけのコーラ』のペットボトルを
雑にテーブルに置き、ソファへ仰向けに倒れ込んだ。
コーラがかすかに泡立つ音を聞きながら、
そのままソファで泥のように眠った。
どれくらい時間が経っただろう。
ふと、眠りが浅くなったことに気づいたぼくは、
なぜか無性に水分がほしくなった。
そうだ、確かさっき
テーブルに『飲みかけのコーラ』を置いたはず。
半分寝ぼけたまま、
ぼくはテーブルに手を伸ばした。
『飲みかけのコーラ』は、
ぼくの指を少しかすめ、取りそこねた。
「寝ぼけてるな、目を覚まそう」
そう改まり、
ふたたびコーラに手を伸ばした。
ところが。
ぼくの指が届こうとするたび、
『飲みかけのコーラ』はゆるやかに遠ざかっていく。
スッ
スッ
ススススス…
道ばたにヒモ付きの千円札が置かれ、
誰かが取ろうとすると引っ張られて取れない。
そんな光景が頭に浮かんだ。
この家には、まだ少し寝ぼけたぼくしかいない。
テーブルに置いてあるのは『飲みかけのコーラ』だけ。
寝起きのぼくは、そんな事実に目もくれず、
さらに手を伸ばした。
すると。
『飲みかけのコーラ』のペットボトルは、
まるで、少し回転が弱まったコマのように、
コロッ
コロッ
コロコロコロ…
倒れるでもなく転がり、
ふたたびぼくの手から逃れて止まった。
そんなにぼくに飲まれたくないのか。
こうなったら、意地でも取ってやる。
変なスイッチが入ったぼくは、
今度は勢いよく『飲みかけのコーラ』に手を伸ばした。
転がって止まった余韻で、
コーラの表面は、まだかすかに、
そして無造作に泡立っていた。
勢いよく伸ばした手が、
いよいよボトルに届こうかという、その時。
その泡たちが、まるで操られるように集まり。
ほんの一瞬、
ニタリと笑う人の顔を形づくって消えた。
気がつくと、ぼくの手は、
『飲みかけのコーラ』のボトルをつかんでいた。
体温が伝わったのか、
コーラはぬるくなっていた。
ぼくは一体、どれくらいの時間、
『飲みかけのコーラ』を握りしめていたんだろう。
こんなにぬるくなるまで。
一人暮らしのアパートには、
コーラがかすかに泡立つ音も聞こえない。
道ばたに置かれた千円札のように、
ヒモがつながれてもいない。
ぼくは、あきれるほど静かな部屋で一人、
ぬるくなった『飲みかけのコーラ』を握りしめ、呆然とした。
あれは、夢だったんだろうか。
寝ぼけていただけだろうか。
わからない。
ただ1つ、確かなのは、
帰宅した時には冷えていた『飲みかけのコーラ』が、
今はぬるいという事実だけだった。
ーーーーーーーーーー
われわれは、少しだけ。
「科学」を都合よく使いすぎたのかも知れません。
あらゆる現象を「科学」で説明できると、
いささか慢心しているのかも知れません。
あの時、
誰もいないはずの部屋で。
『飲みかけのコーラ』をそっと遠ざけ、
したり顔で笑って消えたのは。
いったい誰だったんでしょうね。
われわれの大好きな
「科学」で説明できる現象でしょうか。
それとも、ただの夢だったんでしょうか。
あなたは、どうお考えですか?
ぼくは仕事に疲れ、ふらふらになりながら、
ようやくアパートに帰ってきた。
持っていた『飲みかけのコーラ』のペットボトルを
雑にテーブルに置き、ソファへ仰向けに倒れ込んだ。
コーラがかすかに泡立つ音を聞きながら、
そのままソファで泥のように眠った。
どれくらい時間が経っただろう。
ふと、眠りが浅くなったことに気づいたぼくは、
なぜか無性に水分がほしくなった。
そうだ、確かさっき
テーブルに『飲みかけのコーラ』を置いたはず。
半分寝ぼけたまま、
ぼくはテーブルに手を伸ばした。
『飲みかけのコーラ』は、
ぼくの指を少しかすめ、取りそこねた。
「寝ぼけてるな、目を覚まそう」
そう改まり、
ふたたびコーラに手を伸ばした。
ところが。
ぼくの指が届こうとするたび、
『飲みかけのコーラ』はゆるやかに遠ざかっていく。
スッ
スッ
ススススス…
道ばたにヒモ付きの千円札が置かれ、
誰かが取ろうとすると引っ張られて取れない。
そんな光景が頭に浮かんだ。
この家には、まだ少し寝ぼけたぼくしかいない。
テーブルに置いてあるのは『飲みかけのコーラ』だけ。
寝起きのぼくは、そんな事実に目もくれず、
さらに手を伸ばした。
すると。
『飲みかけのコーラ』のペットボトルは、
まるで、少し回転が弱まったコマのように、
コロッ
コロッ
コロコロコロ…
倒れるでもなく転がり、
ふたたびぼくの手から逃れて止まった。
そんなにぼくに飲まれたくないのか。
こうなったら、意地でも取ってやる。
変なスイッチが入ったぼくは、
今度は勢いよく『飲みかけのコーラ』に手を伸ばした。
転がって止まった余韻で、
コーラの表面は、まだかすかに、
そして無造作に泡立っていた。
勢いよく伸ばした手が、
いよいよボトルに届こうかという、その時。
その泡たちが、まるで操られるように集まり。
ほんの一瞬、
ニタリと笑う人の顔を形づくって消えた。
気がつくと、ぼくの手は、
『飲みかけのコーラ』のボトルをつかんでいた。
体温が伝わったのか、
コーラはぬるくなっていた。
ぼくは一体、どれくらいの時間、
『飲みかけのコーラ』を握りしめていたんだろう。
こんなにぬるくなるまで。
一人暮らしのアパートには、
コーラがかすかに泡立つ音も聞こえない。
道ばたに置かれた千円札のように、
ヒモがつながれてもいない。
ぼくは、あきれるほど静かな部屋で一人、
ぬるくなった『飲みかけのコーラ』を握りしめ、呆然とした。
あれは、夢だったんだろうか。
寝ぼけていただけだろうか。
わからない。
ただ1つ、確かなのは、
帰宅した時には冷えていた『飲みかけのコーラ』が、
今はぬるいという事実だけだった。
ーーーーーーーーーー
われわれは、少しだけ。
「科学」を都合よく使いすぎたのかも知れません。
あらゆる現象を「科学」で説明できると、
いささか慢心しているのかも知れません。
あの時、
誰もいないはずの部屋で。
『飲みかけのコーラ』をそっと遠ざけ、
したり顔で笑って消えたのは。
いったい誰だったんでしょうね。
われわれの大好きな
「科学」で説明できる現象でしょうか。
それとも、ただの夢だったんでしょうか。
あなたは、どうお考えですか?
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