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2024年09月30日

【短編小説】『無表情の仮面』8

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【MMD】Novel Muhyojo Character1Lior2Small1.png
【MMD】Novel Muhyojo Character2Clavis2Small2.png

【第7話:人間に近づいて】からの続き

<登場人物>
リオラ
 ♀主人公、16歳
 西の国の魔法学院・高等科に在籍

エルーシュ
 ♀リオラの母親、32歳

アシェラ
 ♀エルーシュの妹/リオラの叔母、22歳

クラヴィス
 ♀10歳、南の国の魔法学院・初等科に在籍

オルニス
 ♂クラヴィスの父親、32歳
 南の国の国防軍・魔法部隊隊長
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第8話:同情と罪滅ぼし】



<17年前、西の国:王都>

私はアシェラ、5歳。
10歳上にエルーシュお姉ちゃんがいます。

お姉ちゃんは王都の魔法学院・中等科で
「天才」と言われています。

私はお姉ちゃんと同じ学院に入りたくて、
魔法をたくさん勉強しています。

お姉ちゃんはとても優しいけれど、
私の前でも笑ってくれないんです。

お姉ちゃんの笑顔が見たいです…。



お姉ちゃんは無表情だけど、
お父さんとお母さんといる時は
顔がこわばっているのがわかります。

私もお父さんとお母さんが怖いです。
生活やお勉強のスケジュールを破ると
怒られるから。

特にお姉ちゃんには厳しいです。

お姉ちゃんが笑わなくなった理由は、
お父さんとお母さんの接し方に
あるんじゃないかと思います…。

お父さんとお母さんは
とても急いでいるように見えます。

研究室にこもって、
「魔封じの秘術」とか「封印」とか、
難しい言葉を口にしています。


魔法の研究より
お姉ちゃんに優しくしてほしいけれど、
焦る2人を見ると何も言えなくなります…。

1度だけ理由を尋ねたことがあります。
そしたらお父さんは



『罪滅ぼし』



と答えたんです。

お父さんとお母さんは、
世界を危うくするような強い者を
生み出したかもしれなくて、

それを止める術を後世に残すのが
自分たちの使命だと言ったんです。

【MMD】Novel Muhyojo Episode8EroushChild3Small3.png

そのための研究が
お姉ちゃんの笑顔より大切なのか、
私には理解できません…。


そんなに強い者とは誰?
お姉ちゃんの笑顔は見られないの?

わからないことだらけの毎日は、
スケジュール通りに過ぎていきます。


ーー


<現在、南の国:国境付近の山地>

私はエルーシュ
これまで多くの国防軍に勝利してきた。

どうしてこんなことを繰り返すのか、
私にもわからない。

国の支配に興味はないし、
多くの人を傷つける罪悪感に
押しつぶされそうになる。

けれど、憎しみの衝動が襲ってきたら
自制できなくなる。

我に返ると、目の前の相手は倒れている。

戦いのさなかに『滅ぼしてやる!』
口にした記憶だけが鮮明に残って…。

この前、娘の夢を見た。
私が、16歳になったリオラに襲いかかる夢。


その時も私は
『滅ぼしてやる!』と口にしていた…。

【MMD】Novel Muhyojo Episode8Eroush2Small2.png

私は数年前、
ある国の魔法部隊の幹部たちを討ち取った。

彼らは強力な”魔封じの秘術”を使ってきた。

魔封じの秘術は
ずっと未完成とされてきたけど、
彼らの術はたぶん完成していた。

私はそこで負けるはずだった。
『やっと楽になれる』と思ってしまった。

なのに、私は封印されなかった。

見覚えのある幹部が
私にとどめの一撃を放った瞬間、
わずかに手加減された気がした。


そこで私の記憶は途絶え、
気づいたら幹部は一網打尽。
軍は撤退していた。

憎しみに支配された私が
返り討ちにしてしまったんだろう。

…バカな奴らだ…。

せっかくの私を倒せるチャンスで
手を抜くなんて。

理由?知りたくもない。

もしそれが「娘への同情」だったら、
私の自我は完全に壊れてしまう…。




過去を悔やむのはここまでにして、
この辺りに張った結界の様子を
見てみましょう。

侵入者2人を確認。
南の国の奴らじゃないってことは、
いよいよ来たか…。

妹と、成長した娘に
こんな形で再会するなんてね。

ゴゴゴゴゴゴゴ……!!

いけない、憎しみの衝動が戻って来た。

アシェラ、こんな姉でごめんね。
リオラ、こんな母でごめんね。

行きましょう、”最期の”戦いに。

エルーシュ
『憎しみの炎よ、私を包みなさい。』
『すべて滅ぼしてやる!』



ーー


<現在、南の国:国境付近の山地・中腹>

私はリオラ
アシェラさんと2人で
南の国の山道を歩いてきた。

もう少しで、
冷眼の魔女の動向を監視している
前線部隊と合流できそうだ。

アシェラ
『ねぇリオラ…お母さんの顔、覚えてる?』


リオラ
「覚えてない。」
「夢に出てきた知らない女の人がそうなのかな。」


アシェラ
『旅立つ前に見た悪夢の?』


リオラ
「うん。」


アシェラ
『その人に懐かしさを感じたんでしょ?』


リオラ
「そうなの、面識がないはずなのに。」


アシェラ
『もし冷眼の魔女が本当に母親だったら…。』
『もし目の前で封印されてしまったら…。』
『リオラは耐えられる?』


リオラ
「?突然どうしたの…?』


アシェラ
『もし封印じゃなく命まで取られたら…。』
『リオラは黙って見ていられる?』


リオラ
「…止めに入ってしまうかも…。」
「”話し合いで”なんて言い出しちゃうのかな。」


アシェラ
『私もきっと見てられない…。』
『たとえ説得なんて通用しなくても…。』


リオラ
「封印を止めるなんて…ダメだよね。」
「オルニスが守りたい人を守れなくなっちゃう。」
「クラヴィスも、南の国の人たちも。」


アシェラ
『…そ…そうだよね!私情は禁物!』
『ごめんね!迷わせるようなことを言って。』




アシェラさんは
不安を吐露したことを後悔したけど、
私は嬉しかった。


ずっと気丈だったアシェラさんが、
初めて弱さを見せてくれたから。

リオラ
「アシェラさん、ありがと。」


アシェラ
『え?』


リオラ
「なでなでしてもいい?」


アシェラ
『今?』


リオラ
「今。」


アシェラ
『なんで?(汗)』


リオラ
「ずっと支えてくれた感謝。」


【MMD】Novel Muhyojo Episode8Lior2Small.png

アシェラ
『今はいいよ///(照)』


リオラ
「じゃあ帰ってから。」


アシェラ
『…断ったら?』


リオラ
「やる。」


アシェラ
『じゃあ…リオラがお母さんに逢えたら。』


リオラ
「約束だよ?」


アシェラ
『むぅー…わかった。』
『その笑顔、お母さんに見せてあげて?』


リオラ
「もちろん!」
「私、”無表情の仮面”を外せるようになってきたから。」


アシェラ
『ふふ、楽しみ。』




たわいない話をしながら
前線部隊の基地へ近づいた時、
私は小さな違和感を覚えた。

リオラ
(……?何だろう…?)
(空気が重く湿っていく…。)
(気のせい?ただの雨の前兆?)


私がそれに気づけたのは、
先日の暗黒魔導士との実戦経験のおかげ。

アシェラさんは、私が足を止める頃には
すでに警戒態勢に入っていた。

やっぱり、彼女の魔術師としての実力はすごい。

アシェラ
『リオラ、空気が変わったのを感じる?』


リオラ
「…うん、これ湿気じゃなくて魔力だよね。」
「結界?哨戒用の探索魔法?」


アシェラ
『たぶん侵入者を検知する結界。』
『微細だけど、この一帯に張り巡らせてある。』


リオラ
「誰かの接近を警戒してるの?」
「じゃあ前線の魔法部隊が張ったのかな?」


アシェラ
『そうだといいけど。』
『もし冷眼の魔女が張ったものだとしたら…。』




ゾクッ



ふいに、私の背中に寒気が走った。

辺りの空気を押しつぶすほどの、
強い憎しみの波動を感じた。

【MMD】Novel Muhyojo Episode8 VS Eroush1.2Small.png

リオラ
(…あの女性が近くにいる…!)
(一体どこに?)


辺りに人影は見当たらなかった。
それでも憎しみの出所は何となくわかった。

リオラ
(…何か飛んでくる…後ろ?!)
「アシェラさん!こっち!」


グイッ

アシェラ
『?!』


キュイン
ドーン!

私はアシェラさんの手を引っ張り、
背後から飛んできた火球を間一髪で避けた。


リオラ
「アシェラさん、大丈夫?」


アシェラ
『うん、ありがと。』
『よく気づいたね。』


リオラ
「強い憎しみを感じたの。」
「あの日の夢と同じ憎しみ。」




ゴゴゴゴゴゴゴ……!!



火球が飛んできた方角の上空に、
強力な魔法陣が浮いていた。

魔法陣の主は見知らぬ女性。
無表情で、氷のように冷たい眼をしていた。


リオラ
「あの人は…私の夢に出てきた…!」
「まさか冷眼の魔女…?」


アシェラ
『……”お姉ちゃん”……?!』


リオラ
「…え…?!」




【第9話:笑顔を奪ったもの】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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