2024年09月24日
【短編小説】『無表情の仮面』6
⇒【第5話:雨中の魔法特訓】からの続き
<登場人物>
◎リオラ
♀主人公、16歳
西の国の魔法学院・高等科に在籍
◎エルーシュ
♀リオラの母親、32歳
◎アシェラ
♀エルーシュの妹/リオラの叔母、22歳
◎クラヴィス
♀10歳、南の国の魔法学院・初等科に在籍
◎オルニス
♂クラヴィスの父親、32歳
南の国の国防軍・魔法部隊隊長
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【第6話:魔界との模擬戦闘】
<1週間後、南の国の王都:魔法研究機関>
オルニス
『ようこそ南の国へ。』
『魔法部隊長のオルニスと申します。』
アシェラ
『お迎えありがとうございます。』
『アシェラです。』
リオラ
「リオラと申します。」
オルニス
『こちらこそ。』
『先週、娘に逢ったと聞きました。』
『魔封じの秘術の基礎を教えてくれたとか。』
アシェラ
『はい、リオラが偶然逢ったんです。』
リオラ
「わ、私は放っておけなくて…。」
オルニス
『本当にありがとう。』
『娘がとても感謝していました。』
『私は軍の任務でなかなか構ってやれなくて。』
『あの時に借りた傘、お返しします。』
リオラ
「ど、どうも…あり…!」
オルニス
『ははは、緊張しなくても大丈夫ですよ。』
『きっと自然に笑えるようになりますから。』
リオラ
「は、はいッ…!」
オルニス
『要件は西の機関長から聞いています。』
『冷眼の魔女の、次のターゲットはおそらくこの国。』
『偵察部隊を配置して警戒しているところです。』
アシェラ
『決定的な対策はあるんでしょうか?』
オルニス
『決定打はありません…。』
『頼みは魔封じの秘術でしょう。』
アシェラ
『他国もすでに使ったと聞いています。』
『封印に至らなかったことも…。』
オルニス
『ええ、完成度の問題だったようです。』
『ですが我が国の粋を集めて研究を進めています。』
『今や完成に限りなく近づいたでしょう。』
『それをぶつけるしかありません。』
アシェラ
『国境付近の山地で目撃されたそうですね。』
オルニス
『ええ、すでに張り込んでいます。』
リオラ
「私たち、確かめたいんです。」
「冷眼の魔女が母親かどうかを。」
アシェラ
『どうか現場へ行かせてください…!』
オルニス
『…我々にも”守りたい人”がいます。』
『もし戦闘になったら必要とあらば封印します。』
『たとえ魔女があなた方の家族でも。』
リオラ
「……!!」
オルニス
『場合によっては”命のやり取り”になります。』
『……構いませんか?』
私の頭にクラヴィスの顔が浮かんだ。
オルニスにも魔法部隊の人たちにも、
大切な人がいる。
その人たちを脅かす者がいれば、
最悪、命のやり取りになる。
そんなわかり切ったことを
突き付けられただけなのに、
私は怖気づいてしまった。
アシェラ
『…もちろんです。』
オルニス
『リオラさんは…。』
リオラ
「………。」
オルニス
『まぁ…簡単には割り切れないでしょう。』
『少し落ち着いてから、また…。』
リオラ
「…い、いいえ…!」
「…覚悟はできています…!」
オルニス
『…わかりました、では念のため…。』
『お2人の実力を確かめさせてもらっても?』
アシェラ
『模擬戦闘ですね。』
オルニス
『話が早い、付いてきてください。』
ーー
<魔法訓練場>
オルニス
『私の幻影魔法で疑似的な相手を映します。』
『倒すか封印するかしてください。』
『2人で戦って構いません。』
リオラ
「…訓練場の壁は…。」
オルニス
『対魔法装甲は万全です。』
『安心して強い魔法を連発してください。』
リオラ
「…わかりました…!」
オルニス
『では。』
オルニスが幻影魔法を唱えると、
辺り一帯が薄暗い荒野へ変わった。
アシェラ
『あれは…暗黒魔導士!』
リオラ
「暗黒…魔導…?!」
かつての魔界との戦争時に
人間を苦しめた上級魔導士。
歴史の教科書でしか
見たことがないような強敵だ。
アシェラ
『さすが南の国…。』
『こんな戦闘経験も受け継がれているなんてね。』
『リオラ!いくよ!』
リオラ
「うん!」
戦闘開始。
アシェラ
『相手の方が速い…!』
「リオラ!速度倍加魔法をかけるよ!』
『回避の準備して!』
暗黒魔導士は爆発魔法を唱えた。
リオラ
「危ない!」
ドーン!
私はアシェラさんの速度倍加魔法のおかげで、
間一髪で回避した。
アシェラ
『いきなりこんな高位の魔法を…!』
『リオラ、大丈夫?』
リオラ
「大丈夫、今度はこっちから!」
暗黒魔導士に有効なのは光属性の魔法。
私は両手に魔力を集中させ、
光の槍を作り出した。
リオラ
「乱れ撃ち!」
暗黒魔導士に数発ヒット。
リオラ
「手応えあり!」
私は追撃のため両手を構えたが、
アシェラさんは身構えたまま。
ふわり
アシェラ
『?!…(空気が変わった…?)』
リオラ
「一気にいくよ!」
アシェラ
(まさか…魔法遮断の霧?)
(全員の魔法を無効化する気?)
(そんなことをしたら自分だって不利に…。)
暗黒魔導士は
光の槍が直撃した傷を押さえていた。
リオラ
「アシェラさんどうしたの?チャンスだよ!」
アシェラ
(相手は十中八九…!)
(魔法以外の切り札を持ってる!)
『リオラ!深追いしないで!』
リオラ
「…え…?!」
暗黒魔導士は弱った素振りから一転、
身体から紫色の霧を出してきた。
霧に包まれた瞬間、
私の手に集中させた光の槍が消えた。
リオラ
「…力が入らない…。」
「まさか魔法がかき消されて…?」
アシェラ
『…やられた…!』
暗黒魔導士は
すかさず強力な吹雪を吐き出してきた。
リオラ
「そうだ…速度倍加も無効に…!」
アシェラ
『リオラ!危ない!』
ビュオォォォォ!
吹雪が目の前に迫った瞬間、
アシェラさんが私に覆いかぶさった。
アシェラ
『うぅ…!』
リオラ
「アシェラさん!」
「ごめんなさい…!足を引っ張って…!」
アシェラ
『…大丈夫。』
『服に込めた魔法バリアは生きてるみたい。』
『こんなの機関長の冷気魔法より涼しいわ!』
アシェラさんは強がっているけど、
明らかに深手を負っていた。
私の戦闘経験の未熟さが招いたピンチだ。
攻撃にばかり気を取られて、
魔力の流れの変化を見落とした。
今は互いに魔法は無効。
相手にだけブレス攻撃という切り札がある。
どうするの…?
何とか接近して殴るしかないの…?
魔法が使えない私に…何ができるの…?!
⇒【第7話:人間に近づいて】へ続く
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