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2024年06月27日

【短編小説】『哀別の贈り物(パートギフト)』1

【MMD】Novel Parting Gift SamuneSmall2.png

【MMD】Novel Parting Gift CharacterSmall2.png

⇒過去作品『訣別の雪辱戦(グラジマッチ)』のサイドストーリー

<登場人物>
メイレ
 主人公
 類まれな美貌と戦闘センスを持って生まれた

イーラ
 メイレの母親

ゼレシア
 魔族軍の幹部
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第1話:救済の傘】



とある世界に
魔族たちが住む国がありました。

魔族の国は、
ほとんどの人間族の国との
和平締結に成功していました。

魔族と人間族との垣根も
なくなりつつありました。

そんな穏やかな魔族ですが、
誰もが慈愛に満ちた善人ではありませんでした。

人間族と同じように、
他者や家族との確執はそこかしこで起きていました。



魔族の少女・メイレはとても美しく、
武芸や魔法の才能にも恵まれていました。

ところが、
メイレの母親・イーラは娘への嫉妬心から、
彼女を「美しくない」「無能」と罵りました。

イーラはメイレにキツく当たり続け、
ついに彼女を捨ててしまいました…。



メイレは深い悲しみと、
自己否定に苦しみました。

まだ幼かった彼女は、
母親の罵声が嫉妬心の裏返しだと気づかず、
真に受けてしまったのです。


自分が母親から愛されなかったのは、
美しくないから?武芸も魔法も弱いから?

ならば有能さ証明できれば、
母親は自分を愛してくれるかもしれないと
考えました。

メイレは魔族の国の各地を回り、
子どもながら多くの剣術大会や魔法大会で
好成績を収めました。



そんなメイレの噂は、
当時は魔族軍の幹部の1人だった
ゼレシアの耳にも届きました。

行動派のゼレシアは、
この逸材を魔族軍へスカウトするため、
自ら彼女へ会いに行きました。

ところが、
軽い気持ちでメイレを訪ねたゼレシアは、
彼女の現状に心を痛めることになりました…。

ある雨の日、



ザァァァー



スッ

メイレ
『……何?』


ゼレシア
『…傘。風邪ひくぞ?』


【MMD】Novel Parting Gift Episode1 MeileChild33Small1.png

メイレ
『…ありがと。お兄さん誰?』


ゼレシア
『私はゼレシア、魔族軍で働いている。』


メイレ
『…軍人さん?私に何か用?』


ゼレシア
『やたら強い子がいると聞いてな。』
『ぜひ会いたいと思って来た。』


メイレ
『…そう。』


ゼレシア
『もうすぐ暗くなる。』
『家に帰らないのか?』


メイレ
『…家なんてない。』


ゼレシア
『?…夜はどこで…。』


メイレ
『…最近はあそこで寝てる。』


メイレは近くの大きな木を指差しました。
太い枝の上に、即席の小屋が見えました。

ゼレシア
『…1人か?』


メイレ
『…うん、お母さまに追い出されたの。』


ゼレシア
『…事情を聞いても?』


メイレ
『…少しなら。』




メイレは母親に追い出されてから、
その日暮らしを続けていました。

時には野宿、
時には木の上に作った小屋で
雨風をしのぎました。

各地の武芸大会への出場は、
母親に認められたいだけでなく、
賞金を生活の糧にするためでもあったのです。


ゼレシア
(何ということだ…。)
(子どもがこんな境遇に1人で耐えていたのか…?)


メイレの生い立ちを知ったゼレシアは悩みました。

彼女のスカウトは、あくまで職務。

そう割り切れないほど、1個人として
彼女を助けたい気持ちが膨らんでいました。



しばらく沈黙が流れた後、

ゼレシア
『メイレ、よければウチへ入らないか?』


メイレ
『…誘拐?私の身代金なんか出ないよ?』


ゼレシア
『…すまん、誤解させた。魔族軍への勧誘だ。』
『宿舎もあるから、ひとまず雨風はしのげる。』


メイレ
『…同情なら要らないよ?』


ゼレシア
『今は1スカウトとして話しているつもりだ。』


メイレ
『…私、お兄さんの役に立てるの?』


ゼレシア
『もちろん。』


メイレ
『…私が弱かったら、お兄さんは勧誘に来てた?』


ゼレシア
『来ないな。』


メイレ
『私、お母さまから”無能”って言われてきたの。』


ゼレシア
『らしいな。』


メイレ
『…だから私…期待されるほど伸びないかもよ?』


ゼレシア
『その時はその時だ。』
『身の振り方は自分で決めてくれ。』


メイレ
(よかった…正直に答えてくれた。)
(この人なら信用できるかな…?)

『…嬉しいけど、少し考えさせて。』


ゼレシア
『わかった、また来る。』


メイレ
『…また?』




ゼレシア
『おっと、帰る前に…。』


ゼレシアは木の上の小屋に向けて、
建物の修繕魔法を放ちました。

ボロボロだった小屋が、
見違えるほどきれいになりました。


ゼレシア
『これなら安心して寝られるだろう。』


メイレ
『…ありがと。』
『あの魔法、どこで習えるの?』


ゼレシア
『軍の魔法教習所。』


メイレ
『難しい?』


ゼレシア
『簡単だ、治癒魔法の対象を無機物まで広げるだけ。』
『見習いでも1週間あれば覚えられる。』


メイレ
『…そっか…。』


ゼレシア
『風邪ひかないようにな。』


メイレ
『…あ…。』


ゼレシアは去っていきました。

メイレ
『魔族軍…か。』
『私、どうしたら…?』



ーー


その後もゼレシアは
たびたびメイレを訪ねてきました。

初めは警戒していたメイレですが、
徐々に心を開いていきました。

何より、メイレは
ゼレシアの不思議な優しさに
居心地のよさを感じました。

彼は強引に勧誘するでも、
過度に干渉するでもなく、
ほどよい距離感で対等に接してくれました。




メイレの中に、
ゼレシアへの信頼が募っていったある日、

メイレ
『ねぇ、お兄さん。』


ゼレシア
『ん?』


メイレ
『どうして何度も私のところに来るの?』
『私より強いやつはいくらでもいるでしょ?』


ゼレシア
『かもな。』


メイレ
『即戦力の人を勧誘した方がいいんじゃない?』


ゼレシア
『だろうな。』


メイレ
『…なら、どうして?』


ゼレシア
『伸びしろのある逸材を見逃す手はない。』


メイレ
『…それは軍人としての意見?』


ゼレシア
『ああ。』


メイレ
『お兄さん個人としては?』


ゼレシア
『私はおせっかいなんだ。』
『困っている者は助けないと気が済まない。』


メイレ
『私みたいな子を片っ端から助けるの?』
『…キリがないよ?』


ゼレシア
『そうだな。』
『私たちは慈善団体じゃない。』


メイレ
『なのに、どうして…?』


ゼレシア
『私はおせっかいだと言っただろう?』
『目に入ったからには助けないと気が済まない。』
『それだけだ。』


メイレ
『…?!…(涙)』


ゼレシア
『メイレの人生だ。』
『入隊するかしないかは任せる。』
『が、今後も”友として”語り合える仲でいたい。』


メイレ
『…1つ、私が壁を乗り越えたら…。』
『その時に志願してもいい?』


ゼレシア
『…母親との確執か。』


メイレ
『うん、私がお母さまのことを諦められたら。』


【MMD】Novel Parting Gift Episode1 SeelessiahSmall1.png

ゼレシア
『何か策があるのか?』


メイレ
『とっておきの”贈り物”があるの。』


ゼレシア
『…武運を祈る。』
『”早まった行動”だけは抑えてくれ。』


メイレ
『…うん、それだけは抑えてみせる。』



『私の人生は、嫉妬なんかに支配させないよ。』




【第2話:黒緋の魔法戦】へ続く

⇒この小説のPV

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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