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2024年05月21日

【短編小説】『ぬくもりを諦める病』5

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【第4話:誰にも見せないと決めた】からの続き

【登場人物】
深山 愛祈琉(みやま あいる)
 23歳、深山 元香の一人娘

<西田家4姉弟>
 ◎深山 元香(みやま もとか※旧姓・西田)
  西田家の長女(第1子)、愛祈琉の母親

 ◎西田 伸貴(にしだ しんき)
  西田家の長男(第2子)、モノづくりが得意

 ◎西田 修児(にしだ しゅうじ)
  西田家の次男(第3子)、問題児として疎まれる

 ◎西田 智里(にしだ ちさと)
  西田家の次女(第4子)、唯一明るい性格
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第5話:お母さんと2人きり】




<1年前、愛祈琉のアパート>

プルルルル、ピッ

愛祈琉
『お母さん?どうしたの?』


元香
『…修児、退院したから。』


愛祈琉
『ほんと?修児くん、今はどこにいるの?』


元香
『…西田の実家。』


愛祈琉
『…私も帰省して大丈夫?』


元香
『…たぶん。』


愛祈琉
『お母さんも行こうよ。』


元香
『…連休取れてから。』


愛祈琉
『わかった…今回は私1人で行くよ。』


このとき、私は大学4年生の冬休み。

私は急いで列車を手配して、
お母さんや修児くんの実家がある
農村へ向かったよ。


西田の実家は
おじいちゃんが亡くなって、
今はおばあちゃん1人。

村内に伸貴くんと、
末っ子の智里さんが住んでいて、
たまに実家の手伝いに行っていたよ。




村は豪雪地帯の山の中だから、
冬はすごく冷えるし、雪は何メートルも積もるよ。

放っておくと道路も庭も埋まっちゃう。
雪かきは毎日しないと外へ出られなくなるよ。

私、実家に帰った修児くんを見て驚いたの。

修児くんが毎日、
何度も雪かきをしていたから。


前より痩せていたし、
薬物の痛みが強いはずなのに、
平気なフリをしてね…。

で、私も雪かきを手伝うんだけど、

修児
「愛祈琉、そろそろ上がっていいぞ。」


愛祈琉
『もういいの?』


修児
「ああ、手伝ってくれてありがとな。」


愛祈琉
『どういたしまして。』


修児
「ちょっと行ってくるわ。」


愛祈琉
『どこに?』


修児
「智里の家に届け物。」


愛祈琉
『ちーちゃんの家?』
『私も付いて行っていい?』


修児
「おう、長靴に履き替えて来いよ。」
「雪に埋まっちまうぞ。」


愛祈琉
『わかった。』




修児くんは午後の雪かきの後、
散歩がてら智里さんの家に行くのが
日課なんだって。

智里さんは私の叔母だけど、
まわりが「ちーちゃん」って呼んでいたから、
私もそう呼んでいるよ。

智里
『今日もありがとね、修児。』


修児
「おう。」


智里
『愛祈琉も来てたんだ。』


愛祈琉
『うん、大学は冬休み中。』


智里
『楽しんで行きなよ。』
『めったに来られないんでしょ?』


愛祈琉
『うん、まぁ…。』


智里
『お母ちゃんに届けものあるわ。』
『ちょっと待ってて。』


修児
「わかった。」




一旦、智里さんの玄関を閉めた修児くんは、
そのまま智里さんの家の雪かきを始めたよ。


私も手伝おうとしたけど、

修児
「愛祈琉は休んでていいぞ。」
「さっきの雪かきで疲れただろ?」


愛祈琉
『修児くんだって…。』


修児
「オレは慣れてるから大丈夫。」


ガチャ

智里
『修児、ウチの分の雪かきまでしなくていいって。』


修児
『そうか?』


智里
『まったく…無理ばっかりして…。』
『これ、お母ちゃんに届けてね。』


修児
「おう。」


智里
『愛祈琉、修児をよろしくね。』


愛祈琉
『うん。』


修児くんは実家に帰ってきても変わらない。
やっぱり自分のことはそっちのけ。

人の心配ばっかりして、
人の役に立とうとしていたよ。



私のおばあちゃん、
修児くんにとってのお母ちゃんは、
耳がけっこう遠くなっていたよ。

認知症も始まっていたから、
修児くんとの会話が嚙み合ってなかったよ。

修児くんが何度も伝えようとして、
おばあちゃんが聞き返して、
ようやく伝わって、ぐったりして…。

これ、一見すごく苦労しているようで、
2人にとって幸せな時間だったと思う。

修児くんが幼い頃から欲しくて仕方なかった
「お母さんと2人きりの時間」だもん。


おばあちゃんも修児くんも、
きっともう長くないよ。

それでも、

母親は記憶が霞むようになって、
息子は胸に点滴を刺すようになって、

やっと手に入れた幸せだったんだ…。



【第6話:愛情飢餓の連鎖】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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