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2024年05月18日

【短編小説】『ぬくもりを諦める病』4

【MMD】Novel AichakuSyogai SamuneSmall2.png

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【第3話:閉じ込められた悲鳴】からの続き

【登場人物】
深山 愛祈琉(みやま あいる)
 23歳、深山 元香の一人娘

<西田家4姉弟>
 ◎深山 元香(みやま もとか※旧姓・西田)
  西田家の長女(第1子)、愛祈琉の母親

 ◎西田 伸貴(にしだ しんき)
  西田家の長男(第2子)、モノづくりが得意

 ◎西田 修児(にしだ しゅうじ)
  西田家の次男(第3子)、問題児として疎まれる

 ◎西田 智里(にしだ ちさと)
  西田家の次女(第4子)、唯一明るい性格
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第4話:誰にも見せないと決めた】



<4年前、愛祈琉のアパート>

プルルルル、

愛祈琉
『通話…お母さんから?』


ピッ

愛祈琉
『…もしもし、お母さん?どうしたの?』


元香
『…愛祈琉、修児のお見舞い、行ってあげて。』


愛祈琉
『お見舞い?修児くんどうしたの?』
『まさか、また転落事故でケガ…?』


元香
『…修児、ガンで入院したの。』


愛祈琉
『えぇ?!』


元香
『…私は今日、仕事で行けないから。』


愛祈琉
『待って!何で修児くんがガンに…?!』


元香
『…じゃあ。』


プツン

私が大学生のとき、
お母さんが突然そんな連絡をしてきたの。

あまりに急だったからびっくりした…。

このとき私は一人暮らしをしていて、
お母さんと疎遠になっていたよ。

西田家の実家に帰省することも減って、
修児くんともほとんど会ってなかったの。



私は慌てて
修児くんが入院している病院へ行ったよ。

受付で「修児くんの親戚です」って伝えたら、
病室に案内してくれたよ。

面会謝絶になってなくてよかった…。

私は病院の階段を上って、
2階の修児くんの病室へ入ったら、

修児
「よう愛祈琉!久しぶりだな!」
「来てくれてありがとな!」


愛祈琉
『…修児くん久しぶり。』
(あれ?…意外と元気そう…?)


ベッドで読書をしていた修児くんは、
私を笑顔で迎えてくれたよ。

身体には移動式の点滴のチューブを付けて、
以前より少し痩せていたよ。

修児
「ロビー行くか。」
「飲み物でも買ってやるよ。」


愛祈琉
『動いて大丈夫なの?』


修児
「大丈夫。」


修児くんは
移動式の点滴を手で押しながら、
私をロビーへ連れて行ったよ。



修児
「大学はどうだ?楽しいか?」


愛祈琉
『うん、楽しい。』


修児
「どんなサークルに入ったんだ?」


愛祈琉
『まだ迷ってて…。』


修児
「そうか、楽しければ何でもいいよな。」
「大学ではどんな研究をしているんだ?」


愛祈琉
『えっとね、この分野を専攻していて…。』


修児
「そうか、一人暮らしには慣れたか?」


愛祈琉
『何とか。』


修児
「カゼひいたりしてないか?」


愛祈琉
『大丈夫だよ。』


修児くんはね、
自分のことはそっちのけで
人の心配ばっかりするんだ。

私には修児くんの病状を
聞けるはずなかったけど、
もし聞いても「大丈夫」って言うだろうね。

婚約破棄されて、
転落事故で記憶喪失になったときでさえ、
今と同じ笑顔を作ろうとする人だもん。




愛祈琉
『そろそろ帰るね。』
『修児くん、お大事に。』


修児
「おう!愛祈琉もちゃんとメシ食えよ?」


愛祈琉
『ありがと。』


修児
「そうだ、コレ持ってけ。」


愛祈琉
『これ、修児くんのドリンクじゃん。』


修児
「オレはたくさんもらったからな。」
「こんなに飲み切れないのに姉貴のヤツが…。」


愛祈琉
『お母さんが差し入れてるの?』


修児
「姉貴と…智里も大量に持って来たな。」
「おかげで冷蔵庫がパンパンだ。」


愛祈琉
『お見舞いに来た私がもらってどうするの(苦笑)』


修児
「そんなお見舞いもいいだろ?」
「在庫整理だ、持ってけ。」


こうして、
私は修児くんのお見舞いに行くたびに
大量のドリンクをもらって帰ることになったよ…。


ーー


プルルルル、ピッ

元香
『…愛祈琉、何?』


愛祈琉
『…修児くんのお見舞いに行ってきた。』


元香
『…そう。』


愛祈琉
『修児くん、大丈夫だよね?治るよね…?』


元香
『…ステージ4。』


愛祈琉
『…ステージ……4…?』


つまり、修児くんはもう長くは…。

愛祈琉
『もっと早く見つけられなかったの?』


元香
『…アイツ、何も言わなかったから。』


愛祈琉
『平然としてたの…?』


元香
『…ええ、ヤセ我慢。』
『この前、職場で倒れて、ようやく見つかったの。』


愛祈琉
『修児くん…どうしてガンになっちゃったの?』


元香
『…たぶん、長年の不摂生。』


愛祈琉
『あ…。』


私が中学生のときに訪れた、
修児くんの散らかった部屋。

缶ビールの空き缶や、
灰皿からはみ出たタバコの吸い殻…。

修児くんは収入が不安定で、婚約破棄されて、
二日酔いで出勤してケガを繰り返して…。

そうやって自分を痛めつけて、
ついに身体が悲鳴をあげた…ってことだよね。




愛祈琉
『手術で取り除くとかできないの…?』


元香
『…手術はしないそうよ。』


愛祈琉
『どうして?』


元香
『…耐えられないから。』


愛祈琉
『じゃあ…どうするの…?』


元香
『…薬物療法。』


愛祈琉
『…それって…痛いんだよね…?』


元香
『…ええ。』


愛祈琉
『修児くん、笑ってたよ…?』


元香
『…あーいうヤツなの。』


愛祈琉
『私を心配させないため…?』


元香
『…かもね。』


愛祈琉
『…修児くん…。』


元香
『…通話切ってもいい?』


愛祈琉
『え?』


元香
『私、明日も仕事だから。』


愛祈琉
『……うん。』


元香
『…それじゃ。』




修児くん…隠し切れていないよ。

余ったドリンクを私にくれたのは、
「もう自分では飲めないから」なんでしょ?


私の優しい叔父さんはね、
最後の”最期”まで

苦しさを誰にも見せない決断をしたんだ…。



【第5話:お母さんと2人きり】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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