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2024年05月09日

【短編小説】『ぬくもりを諦める病』1

【MMD】Novel AichakuSyogai SamuneSmall2.png

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【登場人物】
深山 愛祈琉(みやま あいる)
 23歳、深山 元香の一人娘

<西田家4姉弟>
 ◎深山 元香(みやま もとか※旧姓・西田)
  西田家の長女(第1子)、愛祈琉の母親

 ◎西田 伸貴(にしだ しんき)
  西田家の長男(第2子)、モノづくりが得意

 ◎西田 修児(にしだ しゅうじ)
  西田家の次男(第3子)、問題児として疎まれる

 ◎西田 智里(にしだ ちさと)
  西田家の次女(第4子)、唯一明るい性格
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第1話:諦観の4姉弟】



<数十年前、とある農村>

村民A
『ちょっとちょっと!』
『聞いた?西田さんの家の噂。』


村民B
『聞いたわ。』
『おばあさまが家の全権を握ってるんですって?』


村民A
『そうらしいのよ。』


村民B
『地主の旦那さんも形無しねぇ。』


村民A
『お父さんとお母さんは?』
『最近見ないわね。』


村民B
『最近、都市へ出稼ぎに出されたって。』
『おばあさまにね…。』


村民A
『また?お孫さんの面倒は誰が見るの?』
『4人いるんでしょ?』


村民B
『おばあさまが1人で見てるんですって…。』


村民A
『でしょうねぇ…。』
『噂では、親を出稼ぎに出すのは…。』
『おばあさまが孫を独り占めするためらしいわ。』


村民B
『姑の力って怖いわねぇ…。』
『お孫さんたちはあんなにかわいいのに…。』


村民A
『長女の元香ちゃんはおとなしいわね。』
『おばあさまの言うことをよく聞いて。』
『将来、良いお母さんになりそうね。』


村民B
『長男の伸貴くんは工作が得意ね。』
『車の模型を作って、車の雑誌を持ち歩いて。』
『将来は車の整備士になりたいんですって。』


村民A
『末っ子の智里ちゃんは明るくて元気ね。』
『あのおばあさまにも物怖じしないのは智里ちゃんだけよ。』


村民B
『ほんとに”イイコ”たちね。』
『でも、あの子だけはちょっと…ねぇ…?』


村民A
『次男の修児くんはね…。』
『モノを壊すし、不良とつるんでるみたいだし…。』


村民B
『悪いけど、ろくな大人にならないわね…。』


村民A
『ええ、事情を聞いても黙ってばかり。』


村民B
『困ってるなら”助けて”って言えばいいのに…。』



ーー


<現在>

私は深山 愛祈琉

私のお母さんの実家・西田家は
とある農村の地主。

わりと裕福だけど、内情は噂の通り。
私のひいおばあちゃんの独裁だったんだって。


ひいおばあちゃんは、
私のお母さんたちを溺愛したらしいよ。

親であるおじいちゃんとおばあちゃんを
出稼ぎに出してね。

ひいおばあちゃんの目的が
本当に孫の独占だったかどうかはわからない。
本人がもうこの世にいないから。



私のお母さん・深山 元香は、
表向きは静かで家庭的な人。

けどね、冷めた人なんだ。
まるで他人とのふれあいを拒絶しているみたい。

それは娘の私に対しても同じ。
私、お母さんに抱っこしてもらったり、
スキンシップしてもらった記憶がないんだ。

お母さんは
私に話しかけることもほとんどないよ。

お母さんはいつも1人で
読書したり裁縫したりしているの。

娘とどう接したらいいかわからないのかな?
それとも、私が嫌いなのかな…?

そんなお母さんの影響か、
私も冷めた人間になったよ。

人のぬくもりへの憧れは強いけど、
私には縁がないって諦めているよ。


お母さんさえくれなかったのに、
「他人がくれるわけない」ってね…。



こんなふうに冷めているのは
お母さんや私だけじゃないんだ。

お母さんの実家・西田家の親戚には、
諦観の境地に達した人が多いよ。

お母さんの弟、長男の伸貴くんもそう。
モノづくりが好きで、村の人の評判はいいみたい。

けれど本人はお母さんと同じ。
物静かじゃなくて人を拒絶している。

モノづくりに夢中なのか、
モノづくりを愛情の代替にしているのか、
どっちなんだろう。

末っ子の智里さんだけは口達者でよく笑う人。
言いたいことは言うし、一見すごく明るい。

けれど、私には智里さんが
無理して笑っているように見えるんだ。

まるで、ギスギスした家を明るくしようと
ピエロを演じているみたい。



それで、1番の問題児とされているのが
次男の修児くん。

村の人は不良とか散々言っているけど、
私にとっては小さい頃から1番の味方だよ。

修児くんは都市で働いていて、
めったに帰省しないからあまり会えない。

けれど会えた時は、

修児
「よう愛祈琉!」
「ちょっと見ないうちに大きくなったな!」


って、いきなり私を抱っこしてくれたの。

最初はちょっと怖かったけど、
ぶっきらぼうなのは表面だけ。

お母さんも智里さんもどこか無理しているけど、
修児くんは私にストレートに愛情を向けてくれる、
優しい叔父さんだよ。

私、お母さんといても寂しいから、
帰省して修児くんに逢えたらすごく救われたよ。



けれど、私が修児くんを慕う理由は
それだけじゃない気がする。

なんとなく、
修児くんは私と同じにおいがするの。

親からのぬくもりを諦めたところも、
寂しさをひた隠しにしているところも。


修児くんが、問題行動のウラで
「何か巨大な敵と戦っていること」に
私が気づいたことも。

周りの人は修児くんの表面だけを見て
好き勝手に言うよ。

違うよ、修児くんはグレてるんじゃない、
悲鳴を上げているんだよ。

そして西田家も、その血を引く私も、
修児くんと同じ敵と戦っているんだよ。

おじいちゃんおばあちゃんも、
独裁者だったひいおばあちゃんも、
ずっとずっとご先祖さまも。



【第2話:壊す弟、直す兄】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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