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2023年12月24日

【短編小説】『タイムシーフ・タイムバンク』4

【MMD】Novel Time Bank SamuneSmall2.png
【MMD】Novel Time Bank CharacterSmall1.3.png

【第3話:他人の時間の争奪戦社会】からの続き


<登場人物>
アネーシャ・クロニス
 主人公、23歳
 お人好しで頼みごとを断るのが苦手
 人に安心感を与える”不思議な瞳”を持ち、
 聞き上手として周囲から頼られている
 反面、都合よい”愚痴のゴミ箱”にされることも多い

マイア・シリル
 アネーシャの幼馴染で親友、23歳
 おしゃべり好きで社交的
 気弱なアネーシャを支える姉の一面もあるが、
 アネーシャを愚痴の聞き役にしている節もある

トーラ・アルギロス
 「タイムバンク」の社員
 人々から余分な時間を預り、”時間利子”を付けて返すというが…?

アストレイア
 「タイムバンク」の頭取、トーラの上司
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第4話:タイムバンク本社へ】



アネーシャ
「今の話、どういうことですか?」


私は勇気を振り絞り、2人の会話に割り込んだ。


『?!!』


トーラ
『アネーシャさん?!どうしてここに?!』


アネーシャ
「勝手に聞いちゃいました、ごめんなさい。」
「人間を見放すとか方舟とか、どういうことですか?」


トーラ
『…。』


アネーシャ
「あなたたちは何者?」
「私たちから時間を預かって何をするつもり?」



『私たちはタイムバンクのビジネスとして…。』


アネーシャ
「真の目的は何なの?」
「私たちの時間を奪って、あなたたちのために使うつもり?!」



『決してそんなことは…。』


アネーシャ
『じゃあどうして?!』
『街の人たちはどうしてあんなふうになってしまったの?!』
『あなたたちが他人の時間を奪うよう仕向けたんでしょ?!』


トーラ
『アネーシャさん、落ち着いてください。』
『あなたにはすべてをお話します。』


アネーシャ
「…ごめんなさい、失礼なことを言って…。」
「よかったら聞かせてください。」
「親友を助けたいんです。」


パチッ

私は乱れた息を整えながら2人を見つめた。
マイア曰く「アネーシャの瞳は落ち着く」という目で。

トーラ
(…彼女が愚痴のゴミ箱にされるわけだ。)
(やはり彼女は聞き上手の枠を超えている。)
(これほどの包容力の持ち主なら、お連れできるだろう…。)




アネーシャ
「…?」


トーラ
『あなたには少し…難しいお願いをすることになります。』
『そこで、私たちの上司から直接お話しをさせてください。』


アネーシャ
「上司?」


トーラ
『はい、タイムバンクの頭取です。』


アネーシャ
「頭取って銀行のトップ?!」
「わ、私がお会いしてもいいんですか?!」


トーラ
『もちろんです。』
『今から連絡を取ってもよろしいですか?』


アネーシャ
「は、はい。」


トーラ
『では失礼して。』
『はい、ええ…そうですか、彼女なら…。』
『わかりました、今からお連れします。』


アネーシャ
(今から?)


トーラ
『お待たせしました。』
『頭取のアストレイア様が”ぜひお会いしたい”と。』


アネーシャ
「こ、このままの服でいいんですか?」
「帰ってスーツに着替えて…。」


トーラ
『ははは、大丈夫ですよ。』
『……我々についてきてくれますか?』
『アストレイア様は”あなたに託したい”そうです。』
『不思議な瞳と、類まれな”聞く力”を持っているあなたに。』


アネーシャ
「私、どこへ連れて行かれるんですか?」


トーラ
『タイムバンクの本社です。』
『ご安心ください、帰りも私が付き添います。』


人間から時間を集めるタイムバンクの本社?
もしかしたら危険な目に遭うかもしれない。

けど、何もできずに時間を奪われるなんてイヤ。

ここまで足を突っ込んでしまったなら、
騙されたと思って、行ってやろうじゃないの…!

アネーシャ
「わかりました、行きます。タイムバンク本社へ!」



ーー


マイア
『アネーシャ…どうしたんだろ…?』
『メッセージに既読が付かないし、会社も休んでいるみたい…。』


私がタイムバンクの本社へ行っていた時間は
どれくらいだったんだろう。

あの時は時間の感覚がなかった気がする。

その間、マイアは
私とずっと連絡が取れないことを心配していた。

そうこうしているうちに、
ある日のニュースで私が行方不明と報道されたようだ。

マイア
『ウソでしょ…?アネーシャが行方不明…?』


マイアの数字は「24分の6」。
タイムバンクへ時間を預けた効果は確かに出ていた。

マイア、自由時間が増えたんだよ?
なのに、どうしてそんなに泣くの?

マイア
『アネーシャ……ごめんね…!』
『私、あなたに甘え過ぎていた…!』
『なのに言えなかった…謝罪も、お礼も…。』


大切な人は、いなくなって初めて大切さに気づく。

私はマイアがそこまで後悔しているなんて、
知る由もなかった。



ーーーーー



アネーシャ
「ここが、タイムバンクがあるところ…?」


周りは青と紫の波がゆらゆら揺れる空間。
時計の針や数字がそこかしこへ現れては消えていく。

どう見ても人間の世界じゃないよね?

トーラを信じたいけど、
私、このまま異空間へ連れ去られるのかな…。

アネーシャ
「…ここはどこ?」


トーラ
『ここは人間界と天界の狭間です。』


アネーシャ
「天界…?神様がいるの?」


トーラ
『他の神々はここよりさらに上層の天界にいます。』
『この狭間の世界には頭取だけが残っています。』


アネーシャ
「頭取も神様?あなたも?」


トーラ
『私は神ではありません。』
『人間界で言う”使い魔”か”妖精”でしょうか。』
『頭取は神ですが…詳細はご本人から直接お聞きください。』


アネーシャ
「神様…タイムバンクも天界に?」


トーラ
『タイムバンクはこの先です。』
『もう少しで扉が見えてきます。』


私はもう驚かなくなっていた。

この異空間も、神々の存在も、何もかもファンタジー。
それを言ったらタイムバンクの時点でそうだよね。



私の”危機感メーター”が壊れたまま進んで行くと、
空間に浮かぶ巨大な扉が見えてきた。

トーラ
『着きました。タイムバンク本社です。』


アネーシャ
「大きな扉…こんなの開けられるの?」


トーラ
『えぇ、簡単に。軽く押してみてください。』


ギィィ

羽のように軽い扉を開けた先には、
優しい笑顔の女性が立っていた。


白と水色を基調としたローブをまとい、
ウエーブがかった長い銀髪はシルクのよう。

アストレイア
『アネーシャ、よく来てくれました。』
『私はタイムバンクの頭取を務めるアストレイアと申します。』


アネーシャ
「は、初めまして!(汗)」
「アネーシャ・クロニスと申しますッ!」


アストレイア
『ふふッ、そんなに緊張しなくていいのよ?』
『あなたのことはトーラから聞いています。』
『やはり人を包み込むような、優しい瞳をしていますね。』


ふわり

アネーシャ
「あ…ありがとうございます。」
(何だろう…側にいると、すごく落ち着く…。)


アストレイア
『…よかった、落ち着いてくれましたね。』
『さっそくですが、あなたに見せたいものがあるの。』
『私に付いてきて?』


アネーシャ
「は、はい!」


ニコリ

アストレイアは微笑むと、彼女の後ろにある扉を開けた。


ーー


扉をくぐり、細い廊下を少し歩くと、
いくつもの小部屋への岐路へ突き当たった。

アネーシャ
「…ここは…?」


アストレイア
『ここは皆さんの時間を預かっている”金庫”よ。』


アストレイアはそう答え、1つの小部屋のカギを開けた。

アストレイア
『さぁ入って?』


アネーシャ
「入ってって…いいんですか?金庫ですよね?」


アストレイア
『あなただから特別に開錠したの。』


私がおそるおそる小部屋へ入ると、
中央に小さな箱が置いてあるだけだった。

よく見ると、箱のフタのすき間から
しゃぼん玉が浮かんでは消えていった。

アストレイア
『しゃぼん玉をよく見て?』


アネーシャ
「あれは…誰か映っている?」
「子どもの頃のマイアだ!」


しゃぼん玉は透明ではなく、
幼馴染の幼少期の姿が映っていた。


アストレイアは、一体どうやって時間を預かっているの?
神様が管理するような場所に、どうして私が招かれたの…?



【第5話:過去の傷の補填に生きる】へ続く

⇒この小説のPV

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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