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2023年12月01日

【短編小説】『声援は 補欠選手の 悲鳴なり』4

【MMD】Novel Hoketsu SamuneSmall2.png

【第3話:声援は補欠選手の”悲鳴”】からの続き

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<登場人物>
三鼓 詠澪(みつづみ えいれ)
 主人公、17歳(背番号7)
 とある公立高校女子バスケ部の2年生
 入部以来、1度もベンチ入りできない補欠選手

石堂 満温杏(いしどう まのあ)
 詠澪と同じ高校に通う17歳(背番号6)
 女子バスケ部の2年生エース
 1年時から頭角を現し、チームの主力を担う

石堂 実温莉(いしどう みおり)
 18歳、女子バスケ部のキャプテン(背番号4)
 詠澪と満温杏の1学年上
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第4話:試合に出るから上手くなる】



私、石堂 満温杏は8歳からバスケを始めた。
1つ年上の姉がバスケをしている姿に憧れて。

姉はとても上手だった。
小学校4年生からスタメンに定着し、
6年生の時にはキャプテンとしてチームを引っ張った。

私は姉のような選手を目指して練習に励んだ。
が、私は6年生になるまでベンチ入りすらできなかった。

『お姉ちゃんはあんなに上手いのにねぇ。』
そんな陰口に気づいても、何も言い返せなかった。

私はバスケ人生の最初の4年間を、
姉へのコンプレックスにまみれて過ごした。



それでも私はバスケを諦め切れなくて、
中学校でも女子バスケ部に入った。

が、私の上達は周りに追いつけなかった。

3年生が引退して部員が16人になった時も、
1番ヘタな私はベンチ入りできなかった。
(大会にエントリーできるのは15人)

試合の日はいつも憂鬱だった。
他の選手がユニフォームを着てベンチに並ぶ中、
私は1人、会場の2階席で応援…。


苦手な先輩から『ヘタくそ』と言われて落ち込んだ。
帰り道で毎日『バスケを辞めよう』と思った。


ーー


私のそんな日々は、
2年生の時に顧問の先生が代わってから一変した。


新任のコーチは、
古典的な部活顧問とはぜんぜん違った。

普段の練習では、きついフットワークも、
お決まりの基礎練習もしない。

軽いウォームアップとストレッチの後は、
ずっと3対3や5対5のゲーム。

公式戦では、大事な試合以外の勝敗は二の次。

コーチは紅白戦や練習試合をたくさん組んで、
とにかく全員に試合経験を積ませた。


部活の公式戦以外にも、
規約の範囲内で地域のリーグ戦にもエントリーした。
そこでも選手の試合経験を優先し、順位は二の次。

新任のコーチは、
勝利至上主義から”補欠選手”を量産する
部活環境を変えようとしている人だった。




それまで1度も試合に出たことがなかった私は、
コーチのおかげで一気に変わった。

たくさんのゲームを経験することで、
自分でも信じられないスピードで上達した。

2年生が終わる頃には、
「エース」と呼ばれるようになっていた。

それでも私が驕らなかったのは、
補欠の苦しみを知っていたから。


試合の日、
私が2階席から張り上げてきた声は、
「補欠選手の悲鳴」だと知っていたから…。



ーーーーー



詠澪
「満温杏にそんな過去があったなんて…。」


満温杏
『ごめんね、隠していたわけじゃないの。』
『”補欠選手の気持ちがわかる”なんて言えなかった。』
『今、試合に出ている私が言う資格なんてないから。』


詠澪
「謝らないで!」
「私を傷つけないために黙っていてくれたんでしょ?」
「試合に出ている満温杏に嫉妬する私のために…。」


満温杏
『嫉妬…?』


詠澪
「私はチームの勝利の喜びより、親友への嫉妬が強いの…。」
「応援の声だって、補欠の悔しさを隠すため…。」
「…醜いでしょ…?」


満温杏
『私が詠澪の立場だったら同じ気持ちになるよ。』
『自分が補欠だった昔と同じようにね。』
『だからお互いさま!』


詠澪
「お互いさま…ね…。」


満温杏
『それに、私には仲間の応援が悲鳴に聞こえるの。』
『試合中でも涙が出そうになるんだ。』

『”なぜあのコートに立っているのは自分じゃないの?”』
『”試合の日なんて嬉しくない、ただの苦行”』


『そんな悲鳴に聞こえるんだ…。』


あぁ、これか。
私と満温杏が入部初日から意気投合した理由。


私と満温杏は「まとっている空気が合う」

それは補欠の悔しさや嫉妬心を
押し殺してきた人の空気だったんだ。



【第5話(最終話):補欠選手が飛べる空】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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