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2023年06月03日

【短編小説】『ツンデレという凶器』2

【MMD】Novel Tsundere SamuneSmall2.png



【第1話:裏腹の槍】からの続き



<登場人物>
麻上 紫依良(あさがみ しえら)
 主人公、20歳
 幼馴染みの怜紫(りむ)に好意を寄せているが、
 素直になれず悪態ばかりついてしまう

百瀬 怜紫(ももせ りむ)
 紫依良(しえら)の幼馴染み、20歳、マンガ家の卵
 気弱な性格で、紫依良(しえら)に言われるままになっている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第2話:闇の予感】



私がツンデレ卒業を決意してから、半年が経った。

毎朝のルーティンは変わらない。
怜紫(りむ)の家まで迎えに行き、一緒に登校。

この半年間、私は素直になるため、
色んな本を読んだり、落ち着く方法を学んだりした。

キツイことを言いそうになったら、
一息ついてみたり、自分を第三者視点で見てみたり。

とにかく、自分の”照れ隠しのクセ”を治すために、
試せるだけ試した。

その成果を、
怜紫(りむ)との通学中に出したかったけど…。

好きな人を前にすると、
どうしても裏腹な態度が先走ってしまった。


ツンツンしては後悔を繰り返す毎日。
ましてや好意を伝えることなんて、とてもできなかった…。



もどかしい日が続いた、ある朝。

紫依良(しえら)
「怜紫(りむ)、今日もお休み?」


怜紫(りむ)の母
『ええ、紫依良(しえら)ちゃん、ごめんなさいね。』


怜紫(りむ)の母親は申し訳なさそうに言った。

彼が初めて大学を休んで以来、
こうして体調を崩して休むことが増えた。



彼のヒット作『紫苑の花、枯れるまで』は、
ペースを落としながらも連載が続いていた。

紫依良(しえら)
「マンガは描けるんだ。なら、そこまで深刻じゃないのかな…?」


彼を案じる一方で、ホッとする自分もいた。

怜紫(りむ)がお休みする日は、
大学にたくさんいる”素直でかわいい女子たち”が
彼に近づくことはないから…。


紫依良(しえら)
(私…何考えてるの…?)
(今の私と、あの子たちじゃ、勝負にもならないのに…。)


こんな利己的な自分が、本当に嫌い…。


ーー


さらに1ヶ月後。

紫依良(しえら)
「アイツ、今日で1週間お休みか…。」


1人で登下校するのには慣れてきた。
けど、空虚感は日に日に大きくなっていった。

最近、一緒に登校しても、
怜紫(りむ)との会話がぎこちなかった。

今まで私は言いたい放題しちゃったけど、
素直になると決めた途端、うまく言葉が出なくなった。

私…あまのじゃく以外の
コミュニケーション方法を知らなかったのかな…。




紫依良(しえら)
「さすがに心配…連絡してみよう。」
「ツンツンしないように…!素直に、素直に…!」


私は自分に言い聞かせながら、
彼にメッセージを送ってみた。

 紫依良(しえら)
 「大丈夫?早く治しなさいよね。」


よし…!これならツンツンしてないよね?
大丈夫だよね?

彼から返事が来た。

 怜紫(りむ)
 『…うん、心配してくれてありがと。』


 紫依良(しえら)
 (べ、別にあんたの心配なんか…!)


そう文字を打ちかけて、ハッと気づいた。

ダメ!これじゃ今までと同じ。
私は素直になるって決めたの!

 紫依良(しえら)
 「お大事にね」


送信。
やっと絞りだした、素直な言葉。

どうしてこんなに簡単なことが、
今までできなかったんだろう…。

素直に「好き」って伝えられたら、
どんなに幸せだろう…。



ーーーーー



怜紫(りむ)の新作マンガは
連載を重ねるたびに大人気となり、
ついにクライマックスを迎えた。


・恋敵との悶着
・主人公のピンチ
・ツンデレ女子の葛藤

すべてを乗り越え、
彼女はようやく自分の気持ちに素直になった。

そして、いよいよ彼に想いを伝える場面で、

『最終話へ続く』



私は彼の多くの読者と同じく、
1ファンとして楽しみにしていた。

紫依良(しえら)
「ああ…どうなるの?彼女はどうやって想いを伝えるの?」
「彼はどう応えるの?どんな幸せな未来が待ってるの?」
「それに、作品のタイトルも回収されてないし…。」
「もう!待ちきれない!」


期待と妄想が膨らむ。
何しろヒロインのモデルは私かもしれない。

ツンデレな彼女が自分と重なるからこそ、
この作品には一層の思い入れがある。

だから、私は決めていた。

この作品が完結したら、彼に想いを伝えよう。
子どもの頃からキツく当たってしまったことを謝ろう。
これからは素直になると伝えよう、って。




1つだけ、気になることがあった。

最新話の最後のページは、
2人が照れながら向かい合うシーン。

その最後のコマは、
甘酸っぱいラブストーリーらしからぬ暗いコマだった。

赤黒い、くすんだ色の背景に、たくさんの黒い矢印。
指し示す先には、耳を押さえてうずくまる人のシルエット?


紫依良(しえら)
「これは…心の描写…?誰の?」


ここまで、2人の背景は校舎と、
優しく吹き抜ける風の通り道。

それが緩やかにフェードアウトしていき、
最後のコマが、これ?

小さいし、ぼかして描いてあるから、
気にならない人の方が多いだろう。

けど、私は最後の小さなコマに、
ぞっとするような闇を感じた。




【第3話(最終話):枯れた紫苑の花】へ続く


⇒この小説のPV

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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