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2023年05月29日

【短編小説】『孤独の果てに自由あり』4

【MMD】Novel Jiyu SamuneSmall1.png

【第3話:宗教改革の波、崩れる”絶対的な所属先”】からの続き

<登場人物>
白林 由羽璃(しらばやし ゆうり)
 主人公
 厳格な両親からの圧力や社会の歯車に疲れ、
 自由な人生とは何かを考え始める

リベルタス
 自由を司る女神
 ブラック企業で消耗する主人公に声をかけ、
 自由の歴史を見る旅を持ちかける

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第4話:2度の大戦、自由から”逃げる”人々】



<1930年代:ヨーロッパ・W共和国、とある繫華街>

ちょうど日が沈む頃。

この大きな街の繫華街を通ると、
イヤでも耳に飛び込んでくる声があった。

彼の演説では、誰もが驚くような
革新的なことは何も言っていない。

なのに、つい足を止めてしまう。
演説が終わる頃には目を潤ませてしまう。
吸い込まれるような、悪魔的な魅力があった。

きっと私も、この時代を生きていたら、
彼に心酔していただろう。

大戦に敗れ、国の経済はズタズタ。
失業し、貧困に転落した1人だったら、きっと。


現代から来た傍観者の私は、かろうじて、
彼の思想の恐ろしさを疑うことができた。

政治家?
『我が民族こそ、人類でもっとも優れた民族!』
『劣った民族に代わり、我々が世界の秩序を守るべきだ!』
『なのにどうだ?我々は虐げられ、経済を破壊され、貧困に陥っている!』
『そんな我々をよそに、不当に儲けているのは誰だ?!』


群衆
『そうだそうだ!あいつらを追い出せ!』
『あいつらがオレたちの仕事を奪ってやがるんだ!』


由羽璃(ゆうり)
(な、何を言ってるの…?)
(あの人、ちょっと危ないんじゃ…。)




私は、数ヶ月前のことを思い出した。

選挙前、私の勤めるオフィス街には、
多くの選挙カーが走っていた。

多くの選挙公約は、国民に寄り添うメッセージ。
それらを貫くようにこだまする、一部の過激な思想。

極右政党
『我が国は神国!現在は亡国の危機である!』
『外国人を追い出せ!市民権を奪え!』
『自衛ではなく反撃すべき!』


彼が演説で叫んでいたのは、
まさに現代の一部の選挙カーのそれだった。

由羽璃(ゆうり)
「危険な思想じゃない?なのに、どうして人々は熱狂してるの…?!」


疲れ切った民衆からの圧倒的な支持。
そして彼の悪魔的な演説の力によって、
W共和国の政権はまたたく間に交代した。

そしてついに、戦禍の足音が再び…。


ーー


由羽璃(ゆうり)
「隣国のP共和国へ侵攻…?」


ある日の新聞で、
ついにW共和国の軍事侵攻開始が報じられた。
同時に、特定の民族への激しい弾圧も始まった。

繫華街では相変わらず魅力的な演説、
そして協力者の募集が始まった。

彼に心酔する人々が、次々に駆けていった。

由羽璃(ゆうり)
「おかしいと思わない?!」
「どうして誰も止めないの?!」


この時代、身分制度はほとんど残っていないはず。
どの正義や、宗派を信じるかの制約もないはず。

由羽璃(ゆうり)
「待って!私たち、自由ななずでしょう?!」
「どうして協力するの?!」


町人A
『あの人に従えば間違いないんだよ!』


由羽璃(ゆうり)
「あの政党に連れて行かれた人たちがどうなるかわかる?!」
「協力したら、誰かを不幸にする片棒をかつぐかもしれないよ?!」
「それでもいいの?!」


町人A
『あいつらのせいで、オレたちは貧乏なままなんだろ?』
『だったら、かわいそうだが仕方ないじゃないか…。』


町人B
『そうだ、オレたちはいくら頑張っても生活が楽にならない。』
『あの人なら、そんなオレたちを導いてくれそうな気がするんだよ。』


由羽璃(ゆうり)
「その人たちが戦争を起こしたんだよ?!」
「いずれあなたたちだって前線に呼ばれるかもしれないよ?!」
「それでも従うの?!」


町人A
『うるさいな、あんたにはわからないだろ?』
『オレたちには主人と奴隷が必要なんだよ…!』


由羽璃(ゆうり)
「主人と、奴隷…?!」


自由を捨てる寸前の彼らから、ふいに出た、苦々しい本音。

由羽璃(ゆうり)
「思いのままに動かされるよ…?!」
「自由を失ってしまうじゃない!」


町人A
『今は自由より安心がほしいんだよ…!』
『何も考えずに従える存在がほしいんだ…。』


町人B
『オレたちより下の存在がほしいんだ…。』
『この怒りをぶつけていい存在がいるっていう安心がな…!』


由羽璃(ゆうり)
「…!!!…。」




そうだった。

自由になった彼らには、
確かな所属先も、心の拠り所もない。


まして、明日の生活すら危うい。
それを自分の力で変えることもできないとなれば…。

町人A
『あんたには、オレたちの気持ちはわからないだろう?!』
『小綺麗な格好した、いいとこのお嬢さんにはな…!』


町人B
『さぁ、あんたも来いよ!』
『あの人に従えば、救いが待ってるかもしれないぜ?!』


私は町人たちに、腕をぐいっと引っ張られた。

由羽璃(ゆうり)
「やめてよ!私は付いて行かない!」


私は抵抗したが、無意識にその力を弱めていった。



由羽璃(ゆうり)
(私、おかしくなっちゃったかな…?)




あの人たちには付いて行かない。
民族弾圧に協力なんてしなくない。

なのに、聞こえる…。

「仲間がいるよ。おいでよ、楽になれるよ。」って。

その声に従えば、安心できる気がして、つい…。

由羽璃(ゆうり)
「イヤだ、私は惹きつけられてなんかない…!」
「助けて…私は自由を失いたくない!!」




【第5話:自由は、孤独を楽しむその先に】へ続く

⇒この小説のPV

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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