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2023年05月13日

【短編小説】『迎えを拒む天使たち』前編

【第1話:人間は、親の愛情の”代用品”を求める】



<数十年前:とある国>


『愛着障害』という言葉を知っていますか?
病気や障害ではありません。

0〜2歳頃までに、親から

・抱っこなどのスキンシップ
・求めれば応じてくれる安心感


が十分に与えられたかどうかが、生涯、
子どもの精神の安定度に影響を与えます。

この時期に親からの愛情が不足すると、
子どもは何歳になっても、さまざまな弊害に苦しみます。

ある人は、
見捨てられるのが怖くて、他者を過度に束縛します。

ある人は、
親密になったばかりに傷つくのが怖くて、
他者を支配したり、関係から逃げたりします。



愛着障害を抱えて成長した人は、
親の愛情の”代用品”の追求に人生をささげます。


たとえば、

・お金
・権力
・名声
・薬物
・恋愛
・食べ物
・ゲーム
・ギャンブル
・アルコール

いつの時代にも
狂ったように権力を求める独裁者が現れます。

あなたの身近にも、
身体が壊れても仕事を続けるワーカホリックが
1人はいるでしょう。

もしかすると彼らは、
自らの意志でそれらを欲しているのでは
ないかもしれません。

「お母さんに甘えたい。」
「優しく抱っこされたい。」
「ぬくもりを感じたい…。」


それが2度と叶わない絶望を、
あふれ出る権力欲や自己有用感に
すり替えているのかもしれません…。


ーー


世界には、親の愛情に飢えている人が溢れています。

親の愛情の”代理満足”を求める行動がエスカレートし、
多くの戦争や悲劇が起きています。

だとしたら、

もしも愛着障害を治療、
もしくは防止できるものを発明できれば、
人間を救えると思いませんか?


そんな人間の悲願が、ついに実現したんです。
愛着障害の撲滅を願って開発されたのは、



『抱っこロイド』



人肌の質感やぬくもりを完全再現しています。

自在に形を変えられて、
普段は手のひらサイズにして持ち運べます。

持ち主の性格や趣向をAIが完全学習します。
持ち主が望むお母さんの姿や体型へモデルチェンジできます。

機械に抱っこされても味気ない?ご安心ください。
抱っこロイドはお母さんの脳の電波状態も完全再現しています。

持ち主の脳へ特殊な刺激を送り、
愛情ホルモン”オキシトシン”を出してくれます。

これにより、身体的にも精神的にも、
愛情いっぱいの抱っこで満たされます。

対象年齢は0歳から上限なしです。
いつでも誰でも、健全な成長と心の安定を得られます。

「幼少期の愛情不足」は、
人の一生を左右する、根深い問題です。

それが元で凶行に走る人間をなくしたい。
世界から戦争や悲劇をなくしたい。


それが、開発者の願いです…。


ーー


”抱っこロイド”は、またたく間に全世界へ普及しました。
そしてすぐに、めざましい効果が現れました。

とある大国の大統領は、
隣の国へ侵略戦争を仕掛けていました。

「あの国は元々、我が国と1つの民族だ!」
(本当は失った求心力を取り戻すため、戦争に勝つところを見せたい…。)


国内の反対派を弾圧し、強制的な徴兵制度を敷き、
独裁者として権力を振るっていました。

ところが、抱っこロイドが普及して間もなく、
同国はあっさり侵攻を止めて撤退したのです。


「私は間違っていた。ようやく気づいたのだ。」
「私が支配力を求めていたのは、母の愛情の代理満足だったことに。」




人々の労働環境も、劇的に良くなりました。
ブラック企業やブラック上司がいなくなったんです。

社員を使い捨てにするブラック経営者たちは、気がつきました。

「私はお金を、心の空洞へ流し込んでいるだけだった。
「お母さんに甘えられなかった寂しさで、ぽっかり空いた、心の空洞へ…。


部下を罵るブラック上司たちは、気がつきました。

「私は、見下せる誰かがいなければ、
 無能だとバレるのが怖かったんだ。」


「子どもの頃、”出来の悪い子は愛してあげない”と、
 お母さんから見捨てられるのが怖かったから…。」


抱っこロイドがあれば、いつでも甘えられます。
あの頃は満たしてもらえなかった心の傷を、
いつでも癒してもらえます。

家庭不和も、ご近所トラブルもなくなりました。
誰もが満たされ、戦争のない平和な世界が訪れました…。



ーーーーー



<現代:とある国>


少女
「ねぇママ。」



「なぁに?」


少女
「最近ね、学校がなんだかおかしいの。」



「おかしいの?どういうふうに?」


少女
「お友達がみんな、急に冷たくなったの…。」
「私、いじわるした覚えないのになぁ…。」



「あらあら…。心当たりがないのね。」


少女
「うん。AちゃんもCちゃんも1回学校に来なくなって、その後から。」



「AちゃんもCちゃんも、学校をお休みしたの?」


少女
「うん、ずっと調子悪そうだったの。」
「それで病欠して、戻ってきたら…。」



「そういえば授業参観のとき、何だか空気がひんやりしてたわ…。」


少女
「ママもそう思う?!みんな別人みたいなの。」
「Aちゃんなんだけど、目が笑ってないっていうか…。」



「確かに、変ね…。(涙)」


少女
「”私、何か悪いことした?”って聞いてもね。」
「AちゃんもCちゃんも”そんなことないよ”って言うの…。」
「1回、学校をお休みした子は、みんなそんな感じなんだ…。」
「他のみんなは、気づいてないのかなぁ…?」



ーー


<翌日:少女が通う小学校>


少女はいつも通り、放課後に友達と遊んでいました。

(病欠から復帰して以来、みんなの様子がおかしい。)
そう思いましたが、少女は友達との時間を楽しみました。

ついつい、はしゃぎ過ぎて、
親友のAちゃんが転んでしまいました。

Aちゃん
『いたたた…。ヒジを擦りむいた…。』


少女
「Aちゃん大丈夫?!すぐ手当てしよ!」


駆け寄った少女は、Aちゃんのヒジを見て驚きました。

少女
「あれ…?血が出てない?」
「それに、この色って、どこかで…。」


Aちゃん
『……。(クスクス…。)』


少女
「うちにはないけど、みんな使ってるもの。」
「もしかして、抱っこロイドの表面と同じ色?!」


Aちゃん?
『…あは。バレちゃった。』


少女
「Aちゃん、どういうこと?!」
「AちゃんはAちゃんだよね?!何か着てるだけだよね?!」


Aちゃん?
『…実はね…!』




【第2話:天使は、”抱っこ”で人間になる】へ続く

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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