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2023年04月09日

【短編小説】『反出生の青き幸』3

【MMD】Novel HanSyussyo SamuneSmall1.png

【第2話:欲しかった”家族”】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>

冷泉 希望来(れいせん みくる)
 主人公
 名家の生まれだが、生い立ちから
 ”結婚””子ども”への強い拒否反応を持っている

エルフィーダ
 人間そっくりに作られた女性型アンドロイド
 仲間とともに人間社会に紛れて生活している

ヴィオス
 エルフィーダが所属する
 アンドロイドコミュニティのリーダー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第3話:”由緒ある血筋”】



エルフィーダたち”家族”と出逢って1年が過ぎた。
母を亡くし、抜け殻だった私はもういなかった。

ある金曜の夜。
私は今日もコミュニティのみんなと過ごすため、
ヴィオスの家に向かっていた。

エルフィーダから『残業で遅れる』と連絡があった。
上司から面倒な仕事を押し付けられたと憤っていた。

希望来
(よし!今夜はたくさん愚痴に付き合ってあげる!)


そんなことを考えながら、夜道を歩いていると、

黒服の男
『冷泉 希望来さんですね?』


黒いスーツにサングラスの男性が、
私に声をかけてきた。

希望来
「はい、そうですが、あなたは…?」


黒服の男
『お嬢様…悪く…思わないでください。』


希望来
「え…?何…?…う!!」


背後にいたもう1人の男が、
私の口にハンカチを押し当てた。

希望来
(しまった…!相手は1人じゃなかった…!)
(まさか…誘拐?!誰か…助け…。)


ハンカチに染み込んだ睡眠薬によって、
私は意識を失った。


ーー


目を覚ますと、そこは見慣れない部屋。

希望来
(私…どうしたんだっけ…。)
(確か薬をかがされて、そのまま…。)


ようやく記憶が蘇ってきた。
私はきっと、どこかへ連れ去られたんだ。

ここはどこ?
知らない場所なのに、この空気感はよく覚えている。
常に責められ、追い立てられるような鋭い空気。

希望来
「もしかして…私の実家…?!」


ここは、
とっくに追い出されたはずの”名家”だった。

冷泉家当主
『お帰り、希望来。』
『手荒な帰省をさせたことをお詫びする。』


希望来
「叔父…さん…?!」


和装の壮年男性が、私へ話しかけてきた。
冷泉家・現当主の叔父だった。

希望来
「どうしてこんなことするの?!」
「私のことは、もうどうでもいいんでしょう?!」


冷泉家当主
『まぁ待ちなさい。』
『叔父さんだって鬼じゃない。』
『あのときは希望来にすまないことをしたと反省したんだよ。』


希望来
「反省…?!」


冷泉家当主
『お詫びに、希望来さえよければこの家に帰ってきてほしい。』
『もちろん丁重に扱わせてもらうし、不自由ない生活を保証する。』


希望来
「何を今さら…!」
「母さんをいじめて、私たちを捨てたくせに!」


冷泉家当主
『1つだけ、希望来にやってもらいたいことがあるんだ。』
『それさえやってくれたら、何でも望みを叶えよう。』


希望来
「やってもらいたいことって…まさか…!」


冷泉家当主
『悪い話じゃないだろう?』
『希望来のためにも、お前の”仲間”のためにも。』


ギクリ。

希望来
「…?!仲間…?!」
(そういえば冷泉家は、アンドロイド研究の大口スポンサー…!)


冷泉家当主
『まぁ、ゆっくり考えてくれ。』
『ムダな血は流したくないはずだ。』



『たとえそれが 青 い 血 でもな。』




希望来
「……!!」


私は何も言い返せなかった。
叔父は不敵な笑みを浮かべ、部屋を出ていった。


ーー


私の父は男4人兄弟の長男。
存命なら冷泉家の当主になる人だった。
父のすぐ下に叔父と、歳の離れた2人の弟がいた。

ところが、弟は2人とも未婚のまま早逝。

唯一の後継者となった叔父は、
最近になって子どもができない身体だと判明した。

このままでは家系が断絶する。

家の没落を恐れた叔父は、
唯一の血縁者である私に、再び目をつけた。

婿入りさせる予定の男性と結婚させ、
私に跡継ぎを産ませる。

それが私に”やってもらいたいこと”…。




…まただ…!また私は、血のつながりに苦しむ。

私の意志に反して、
まわりは私に”子孫を残せ”と迫ってくる。

だけど、もし私が断ったら…。
その報復で研究を止められたら、仲間の命が…。
私はどうすればいいの…?!

希望来
「…ごめんね、エルフィーダ、ヴィオス、みんな…。」
「やっぱり私は、みんなの苦しみに共感できない…。」


頭では理解しても、
心の底では羨ましく思ってしまう。
子孫を残せないあなたたちが…。


そんなの関係ないと言って、
私を家族として迎えてくれたのに。

私はどうしても、その1点で彼らを裏切っている。
罪悪感が消えない…。



ーーーーー



どれくらい時間が経っただろう。
ふいに、部屋のドアをノックする音が響いた。

泣き腫らした目を入口へ向けると、
叔父が入ってきた。

冷泉家当主
『失礼する。気分はどうかね?』
『少しは前向きに考えてくれたかな?』


希望来
「断ったら、彼らをどうする気?」


冷泉家当主
『断る?そんな選択はできないはず。』
『お前がやつらを見殺しにできるわけがないからな。』


希望来
「…くッ…!!」


冷泉家当主
『知っての通り、我らはアンドロイド研究に多額の投資をしている。』
『もちろん、それなりに決裁権限を持っている。』
『少々、研究方針を変えさせるくらいはな。』


希望来
「研究方針を…?何をするつもり?!」


冷泉家当主
『そうだな、例えば…。』
『意志を司る回路を奪い、人間の奴隷にでもするか。』


希望来
「そんな…!!」


冷泉家当主
『連中は”人間との共存”などと、ぬるいことばかり言うが、理想論だ。』
『やつらが人間よりも強く賢い以上、反乱を恐れない方がおかしいだろう。』
『だったら危険の芽を摘んでおくのが平和のためだと思わないか?』


希望来
「やめて!」
「彼らは人間への反乱なんて考えていない!」
「本当に良い人たちだよ!」


冷泉家当主
『フン…。力を持つと変わるぞ?』


希望来
「違う!彼らはただ人間と同じように…。」
「ささやかな幸せを感じて生きたいだけ!」
「それを破壊するというの?!」


冷泉家当主
『それはお前の返答次第だ。』
『おとなしく帰ってくるなら考えてやる。』


希望来
「ウソばっかり!」
「私だって、用済みになったら捨てるつもりでしょう?!」
「母さんを追い出したみたいに!」


冷泉家当主
『そんなことはしない。』
『あの女と違って、血のつながったお前を追い出すわけがないだろう?』


希望来
「血のつながりが何だっていうの?!」
「彼らは、どこにも居場所がなかった私をあたたかく迎えてくれた…!」
「血のつながりなんて関係なく、本当の家族みたいに包んでくれた…!」
「あなたたちと違ってね!!」


冷泉家当主
『あくまで、やつらの肩を持つんだな?』


希望来
「ええ!」
「彼らはあなたたちより、ずっと豊かな心を持っている。」
「そんな優しい彼らの意志を奪うなんて…!」
「この人でなし!!」


冷泉家当主
『言うようになったな。』
『今のお前がわめいたところで、何もできやしない。』

『おい!この娘を例の”客間”へ連れていけ!』
『貴重な跡継ぎのためだ、くれぐれも”丁重に”扱え。』


あの日、私を連れ去った2人の男が入ってきた。

黒服の男
『お嬢様…悪く…思わないでください。』


私は2人に両手を掴まれ、
奥へ連れていかれそうになった、その時…。



【第4話:子孫を残さない幸せ】へ続く

⇒この小説のPV動画

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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