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2022年12月28日

【短編小説】『また逢いましょう、ホタル舞い降りる川で』4

【MMD】Novel Hotaru SamuneSmall1.png

PART3からの続き

ーーーーーーーーーー
<登場人物>
華丘 純白(はなおか ましろ)
 主人公。いじめを苦に、地元から遠くの大学へ進学。

松崎 玲美愛(まつざき れみあ)
 純白(ましろ)の大学の同級生。地元出身。
 女子バスケ部ではあまり目立たない。
 主人公の初恋相手から恋人になる。

吉永 悠平(よしなが ゆうへい)
 純白(ましろ)の大学の同級生。
 明るく気さくで、頼れるキャプテン気質。
 男子バスケ部では1年生から活躍。

一条 天音(いちじょう あまね)
 純白(ましろ)の大学の同級生。
 気が強く、面度見がいい。女子バスケ部のまとめ役。
ーーーーーーーーーー

6. 一の坂川とホタル

6.一の坂川とホタル

地元から離れて2回目の春を迎えた。
去年と違うのは、僕の隣に玲美愛(れみあ)がいてくれること。

恋人同士にはなったが、
2人の関係はあまり変わっていなかった。

互いにバスケ部のきつい練習に精を出し、
学生食堂で一緒にお昼を食べ、授業のレポートを手伝った。

部活が休みの日は、
市内のショッピングモールや公園へ遊びに行った。


--


そんな充実感でいっぱいの春が過ぎ、初夏を迎えた。

『今年はね…どうしても純白(ましろ)君に見せたい景色があるんだ。』

珍しく平日に部活が休みの日、
玲美愛(れみあ)は僕にこう言った。

『暗くなったら…一の坂川(いちのさかがわ)に行きましょ?』

「うん、行きたい。えっと…門限は大丈夫?」

夏は日が長い。
彼女の門限19時を過ぎても、まだ明るさが残るのだ。

『大丈夫!今日はね、門限ちょっと遅くしてもらったの。』
『どうしても…暗くなってから見せたいから!』

「そっか…親に無理言ってくれたんだね、ありがと。」

『無理なんてしてないよ。私が純白(ましろ)君と一緒に行きたいの。』

--

僕らは街外れにある大学から、市内の中心へ移動した。
一の坂川へ着く頃、ちょうど薄暗くなり始めた。

公園は夏祭りで賑わい、屋台が並んでいた。
手をつないで歩きながら、僕は玲美愛(れみあ)に言った。

「わかった!見せたいものって、花火でしょ?」

『外れー!』

「違うの?何だろ…わかんないや。」

『ふふっ、あと少ししたら来てくれるよ。』

「来てくれるって?」

たわいないやり取りに夢中になるうちに、
あたりはすっかり暗くなっていた。

そして、


--


『来たみたい。川のほとりに行こ!』

玲美愛(れみあ)は待ちわびた様子で、僕の手を引いた。

『着いたよ!見て見て!』

「わぁ…!ホタルがこんなに…!」

そこは、一の坂川にかかる、小さな橋のたもと。

群青色のキャンバスいっぱいに飛び回るのは、
エメラルドグリーンの宝石たち。


僕は美しさのあまり、言葉を失った。
こみ上げる感動の涙を抑えられず、目元を濡らした。

--

『お祭りにはさ、毎年、家族で来てるの。』
『だけど今年はね、純白(ましろ)君と一緒に見たかったんだ、ホタル。』

「…ホタルか…花火だったら、みんな逃げちゃうね。」

『あはは、そうでしょ?びっくりした?』

玲美愛(れみあ)は茶目っ気たっぷりに笑った。
つないでいた手を少しだけ、強く握りながら。

「…びっくりした…。せっかくのホタル、にじんで、よく見えないや。」

僕は静かに、目元をぬぐった。


--


僕らは橋のたもとから、川のほとりへ降りてみた。
草や木の枝に留まるホタルの姿がよく見えた。

「ホタルって、近づいても逃げないんだね。」

『うん。だからね、こんなこともできるんだよ。』

そう言った玲美愛(れみあ)は、手のひらを夜空へかざした。
すると、1匹のホタルが、彼女の小さな手のひらへ降りてきた。

『ホラ、きれいでしょ?』

淡いエメラルドグリーンの光を優しく包む彼女は、
まるで妖精のようだった。


--

『純白(ましろ)君の地元には、ホタルいないの?』

「どうかなぁ。山の方に行けばいると思うけど、寒い地域だからね。」
「街中にこんなにホタルが来る景色、初めて見た。」

『そっか。今日、連れて来てほんとに良かった!』

「うん。感動した。ありがとね。」
「玲美愛(れみあ)と2人で見れて幸せだよ。」

僕がそう言うと、
玲美愛(れみあ)はいつかの夜景の日のように、頬を赤らめた。

『私、ホタルは見慣れてるけど…。』
『純白(ましろ)君と一緒に見たホタルが、今までで1番きれいだよ!』


その後、2人は言葉をなくし、
川辺の宝石たちに包まれ、立っていた。



『来年も、2人でホタルを見に来ようね。』



それが、二度と果たされない約束になることを、
僕は知るよしもなかった。



ーーーーーーーーーー


PART5へ続く


⇒この小説のPV

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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