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2022年12月26日

【短編小説】『また逢いましょう、ホタル舞い降りる川で』2

【MMD】Novel Hotaru SamuneSmall1.png

PART1からの続き

ーーーーーーーーーー
<登場人物>
華丘 純白(はなおか ましろ)
 主人公。いじめを苦に、地元から遠くの大学へ進学。

松崎 玲美愛(まつざき れみあ)
 純白(ましろ)の大学の同級生。地元出身。
 女子バスケ部ではあまり目立たない。
 主人公のことが気になる様子。

吉永 悠平(よしなが ゆうへい)
 純白(ましろ)の大学の同級生。
 明るく気さくで、頼れるキャプテン気質。
 男子バスケ部では1年生から活躍。

一条 天音(いちじょう あまね)
 純白(ましろ)の大学の同級生。
 気が強く、面度見がいい。女子バスケ部のまとめ役。
ーーーーーーーーーー

4.家飲みでの接近

4.家飲みでの接近

大学祭が終わり、僕は厳しい練習の日々に戻っていた。
あれ以来、女バスとの接点はない。

ついでに言うと、僕は同じ学部に友達がいなかった。

僕が所属する学部は女子が9割。
高校まで女子とまともに話してこなかったので、
同じ授業を受けても交流は生まれなかった。

数少ない男子はゆるくまとまったようだが、
僕はその中に入るほど、お近づきになれなかった。

--

そんなある日の夜。

練習を終え、アパートで燃え尽きていた僕に、
同期の吉永 悠平(よしなが ゆうへい)から連絡が入った。

彼は同じ1年生ながら、
すでに控えのポイントカードとして活躍していた。
性格は明るく気さくで、頼れるキャプテン気質だ。

「いま女バスの1年生で家飲みしてる。
 天音(あまね)の家だから、純白(ましろ)も行け。」


一条 天音(いちじょう あまね)
女バスの1年生で1番上手い、まとめ役のような存在だった。

性格は気が強く、面度見がいい。
とはいえ、どうしてほとんど接点のない僕に声をかけたのか。

「なんで僕を?もっと場を盛り上げられるヤツを呼んだらいいのに。」

僕は半ば自虐的な口調で聞き返した。
が、なんだかんだで悠平(ゆうへい)に押し切られ、
僕は教えてもらった住所へ向かった。

「悠平(ゆうへい)もいるの?」

「いや、オレはちょっとね…。」

悠平(ゆうへい)が何かを濁した気がしたが、
僕はひとまずスルーした。

--

夜道を歩きながら、
僕はふと、中学生のときに受けた”ウソ告白”を思い出した。


「クラスの杉山さんが
 純白(ましろ)のこと好きだってよ。校舎裏で待ってるってさ。」

僕はクラスメイトにそう言われ、
向かった先でからかわれたことがあった。

「騙されてやんの!杉山さんがお前なんか好きなわけねーじゃん!」

…疑いの傷は、心の奥深くに刻まれるものだ。
僕は今回も、そのパターンを覚悟した。

「誰彼がお前のこと好きなんだって。」
その言葉が出たら、どう言い返してやろうか。
そればかり考えていた。

--

天音(あまね)の家に着いた僕は、
おそるおそるインターフォンを鳴らした。

「いらっしゃい、上がって。」

少し出来上がった天音(あまね)が出迎えてくれた。
僕は警戒心を解かず、家に入った。

すると、本当に女バス5人で家飲みをしていた。
そこには玲美愛(れみあ)もいた。

ひとまず騙されてはいない、そのことに安堵した。
その後は何のことはない、よくある大学生の家飲みを楽しんだ。

--

しばらくすると、
女バスの面々が「酒や食材が切れた」と口にした。

「ねぇ、純白(ましろ)君、玲美愛(れみあ)と食材買ってきてよ。」
天音(あまね)はなぜか、僕と玲美愛(れみあ)を指名した。

(なんだ、買い出し係で呼んだのか…。)

僕はそんな思いを隠して言った。
「いいよ。僕1人で行くからゆっくりしてて。」

すると、

「まーまーいいから!お前らで行って来いって!」
すっかり出来上がった女バスの面々は、
僕の背中をバシバシ叩いた。

(な、何が「いいから」なんだよ…。)

僕は酔っ払いの勢いに押され、釈然としないまま外に出た。
玲美愛(れみあ)は少しうつむき、頬を赤らめていた。
…酔いのせいには、見えなかった。

--

街外れにあるキャンパスのまわりは田んぼだらけだ。
夜になると清流の音が響き、夏はホタルが舞った。

僕と玲美愛(れみあ)は
近くのスーパーまでのあぜ道を並んで歩いた。

天音(あまね)の家が見えなくなった頃に、
玲美愛(れみあ)が口を開いた。

『…き、今日は来てくれてありがとう。』
『ごめんね、お使いさせちゃって…。』


「そんな、いいよ。特に予定もなかったし、楽しいよ。」

おかげで、これから4年間、
一緒にやっていく女バスのメンバーのことを知れた。

何より、僕は大学祭のとき以来、
玲美愛(れみあ)と話す機会に恵まれて嬉しかった。

--

『あのね…今日、純白(ましろ)君に来てもらったのはね…。』
玲美愛(れみあ)は手をもじもじさせながら言った。

「食材の買い出し係じゃないの?」

『ち、ちがうよ!』
『この日、女バスで家飲みしようってなったとき、私がみんなに頼んだの…。』
『純白(ましろ)君を呼んでほしいって。』


「え…?」

僕は予想もしなかった言葉に、変な声が出た。

『私の家、門限が厳しくてさ。』
『本当は家飲みとか、あんまり参加できないんだ…。』

確かに玲美愛(れみあ)はいつも、
練習が終わると急いで帰宅していた。
居残り練習できない事情があるのは察していた。

「そうだったんだ…。」

『でもね!今回は…親に無理を言って参加したの。』
『その…どうしても純白(ましろ)君と話したかったから!』


「僕と…?!」

『うん。お祭りで初めて話したとき、楽しかったからさ。』
『また…お話したいなって思ってたんだ。』
『…ご、ごめんね!いきなりこんなこと…!』

「い、いや、大丈夫だよ、嬉しいよ。」
「その…びっくりしてさ。」

『そうだよね、びっくりするよね…。』
『みんなにも無理を言っちゃったと思ってる。』

『だけどみんな、ニヤニヤしながら「任せろ!」って。』
『どうしてかな…嬉しそうに協力してくれたの。』

…どうやら女バスの面々も、
僕らが楽しそうだったと気づいていたようだ。

ようやく、あのときの
「ヒナ鳥を見守る親鳥」の眼差しの意味を理解できた。


--

玲美愛(れみあ)は頬を赤らめながら、話を続けた。

『本当はお祭りの前から、純白(ましろ)君のこと見てたんだ。』
『れ、練習中ずっと…。』


「練習中ずっと?!」
「僕なんか毎日ヘバってるし…。」
「みんなよりヘタで、いいとこなんてなかったよ。」


玲美愛(れみあ)が楽しいと思ってくれたのは嬉しかった。
ただそれ以上に、僕は自分が情けなく感じた。

『そんなことないよ!』
『私には、それでも必死で走る純白(ましろ)君が眩しく見えたの!』

『私も、女バスのみんなよりヘタで、足手まといだからさ…。』
『大学でもバスケ続けたけど、もう辞めようかなって何度も思った。』

『だけど、毎日倒れても立ち上がる純白(ましろ)君を見て、
 私も頑張ろうって思えたんだよ!』


僕は玲美愛(れみあ)の言葉に、胸が熱くなった。
僕のかっこ悪い姿を、そんなに好意的に見てくれていたなんて。

--

その後、僕らは買い出しを終え、天音(あまね)の家へ歩き出した。
並んだ2人の距離は、さっきよりも少しだけ近づいていた。

…もう少しで、互いの手が触れそうなくらいに。


ーーーーーーーーーー



PART3へ続く


⇒この小説のPV

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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