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2022年11月25日

【短編小説】『白の国は極東に』1

【MMD】Novel Shiro Kyokuto SamuneSmall1.2.png

<欧州・とある国>



母親
「あらあら、買ってからずっと見てるのね。」


少年
『うん。地球儀ほしかったんだ!ありがとママ!』
『世界にはこんなにたくさんの国があるんだね!』


クル、クル、クル、

少年
『ここが僕らの住んでる国。』
『ここがロシア、インド、中国…。』
『すごいなぁ。こんなに広い国がある。』


クル、クル、クル、

少年
『あれ?』


母親
「どうしたの?」


少年
『インドの左上と、ヒマラヤのあたりが白くなってるよ。』
『他の国は赤や青なのに。この白い場所にはどんな国があるの?』


母親
「白いところはね、どこの国か決まってない場所なの。」
「いろんな国が”自分の領土だ”って言ってるのよ。」


少年
『そっかぁ。どこの国か決まってない場所は白いんだね。


母親
「そうよ。」


クル、クル、クル、

少年
『あれ?』


母親
「どうしたの?」


少年
『中国の東にある島も白く塗られてるよ。』
『けっこう大きい島が4つあるけど、ここにも国がないの?』


母親
「そこはね…昔は”二ホン”という国があったけど、滅びてしまったの。」


少年
『えぇ?!国がなくなっちゃったの?』
『どうして?近くの国から攻められちゃったの?』


母親
「攻められてなんかないわ。」
「”二ホン”の人たち同士でケンカしちゃって…中から滅びてしまったの。」


少年
『どうしてどうして?!”二ホン”の人たちってそんなに怖いの?』
『悪いことして、神さまから天罰が落ちちゃったの?』


母親
「そんなことないわ。」
「とっても優しい人たちばかりだったそうよ。」


少年
『優しい人たち?』


母親
「ええ。ものを盗んだり、誰かを傷つけたりする人も少ない。」
「夜に外を歩けるし、水道のお水は飲めたそうよ。」


少年
『いいなぁー。』
『そんなに優しい人たちが、どうしてケンカなんかしたの?』


母親
「学者さんたちがいろいろ考えてるんだけど、”二ホン”の人たちに



  ”みんなやってるから病”



 が広まりすぎたから、ですって…。」


少年
『”みんなやってるから病”…?』


母親
「ええ。みんながやってることに自分も合わせずにはいられない病よ。」
「学校では、みんな同じお勉強をしてる?」


少年
『同じのもあるけど、ほとんどみんな違うお勉強をしてる。』
『だって、みんな好きなことも得意なことも違うもん。』


母親
「お友達と意見が違ったら、どうする?」


少年
『僕はこう考えるけど、きみはどう?って聞く。』
『みんな、考え方が違うから。』


母親
「じゃあ、もし言いたいことを言わなかったら?」


少年
”我慢カウンター”が溜まっちゃう。』


母親
「そうよね。”我慢カウンター”を溜めると身体によくないものね。」


少年
『うん。僕、あの”カチッ”て音が好きじゃないんだ。』
『でも、あんなに大きな音だから自分が我慢したってわかるんだよね!』


母親
「そうね。”我慢カウンター”を発明した人はすごいわね。」


少年
『ねぇママ。』


母親
「なぁに?」


少年
『二ホンには”我慢カウンター”がなかったの?』
『みんな同じになるわけないのに。』
『みんな同じにしてたら、”我慢カウンター”が爆発しちゃうよ?』


母親
「二ホンからは”我慢カウンター”の破片がたくさん見つかってるわ。」
「だから二ホンの人たちも持ってはいたの。」


少年
『じゃあ、きっとみんなの”我慢カウンター”、爆発しちゃったんだね…。』
『だけどさ、あの”カチッ”て音、すごく大きいよね。』


母親
「そうね…。」


少年
『溜まったらすぐわかるはずなのに…。』
『どうして二ホンの人たちには、あの音が聴こえなかったの?』


母親
「”みんなやってるから病”にかかるとね…。」
「”我慢カウンター”の音が聴こえなくなっちゃうの…。」


少年
『そんなことしたら、しんじゃうよ!』
『どうしてそこまでして、みんなと同じにするの?!』


母親
「みんなと同じにしないと、仲間外れにされたり悪口を言われるの。」


少年
『みんなやってることをしなかったときも?』


母親
「ええ。みんなと違うことするとね、二ホンの人は”ケイサツ”になるのよ。」


少年
『警察に?二ホンではすぐ警察になれるの?』
『友達のパパに聞いたら、むずかしい試験に受かったって言ってたよ?』
『警察って強そうで、みんなを守ってくれる人じゃないの?』


母親
「本当はそうよね。二ホンにも警察はいたのよ。」
「だけど二ホンには”ケイサツ”もいたんですって…。」
「みんなと違うことをした人を許さないケイサツがね…。」


少年
『警察と…”ケイサツ”…?!』




ーーーーー



<数十年前・旧二ホン領>



--(とある学校)--

教師
「お前は何度言ったらわかるんだ!髪染めは校則で禁止だ!」
みんなと同じ黒髪にして来い!

生徒
『先生、わたしのお母さんは欧州の人です。』
『わたし、地毛が茶髪なんです。』

教師
「関係あるか!この学校にいる限り、みんなと同じにしろ!」
「生徒指導室へ来い!」

生徒
『どうして…こんなのおかしいよ…!!』
『だけど仕方ないよね…。みんな我慢してるんだから。

カチッ
カチッ


ーー


--(旧・△△県)--

『車の窓ガラスが割られてる!』

「どうして…いたずらにしては度が過ぎてない?!」

『ええ…。ん?車の後ろに貼り紙が。』

  病気をまき散らしに来るな
  よそ者が△△県に入ってくるな
  みんなと同じように移動を自粛しろ

『そんな…。』

「わたしたち△△県民だよ?!」
「ナンバープレートが他県というだけで?!」

『…仕方ないか…。みんな我慢してるから。

カチッ
カチッ


ーー


--(とある街・繫華街)--

「おい、あんたどうしてマスクしてないんだ?!」
「恐怖のウイルスが蔓延してるんだぞ!」

『え…?』

みんなと同じようにさっさとマスクをしろ!」
「バイオテロリストめ!」

『どうして見知らぬ人に怒鳴られなきゃいけないの…?!』

『…だけど…仕方ないか…。』
『みんな我慢して、マスクしてるんだから。』

カチッ
カチッ


ーー


--(とある民家)--

母親
「アンタ、いつまで引きこもってるつもり?」

息子
『…。』

母親
「アンタこのままじゃ、授業についていけなくなるよ?」
「いい大学に入って、いい会社に入れなくなるじゃないの。」
「みんな学校行ってるのに、アンタだけ取り残されてるよ。」

息子
『…学校がつらいんだ…。』

父親
「学校がつらい?そんなものは甘えだ!ぜいたくを言うな!」
「世間にはお前より苦労してるヤツもいる!」
「そいつらだって、頑張って勉強してるんだぞ!」

「どうしてお前だけ、みんなと同じようにまっとうに生きられないんだ?!」

息子
『…(ギリッ…)!』

カチッ
カチッ
カチッ


ーー


「カチッ」?

何の音でしょう?二ホンのいたるところで響きます。
とても大きな音です。

なのに誰ひとり、この音に気づきません。
聴こえていないのでしょうか?



この音はいったい、どういうときに鳴るんでしょう?
どうやら、

「我慢」
「みんなと同じ」
「みんなやってるから」


に反応しているようです。
そして、言われた人だけでなく、言った人からも聴こえます。



謎の音がする、この装置。
今や、地球に生きるほぼすべての人間が持っています。

「自分を押し殺すことは寿命を縮める」
「長期間の我慢はうつ病のリスクを高める」

それが研究でわかったとき、この装置の発明者は願いました。

『我慢で命を落とす人を救いたい。』

欧州の、とある親子も話していましたね。
そう、”我慢カウンター”です。

二ホン中で鳴り響く音は、
二ホン人が持つ”我慢カウンター”が溜まっていく音です。

ものすごい早さで溜まっていきます。



もちろん当時の二ホン人も、
ほぼ全員”我慢カウンター”を持っています。

なのに、どれだけ「カチッ」という音がしても、
所持者は気づきません。

”我慢カウンター”は機械です。
使いすぎると少しずつ、熱が溜まっていきます。

所持者はそれすら気づきません。

機械の熱はおろか、自分の心の焦げつきにさえも。



そして、ある日とうとう…。



【後編】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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