2019年02月05日
黒の倨傲
その槍を持って一度舞えば、100人を魅了し、1年の寿命を奪われる。そんな呪われた噂が立ったのは、舞踏家一門の頭領が若くして死んだ時だった。彼は普段から好んで、薄気味悪い槍を使って舞っていたのだ。
頭領の死後、彼が好んで使った槍は使用する事を禁じられ、蔵の奥へとしまわれた。もともとあの槍は南蛮から来た赤い目の商人が売っていた物だったが、頭領が値切りに値切って信じられない程の安値で手に入れた物だった。
南蛮から来た武器の割に、不思議と日本の文化を感じさせる顔の装飾が槍には施されていた。顔にはどこか血を拭ったような汚れがついており、掃除を任せられている小間使いも恐ろしがって近寄らなくなってしまう。
薄気味悪くて、捨てるにも捨てられず困っていたその時、あの南蛮の商人がフラリとやってきて引き取ると申し出たのだ。彼は売った値段と同じ小銭で槍を引き取ると、薄い笑みを浮かべ、妙な音でこう言った。「ごチソうさまでシタ」
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