2019年11月30日
映画で旅するイタリア Italy in Cinema
映画で見るイタリアといえば、日本人なら誰しも『ローマの休日』を真っ先に思い浮かべるに違いない。若い新婚カップルでさえ、真実の口やスペイン広場でのジェラートは、定番のローマ観光として外せないだろう。
あまりにも有名な『ローマの休日』は今回は置いておいて、個人的にイタリアを訪れた際に頻繁に思い出した映画の中から、有名スポットが舞台となっている作品をいくつかご紹介したいと思う。
★★★ ヴェネツィア Venezia ★★★
数々のジェームス・ボンド・シリーズが映画化されてきたが007初のミッションということで、歴代で最も若いダニエル・クレイグによるボンド、本格的なアクション満載で見応えアリです。
ヴェスパー(エヴァ・グリーン)という美しい相棒と共にモンテネグロのカジノからヴェニスへと舞台は移り、海に沈むパレスというクライマックスへと突っ走り、本気で愛した女性を失うという悲劇で終る今作、ヴェニスでは運河沿い、アカデミア橋などでロケをしている。
ダニエル・クレイグは『ミュンヘン』での演技が強い印象を残し、ハンサムな俳優さんだなぁ、と思っていたところ、新星007に大抜擢されたので期待していたのだが、この作品はその期待を上回るシャープな出来だった。今までのボンドにない若々しさがやはり最大のポイントかもしれない。初々しいねー
【Favorite!!】
007シリーズで一番好きなのはダニエル・クレイグの『スカイ・フォール』だが、この『カジノ・ロワイヤル』はロマンティックさでは今までで最高なのではないだろうか。彼の初任務にして本気の恋が描かれているのだから。しかも後半の舞台はロマンティックさ倍増のヴェネツィア。よっ!ゴンドラが似合う男、ダニエル 相手役を、私の好きなエバ・グリーンが演じているのもファンとしては嬉しい
ちょっとどころか、結構切ないラストにほろりとさせられる、新しい007です。
★★★ ヴェネツィア Venezia ★★★
この映画に関しては『映画で見るパリ』で、パリが舞台の前半について書いているのでそちらもチェック。
ヴェネツィアでは、かなりの場所でセットを組んでロケをしているので、『ツーリスト』ロケ地めぐりの旅をするなら行くべき場所がたくさんある。
ふたりが到着するサンタ・ルチア駅、構内を一歩出るとすぐ目の前にカナル・グランデがある。普通はツーリスト満載のヴァポレットに乗ってホテルへ向かうが、ハイソなエリーズはもちろん優雅に水上タクシーを使う。
そして、ディナーシーンはペギー・グッゲンハイム美術館併設のレストランで行われたので、ロケ地巡りついでに食事するのも一興
有名所としては、フランクが殺し屋に狙われ市場へ逃げ込むシーンが撮影されたリアルト橋、クライマックス前に舞踏会に向かうフランクが歩く鳩が飛び交うサンマルコ広場ももちろんたっぷり登場する。
また、ロンドン市警支部入り口のシーンはアルセナーレ(かつてヴェネツィア海洋共和国の造船所だった所で、今はイタリア海軍の施設になっている)で行われたが、本島の外れの方なのでここまで行くツーリストは海洋博物館目当ての人以外ほとんどいない。
カラフルなヴェニスの街の中、高級クチュールに身を包んだアンジーの「ハイソ」ぶりが物凄い。どう見ても「訳アリの特別な女」!そして、ヴェニスの中央駅から出て来る「一般人のアメリカン・ツーリスト」ジョニデ、エリーズの行動に対する戸惑い方がめちゃくちゃ普通…。なのにどこか「この人はどんな事情を持っているんだろう?」と思わせるところが、さすがジョニデ。
クライマックスに向けたパーティ・シーン。会場へ向かう着飾ったアンジーが最高にゴージャス!この舞踏会の入り口シーンに使われたのは自然史博物館。方やタキシード姿なのに貧相に見えてしまうジョニデ…
【Favorite!!】
私はこの映画のアンジ―がとっても好きだ。パリ編でも書いたが「スパイ役が最高に似合う女優」だと思っているので、頭のキレる女性を演じるのはお手のものだが、一般人ツーリストであるフランクに対する罪悪感で涙目になるシーンには、男性でなくともグッとくる。強い女、絶対に人前で涙など見せなそうな女の涙ほどそそるものはないだろう。う〜ん、見習いたいわー
★★★ フィレンツェ&ヴェネツィア Firenze & Venezia ★★★
ラングドン・シリーズ第3弾は、原作を読んだ後に映画を見たので、正直ちょっとがっかり。ベストセラー小説の映画化は本当に難しいものだと思う。原作に忠実に映像化するなら、とうてい2〜3時間内に収めることは不可能だからだ。
当然切り捨てられるエピソードは出てくるし、そのエピソードがストーリーに影響するものなら、どう矛盾なく繋げるか、原作とは違う展開に変更しなければならないことも多い。だから随所で「あれあれ?」と思ってしまい、しかもエンディングまで違っていたので、映画自体をあまり楽しめなかった。ヴェネツィアのシーンがかなり端折られていたのも残念。サンマルコ寺院の内部をもっと見たかったなー。
しかし、フィレンツェ、ヴェネツィア、そしてイスタンブールと有名な観光地を移動しながら、またしてもタイムリミットの迫る中でいかにしてラングドンが世界を救うのか、または救えないのか、ハラハラドキドキしながら、ぜひとも大画面で見たい作品だ。
とにかくフィレンツェの観光名所がこれでもかと登場するこの映画、まずはヴェッキオ宮殿。映画でも何度も登場しているので、絶対に外せない観光名所といえる。ラングドンとシエナが殺し屋と死闘を繰り広げるのがこの宮殿。
そして、フィレンツェといえば、のドゥオモことサンタマリア・デル・フィオーレ教会。教会付属の正六角形が特徴的なサン・ジョバンニ洗礼堂は、ダンテが洗礼を受けた場所であり、ラングドンたちがダンテのデスマスクを発見する場所でもある。ミケランジェロが称賛した「天国への門」と呼ばれる東側の門では、常にツーリストが前に立って写真を撮っている(レプリカだけど)。この礼拝堂内部は黄金に輝くモザイク画で覆われていて、なんだかものすごく現実離れした空間だなぁと、強烈な印象を受けた記憶がある。門だけでなく、内部見学も絶対にお勧めだ。
ボーボリ庭園は、アルノ川西岸にあるピッティ宮殿(現在は美術館として公開されている)の裏に広がる広大な庭園。ここは、ラングドンとシエナが追手から逃れ、ウフィツィ美術館経由でヴェッキオ宮殿へと続くヴァザーリの回廊(全長約1km!)への入り口を発見するシーンに登場。う〜ん、さすがイタリア、面白すぎる!
このヴァザーリの回廊は、アルノ川に架かるヴェッキオ橋の2階部分を通ってウフィツィ美術館へと続いている。回廊内部には貴重な美術作品が飾られているが、何分古いので制限された人数でのツアーでしか入場できなかったので私は入ったことがない。この映画の公開後、この回廊の認知度と人気が急上昇したこともあり、大改修が行われ、公開は2021年予定とのこと。今度は私も入ってみた〜い!
実はこの回廊、『冷静と情熱のあいだ』にも順正が写生する場所としてちょこっと登場する。フィレンツェ旅行の前には、こちらの映画もおすすめです
『冷静と情熱のあいだ』の記事はこちらへ。
あまりにも有名な『ローマの休日』は今回は置いておいて、個人的にイタリアを訪れた際に頻繁に思い出した映画の中から、有名スポットが舞台となっている作品をいくつかご紹介したいと思う。
★★★ ヴェネツィア Venezia ★★★
『007 カジノ・ロワイヤル Casino Royale 』 (2006/英=米=チェコ マーティン・キャンベル監督) 6代目ボンドにダニエル・クレイグを迎え、ジェームス・ボンドが007になってからモンテネグロへ赴き、カジノで最初のミッションに奔走する姿と、ヴェネツィアでの彼の本気の恋の結末を描く。 |
数々のジェームス・ボンド・シリーズが映画化されてきたが007初のミッションということで、歴代で最も若いダニエル・クレイグによるボンド、本格的なアクション満載で見応えアリです。
ヴェスパー(エヴァ・グリーン)という美しい相棒と共にモンテネグロのカジノからヴェニスへと舞台は移り、海に沈むパレスというクライマックスへと突っ走り、本気で愛した女性を失うという悲劇で終る今作、ヴェニスでは運河沿い、アカデミア橋などでロケをしている。
ヴェニスの海底に沈んだパラッツォは、リアルトの野菜市場のカナル・グランデを挟んだ向かいに実在するが、勿論沈んだのはスタジオに造られたセット。 実際ヴェニスへ行くと多くの建物が随分古く、いつ沈んでもおかしくないほど老朽化しているのが見て取れる。ヴェニスでの豪華ホテル内部の撮影は、実はプラハのナショナル・ミュージアム。ロケの多くはプラハで行われた。 |
ダニエル・クレイグは『ミュンヘン』での演技が強い印象を残し、ハンサムな俳優さんだなぁ、と思っていたところ、新星007に大抜擢されたので期待していたのだが、この作品はその期待を上回るシャープな出来だった。今までのボンドにない若々しさがやはり最大のポイントかもしれない。初々しいねー
【Favorite!!】
007シリーズで一番好きなのはダニエル・クレイグの『スカイ・フォール』だが、この『カジノ・ロワイヤル』はロマンティックさでは今までで最高なのではないだろうか。彼の初任務にして本気の恋が描かれているのだから。しかも後半の舞台はロマンティックさ倍増のヴェネツィア。よっ!ゴンドラが似合う男、ダニエル 相手役を、私の好きなエバ・グリーンが演じているのもファンとしては嬉しい
ちょっとどころか、結構切ないラストにほろりとさせられる、新しい007です。
★★★ ヴェネツィア Venezia ★★★
『ツーリスト The Tourist 』 (2010/米=仏 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督) パリ。警察が追っている大物犯罪者と繋がっていると思われる謎の美女を監視する警察は、カフェで彼女が手紙を受け取る現場を目撃。犯罪者を逮捕するため、リヨン駅へと向かう彼女を追跡する。 そして舞台はパリからイタリアのヴェニスへ。アメリカ人ツーリストのフランク(ジョニー・デップ)は、TGVの中で出会った印象的な謎の美女エリーズ(アンジェリーナ・ジョリー)に惹かれていくが、訳ありな彼女と過ごすうち何故か命を狙われることに。どうやら彼を利用しているらしい彼女に翻弄されながら、巨大な陰謀に巻き込まれていく。 |
この映画に関しては『映画で見るパリ』で、パリが舞台の前半について書いているのでそちらもチェック。
ヴェネツィアでは、かなりの場所でセットを組んでロケをしているので、『ツーリスト』ロケ地めぐりの旅をするなら行くべき場所がたくさんある。
ふたりが到着するサンタ・ルチア駅、構内を一歩出るとすぐ目の前にカナル・グランデがある。普通はツーリスト満載のヴァポレットに乗ってホテルへ向かうが、ハイソなエリーズはもちろん優雅に水上タクシーを使う。
エリーズに誘われるまま便乗して最高級ホテル・ダニエリまで来てしまうフランク。しかし、ふたりが泊まるスイートルームの撮影は、カナル・グランデ沿いのピサーニ・モレッタ宮のセットで行われた。 |
そして、ディナーシーンはペギー・グッゲンハイム美術館併設のレストランで行われたので、ロケ地巡りついでに食事するのも一興
有名所としては、フランクが殺し屋に狙われ市場へ逃げ込むシーンが撮影されたリアルト橋、クライマックス前に舞踏会に向かうフランクが歩く鳩が飛び交うサンマルコ広場ももちろんたっぷり登場する。
また、ロンドン市警支部入り口のシーンはアルセナーレ(かつてヴェネツィア海洋共和国の造船所だった所で、今はイタリア海軍の施設になっている)で行われたが、本島の外れの方なのでここまで行くツーリストは海洋博物館目当ての人以外ほとんどいない。
カラフルなヴェニスの街の中、高級クチュールに身を包んだアンジーの「ハイソ」ぶりが物凄い。どう見ても「訳アリの特別な女」!そして、ヴェニスの中央駅から出て来る「一般人のアメリカン・ツーリスト」ジョニデ、エリーズの行動に対する戸惑い方がめちゃくちゃ普通…。なのにどこか「この人はどんな事情を持っているんだろう?」と思わせるところが、さすがジョニデ。
クライマックスに向けたパーティ・シーン。会場へ向かう着飾ったアンジーが最高にゴージャス!この舞踏会の入り口シーンに使われたのは自然史博物館。方やタキシード姿なのに貧相に見えてしまうジョニデ…
【Favorite!!】
私はこの映画のアンジ―がとっても好きだ。パリ編でも書いたが「スパイ役が最高に似合う女優」だと思っているので、頭のキレる女性を演じるのはお手のものだが、一般人ツーリストであるフランクに対する罪悪感で涙目になるシーンには、男性でなくともグッとくる。強い女、絶対に人前で涙など見せなそうな女の涙ほどそそるものはないだろう。う〜ん、見習いたいわー
★★★ フィレンツェ&ヴェネツィア Firenze & Venezia ★★★
『インフェルノ Inferno』 (2016/米 ロン・ハワード監督) 『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続く、ダン・ブラウン原作のロバート・ラングドンシリーズ映画化第3弾。ラングドン教授がフィレンツェの病院で、記憶喪失状態で目覚めるところから始まる。いきなり何者かに狙われた彼を助けた女医シエナと、再び世界を救うためにタイムリミット真近のミッションに挑む。ダンテのデスマスクに隠された謎を追いながら、フィレンツェからヴェネツィア、クライマックスではイスタンブールへと飛ぶ。 |
ラングドン・シリーズ第3弾は、原作を読んだ後に映画を見たので、正直ちょっとがっかり。ベストセラー小説の映画化は本当に難しいものだと思う。原作に忠実に映像化するなら、とうてい2〜3時間内に収めることは不可能だからだ。
当然切り捨てられるエピソードは出てくるし、そのエピソードがストーリーに影響するものなら、どう矛盾なく繋げるか、原作とは違う展開に変更しなければならないことも多い。だから随所で「あれあれ?」と思ってしまい、しかもエンディングまで違っていたので、映画自体をあまり楽しめなかった。ヴェネツィアのシーンがかなり端折られていたのも残念。サンマルコ寺院の内部をもっと見たかったなー。
今回トム・ハンクス演じるラングドン教授と共に謎解きに挑戦する女医シエナが、原作とはかなり違うイメージの女性になっていたことも同じ物語と思えなかった要因のひとつだろう。それでもフェリシティ・ジョーンズはやはり上手い。シエナだけでなく、シンスキー女史の設定もかなり変えられていた。 |
しかし、フィレンツェ、ヴェネツィア、そしてイスタンブールと有名な観光地を移動しながら、またしてもタイムリミットの迫る中でいかにしてラングドンが世界を救うのか、または救えないのか、ハラハラドキドキしながら、ぜひとも大画面で見たい作品だ。
とにかくフィレンツェの観光名所がこれでもかと登場するこの映画、まずはヴェッキオ宮殿。映画でも何度も登場しているので、絶対に外せない観光名所といえる。ラングドンとシエナが殺し屋と死闘を繰り広げるのがこの宮殿。
衝撃的な結末を迎えるその死闘の舞台となった五百人広間の壁画は、当初レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロの共作になるはずだったが未完のまま終わり、コジモ1世がヴァザーリに命じて改修されたもの。映画のようなこと(天井が崩れる)が実際に起きたら、それこそイタリアにとっては大損害でしょうねー |
そして、フィレンツェといえば、のドゥオモことサンタマリア・デル・フィオーレ教会。教会付属の正六角形が特徴的なサン・ジョバンニ洗礼堂は、ダンテが洗礼を受けた場所であり、ラングドンたちがダンテのデスマスクを発見する場所でもある。ミケランジェロが称賛した「天国への門」と呼ばれる東側の門では、常にツーリストが前に立って写真を撮っている(レプリカだけど)。この礼拝堂内部は黄金に輝くモザイク画で覆われていて、なんだかものすごく現実離れした空間だなぁと、強烈な印象を受けた記憶がある。門だけでなく、内部見学も絶対にお勧めだ。
ボーボリ庭園は、アルノ川西岸にあるピッティ宮殿(現在は美術館として公開されている)の裏に広がる広大な庭園。ここは、ラングドンとシエナが追手から逃れ、ウフィツィ美術館経由でヴェッキオ宮殿へと続くヴァザーリの回廊(全長約1km!)への入り口を発見するシーンに登場。う〜ん、さすがイタリア、面白すぎる!
このヴァザーリの回廊は、アルノ川に架かるヴェッキオ橋の2階部分を通ってウフィツィ美術館へと続いている。回廊内部には貴重な美術作品が飾られているが、何分古いので制限された人数でのツアーでしか入場できなかったので私は入ったことがない。この映画の公開後、この回廊の認知度と人気が急上昇したこともあり、大改修が行われ、公開は2021年予定とのこと。今度は私も入ってみた〜い!
実はこの回廊、『冷静と情熱のあいだ』にも順正が写生する場所としてちょこっと登場する。フィレンツェ旅行の前には、こちらの映画もおすすめです
『冷静と情熱のあいだ』の記事はこちらへ。
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