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2018年07月19日

香港&スコットランド in『世界の涯てに Lost and Found』

            ♪ 逢いたい人は誰ですか? ♪

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『世界の涯てに Lost and Found』
(1996/香港)監督: リー・チーガイ

不治の病に冒された娘と、彼女が恋するイギリス人、そして香港に住む青年ふたりとの三角関係を描くラブ・ロマンス。

香港。タイトルバックとエンドロールに高層ビルや巨大なショッピング・センターなど中環(セントラル)、銅鑼湾(コーズウェイ・ベイ)の現代的な風景が映る。


【ストーリーとロケ地】

23歳にして癌に冒されたケリー(ケリー・チャン)はある日、父親が経営する船会社で倒れかけたところをスコットランド人のセイラ―、テッドに助けられる。彼からスコットランドの沖に死者の魂が帰っていく「世界の涯て」という場所があり、そこが彼の先祖の故郷であることを聞いたケリーは、そのセントキルダ島について調べ始める。そのうち優しいテッドにも興味以上のものを感じ始めるが彼は突然いなくなってしまう。

偶然、街で探し物を何でも引き受ける便利屋のチュン(金城武)に出会ったケリーは、チュンに「自分に希望を与えてくれた男性」を探すことを依頼。手掛かりはわずかだったが、彼は見事にテッドを探し当てる。

彼の事務所ロケには上環(ションワン)にあるビルが使われた。尖沙咀(チムサーチョイ)にある海員倶楽部などもテッドを探し当てる際のロケ地となっている。あまりツーリストが行く場所ではないので、香港のもうひとつの顔が見られる。

しかしテッドは父親から継いだホテル経営のためにスコットランドへ戻らねばならず、空港へ向かうところだった。彼が去る直前、自分もスコットランドへ連れて行ってくれと頼むケリー。彼女を愛するテッドは快諾し後日呼び寄せると約束する。

渡英準備ができるまでの間、ケリーはチュンの便利屋で働くことに。助けを求めてチュンのもとへ来る人々の手伝いをするうちに、病気も忘れて過ごす楽しい日々。しかし病は確実に進行していた。突然倒れたことで、病気のことがチュンにバレてしまう。

チュンが自分を愛していることを悟ったケリーは、チュンに何も云わず一人スコットランドへ。テッドの経営するキングス・ハウス・ホテルに滞在しながら、美しいスコットランドの自然の中でゆったりと日々を過ごすケリーと、彼女が自分の愛を受け入れてくれるのを静かに待つテッド。

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このロケ地はグレンコーの近くに実在する同名のホテル。映画に出て来るように、周囲をスコットランドらしい雄大な山々に囲まれ、鮭の上ってくる清らかな川や美しい湖などが点在する。『007スカイフォール』『ブレイブ・ハート』『ロブ・ロイ』など多くの映画のロケ地となっている有名な観光名所だ。

そして、年に一度「死者の魂が故郷へ帰って行く日」がやってくる。
テッドに連れられ、海の見える断崖へ向かったケリー。寒流と暖流が交わり、海面が生き物のような白い霧に覆われた。その瞬間自分が今居るべき場所がどこなのかを悟るケリー。スコットランド「世界の涯て」でケリーはどんな決断を下すのか…。

このラストの神秘的な映像は、スコットランドの先端、ハイランド地方の北西部ストール Stoerにあるオールドマン・オブ・ストール Old Man of Stoer(海にそそり立つ高さ六十メートルの奇岩)を見下ろす崖で行われた。
グレンコーを含め映画を見たなら必ずや行ってみたくなる場所だ。

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★★★★★(ネタバレ注意)


若くして癌に冒され、現実的に死と向かい合わねばならないケリーは、何度も自分の窮地を救ってくれたテッドに仄かに恋心を抱く。そんな彼女にとって彼はマジシャンのような存在。死後の魂には帰る場所がある、という魔法を信じさせてくれた存在だ。しかし便利屋の手伝いをする過程でこの世に魔法など存在しないことを実感するケリー。

奇跡は起きないと、確実に死期が近いことを悟った彼女は、自分を愛し始めたチュンから離れることを決意。それは彼女の優しさだった。スコットランドでテッドからさり気ない優しいアプローチをされながらも、彼女は全てを彼に預けることができない。

そして死者の魂が故郷へ帰るという神秘的な光景を目にした瞬間、自分自身の故郷である香港へ帰りたいと思う。

『I wanna go home』
彼女の場合、それはチュンのもとだったが、私が自分の旅の最中に感じた『I wanna go home』のホームとは一体どこだったのだろう…。

映画館でこの映画を見た時、最後の暖流と寒流が交わる瞬間の光景は、私のスコットランドへの興味をかきたてた。
スコットランド沖、ヘブリデス諸島と呼ばれるまさに世界の果てにある、セントキルダ島という世界遺産でもあるこの稀有な島の歴史とともに、私の心にスコットランドを深く印象付けた忘れがたい映画だ。



posted by Izumi at 11:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画の舞台
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