2018年07月02日
世界1周の旅:アジア編 H【ヨルダン】 初めまして、中東
A voyage round the world : Asia Edition H Nice to meet you, Middle East! 【February 2011】
香港から未知の国ヨルダンへ
香港からの深夜便は、途中タイのバンコクで大勢のアラブ人を載せ、一気に中東色が濃くなった。
そんななか明らかに浮いている私は髭を蓄えた男たちの好奇な視線に突き刺されながらも、仲良くなった日本語を習っているというヨルダン人CAから交通情報をゲットしたりして過ごしていたのだが、香港からの風邪を引きずっていた絶不調の私に、更に不幸は押し寄せる。
早朝のクイーン・アリア空港
最悪のタイミングでの生理。
あぁ、女って面倒くさい!
しかもJALであればトイレに生理用品が設置されているのだが、女性客の少ないロイヤル・ヨルダン航空にそんなサービスは望むべくもないし、予定外だったので手荷物にも入っていない。
仕方なくトイレットペーパーを厚巻きにしてナプキンの代用とする。
まるで「インパラの朝」状態…。
香港を発って14時間、ロイヤル・ヨルダン航空は、気温2度のアンマン、クイーン・アリア空港へと着陸した。
まだ薄暗がりのなか霧が深く立ちこめ、ぼんやりと灯りが空港施設を浮かびあがらせる早朝5時半、私は中東の国ヨルダンへと足を踏み入れた。
空港の建物を出ると、身を切るような寒さが襲ってきた。
ハードなフライトの後で朦朧とした意識の中、待ち受ける過酷な旅を予感していた気がする。
微熱に加え生理による貧血と深夜フライトの疲れや寝不足が合わさり、最悪の体調で空港に降り立った時点でも、私はまだこの先どうするかを決めていなかった。
選択肢は幾つかあった。
一つ目はとりあえずアンマン市内へ入る。
二つ目は紅海のリゾート、アカバへ直行する。
三つ目はまず遺跡で有名なペトラヘ行く。
どこへ行くにしても各都市への長距離バスはアンマン市内から出ているので、一度市内へ向かわなければならない。
空港からダイレクトにアカバかペトラへ行くにはタクシーを使うという楽ちんイコール高額な方法しかないからだが、私は女一人。
車という密室にドライバーと二人だけで5、6時間も過ごすことの危険性はエミちゃんから聞いた「中東でのセクハラ厳重注意報」で知っていたので当然却下。
早朝なのでカフェは開いていないし、香港の超近代的な空港とは違い到着ロビーにゆっくりできるような場所は勿論ツーリスト・インフォメーションなどあるはずがない。
とにかく横になって眠りたい気持ちが強かったが、気温2度という寒さのなか回らない頭で暖かい場所へ行きたいとぼんやり考えながら空港建物のドアから出ると、なかなか来ないと噂の市内行き空港バスが待機しているではないか。
これは乗らなきゃ損、とばかりに走り、アカバ行のバスが出ている7thサークルまで乗ることに決めた。
乗客は数名だったし英語が通じているのかわからず不安だったが、「アカバ行きのバスに乗り換えたい」と訴えて「7thサークル?」と聞いてみると「そのまま乗ってろ」というしぐさをされたのでおとなしく座る。空港で少しディナール紙幣を引き出したので何とかなるだろう。
もうどうにでもなれ!という投げやりな暗澹とした気分で朝靄のなか街へ向かうバスの硬い座席に身を沈めたのだった。
アカバの高級ホテル脇に繋がれていたラクダ。違和感まったくナシ。
地獄の強行軍
しかし、寒い。
中東の2月は雪が降るほど寒いのだとエミちゃんから聞いてはいたのだが、ネパールどころの寒さじゃない。
日本にいるのと変わらない真冬の寒さに「中東イコール暑い」という勝手なイメージだけでナメてかかっていた自分の勉強不足を呪う。
どうやら7thサークルに着いたらしく、ドライバーが降りろと合図してくれたのだが、スーツケースと共に降ろされたのは、三車線ほどの高速道路の脇だった。もちろん標識なんて何もない。
長距離バスのオフィスが集まる場所は近くのはずだから大きなバスターミナルらしきものを探して歩いてみるが、方向感覚が全く働かない。
早朝だから人通りもないし「地球の歩き方」は持っていても細かい地図が載っている訳ではない。目に入る文字はほぼアラビア語。
行き詰まった私はたまたま商品を搬入するためにドアを開けていた薬局らしき店のおじさんに尋ねることにした。
貴重にも英語の看板を掲げていたお店だったので英語は通じたようだ。
アラビア語訛りの英語で道路の向こう側だろうと教えてくれた。
さて、次の難問は何車線もある大きな道路の向こう側へ渡ること。目の前を車が物凄いスピードでビュンビュン走っていて途切れることがない。それはそうだ。信号などないのだから。
しかしいつまでも途方に暮れている訳にはいかない。
自分が動く以外に道は拓けないのが一人旅なのだ。
が、これがなかなか渡れない。
そのうち自分が入ってしまいそうなスーツケースを引きずったコドモが道路を渡ろうとウロウロしているのを見かねたのか、道路の向こう側で興味深げに見ていたオジサンがスルスルとこちらへ渡ってくると、何やらアラビア語で喋りながらついて来い、という仕草をするではないか。
迷う間もなく彼に従って何とか道路を渡るのに成功。
ありがとう、オジサン!
黒い民族衣装に髭面という典型的なアラブ人男性に内心戦きながらも「アカバに行きたい。バスターミナルはどこ?」と英語で訊いてみる。
すると「バス」と「アカバ」だけはわかったらしく、再びついて来いという身振り。
「知らない人について行ってはいけません」という子供向けの警告が微かに頭をよぎれど、ここは彼に頼るしかない。
石でも入っているのでは、と思えるような重いスーツケースをひきずる手がむくんで力が入らず、でこぼこ道を苦心しながら必死で追いかける私を見かねたのか、少し先を歩いていたオジサンはスタスタと戻ってくると、黙って私のスーツケースを掴むと再び歩き出した。
不思議なのはその時「このまま彼がスーツケースを持ち逃げするかもしれない」という懸念が全く浮かばなかったことだ。
私がこの後ヨルダンで無謀とも思える行動に走ったのは、この時のオジサンの親切に触れたからかもしれない。
ともかくバスターミナルなどといえるものは存在せず、大通りからかなり入った場所にヨルダン南部への長距離バスを運行している会社のオフィスを見つけた。
「地球の歩き方」によるとその辺りに同じようなバス会社が何社か集まっているはずだが、周囲を歩いてみても私が入ったトラスト社以外みつからないのだった。
以前「『地球の歩き方』は『地球の迷い方』と書名を変えるべきだ」と言った人がいたが、私も時々そう思う
1時間後の8時にアカバ行のバスが出る予定だったのでチケットを買うと、形ばかりの待合室でスーツケースを広げて生理用品を取り出し、まずは念願のトイレへ。お世辞にも清潔とは言えないが無いよりマシ、と我慢して使う。
アラブ式トイレは水を使って手でお尻を拭くのでホテル以外では当然紙など置いていない。
この時ほどポケットティッシュの有難さを実感したことはない。
予定時刻を過ぎても一向に来る気配のないバスを、ほとんど動けないほど弱っていた私はチケット売場の奥の冷たい椅子に座り震えながら待った。
このままバスが来なかったらどうしようと不安になったが、日本を出た以上時間通りに交通機関が動く国などドイツ以外にないのだからと自分を納得させることで精一杯だった。
紅海のリゾート、アカバへ
ようやくやってきたアンマン市内発のバスは当然のことながらほぼ満席。
黒いベールを被った太ったお婆さんの隣りに座れという添乗員らしき女性の指示に従う。
座席に収まりきらないお婆さんの巨大なお尻が私の座席の半分まで占領していた…。
こういう時、小さいって素敵、と思う。
狭いが席は確保できたし、5時間後に眠りから覚める頃には楽園のようなアカバに着いているはず、と安心した私はまたしても甘かった。
バスはオンボロで隙間風がヒュルルと音を立てて入ってくるので寒すぎて眠れやしない!
寒いとトイレも近くなるのは当然なのに、途中の給油所で10分以上も止まりドライバーと添乗員はトイレに行ったくせに乗客の降車は認めないとは何事だ。
降りようとした私を押しとどめ、性格の悪そうな添乗員の女性は車内のトイレを使えという。
実は先程そのトイレに入ろうとして、あまりの汚さと臭いに恐れをなして諦めたのだった。
すごすごと席に戻り、極限まで耐える覚悟をしたものの旅先で膀胱炎になどなるのは真っ平なので、意を決して車内トイレに向かった。
ウズベキスタンで経験した掘建て小屋ドボン式トイレを思い出す。
匂いは同じだが、耐えられないのは床が汚物にまみれていることだ。
念のためジーンズの裾をまくり、息を深く吸い込み爪先立ってトイレに突入した後は、あまりに吐き気を催す体験だったので、便器を拭いたかとかどうやって後処理したかなどは全く思い出せない。
ゲロ噴出寸前の酔っ払い状態でトイレから脱出したことのみかすかに記憶に残っているというのは、非常に悲しいことだ…。
セクシーなイケメンが受付してくれるアミーラ・ホテル
そんな訳でアカバに着いたとき、私の体力と精神力は限界に達していた。
唯一の救いは、震えながらバスから降りた瞬間、フワッと暖かい空気に包まれたことだ。
アミーラ・ホテル。シャワーのフックは壊れていたけど、何よりエアコンがあった!!
かすかな潮の香りと春らしいふんわりした陽気に「天国だぁ〜」と呟きながら、朦朧とした意識のまま「地球の迷い方(笑)」の地図を頼りに手近な宿を探す。
ここでも実際の場所と地図はかけ離れており、またしても石と化したスーツケースを引きずり、ホテル街を探してウロウロすることに。
そんな時、どこからともなく声がかかる。
「Are you looking for a hotel? Then this is the best. ホテルを探しているのかい?このホテル、いいよ」
声のする方を見上げてみると、菓子屋らしき店の二階から男が顔を出して向かいの建物を指さしている。
ええい、ままよ!と思って行ってみると、それはガイドブックで目星をつけていた安宿だった。
おじさん、ナイス♪
かくして入ったアミーラ・ホテルの部屋は、少々古ぼけてはいたものの格安な値段のわりに設備が充実していたし、受付してくれたイケメンの流し目がめちゃくちゃセクシーだった(ヒョウ柄の毛布は彼のシュミ?)。
部屋のドアがなかなか開かなくてイケメンのお兄さんに助けを求めたら「このドア開けるのコツがいるんだよ♪」と睫毛バサバサのアイライナーでも描いてるんですか、と聞きたくなるほど女性顔負けのセクシーな目を細めてニッコリされてしまった
それで少しお疲れ気分が回復したのか、記録によると着いて早々洗濯などをしている。
だが、それが限界だったらしく午後二時頃暖かい陽射しが差し込み、心地よい風がカーテンを揺らす快適な部屋のベッドに倒れ込んだまま、翌朝までひたすら眠った。
世界一周旅の始まりはこちらから。
香港から未知の国ヨルダンへ
香港からの深夜便は、途中タイのバンコクで大勢のアラブ人を載せ、一気に中東色が濃くなった。
そんななか明らかに浮いている私は髭を蓄えた男たちの好奇な視線に突き刺されながらも、仲良くなった日本語を習っているというヨルダン人CAから交通情報をゲットしたりして過ごしていたのだが、香港からの風邪を引きずっていた絶不調の私に、更に不幸は押し寄せる。
早朝のクイーン・アリア空港
最悪のタイミングでの生理。
あぁ、女って面倒くさい!
しかもJALであればトイレに生理用品が設置されているのだが、女性客の少ないロイヤル・ヨルダン航空にそんなサービスは望むべくもないし、予定外だったので手荷物にも入っていない。
仕方なくトイレットペーパーを厚巻きにしてナプキンの代用とする。
まるで「インパラの朝」状態…。
香港を発って14時間、ロイヤル・ヨルダン航空は、気温2度のアンマン、クイーン・アリア空港へと着陸した。
まだ薄暗がりのなか霧が深く立ちこめ、ぼんやりと灯りが空港施設を浮かびあがらせる早朝5時半、私は中東の国ヨルダンへと足を踏み入れた。
空港の建物を出ると、身を切るような寒さが襲ってきた。
ハードなフライトの後で朦朧とした意識の中、待ち受ける過酷な旅を予感していた気がする。
微熱に加え生理による貧血と深夜フライトの疲れや寝不足が合わさり、最悪の体調で空港に降り立った時点でも、私はまだこの先どうするかを決めていなかった。
選択肢は幾つかあった。
一つ目はとりあえずアンマン市内へ入る。
二つ目は紅海のリゾート、アカバへ直行する。
三つ目はまず遺跡で有名なペトラヘ行く。
どこへ行くにしても各都市への長距離バスはアンマン市内から出ているので、一度市内へ向かわなければならない。
空港からダイレクトにアカバかペトラへ行くにはタクシーを使うという楽ちんイコール高額な方法しかないからだが、私は女一人。
車という密室にドライバーと二人だけで5、6時間も過ごすことの危険性はエミちゃんから聞いた「中東でのセクハラ厳重注意報」で知っていたので当然却下。
早朝なのでカフェは開いていないし、香港の超近代的な空港とは違い到着ロビーにゆっくりできるような場所は勿論ツーリスト・インフォメーションなどあるはずがない。
とにかく横になって眠りたい気持ちが強かったが、気温2度という寒さのなか回らない頭で暖かい場所へ行きたいとぼんやり考えながら空港建物のドアから出ると、なかなか来ないと噂の市内行き空港バスが待機しているではないか。
これは乗らなきゃ損、とばかりに走り、アカバ行のバスが出ている7thサークルまで乗ることに決めた。
乗客は数名だったし英語が通じているのかわからず不安だったが、「アカバ行きのバスに乗り換えたい」と訴えて「7thサークル?」と聞いてみると「そのまま乗ってろ」というしぐさをされたのでおとなしく座る。空港で少しディナール紙幣を引き出したので何とかなるだろう。
もうどうにでもなれ!という投げやりな暗澹とした気分で朝靄のなか街へ向かうバスの硬い座席に身を沈めたのだった。
アカバの高級ホテル脇に繋がれていたラクダ。違和感まったくナシ。
地獄の強行軍
しかし、寒い。
中東の2月は雪が降るほど寒いのだとエミちゃんから聞いてはいたのだが、ネパールどころの寒さじゃない。
日本にいるのと変わらない真冬の寒さに「中東イコール暑い」という勝手なイメージだけでナメてかかっていた自分の勉強不足を呪う。
どうやら7thサークルに着いたらしく、ドライバーが降りろと合図してくれたのだが、スーツケースと共に降ろされたのは、三車線ほどの高速道路の脇だった。もちろん標識なんて何もない。
長距離バスのオフィスが集まる場所は近くのはずだから大きなバスターミナルらしきものを探して歩いてみるが、方向感覚が全く働かない。
早朝だから人通りもないし「地球の歩き方」は持っていても細かい地図が載っている訳ではない。目に入る文字はほぼアラビア語。
行き詰まった私はたまたま商品を搬入するためにドアを開けていた薬局らしき店のおじさんに尋ねることにした。
貴重にも英語の看板を掲げていたお店だったので英語は通じたようだ。
アラビア語訛りの英語で道路の向こう側だろうと教えてくれた。
さて、次の難問は何車線もある大きな道路の向こう側へ渡ること。目の前を車が物凄いスピードでビュンビュン走っていて途切れることがない。それはそうだ。信号などないのだから。
しかしいつまでも途方に暮れている訳にはいかない。
自分が動く以外に道は拓けないのが一人旅なのだ。
が、これがなかなか渡れない。
そのうち自分が入ってしまいそうなスーツケースを引きずったコドモが道路を渡ろうとウロウロしているのを見かねたのか、道路の向こう側で興味深げに見ていたオジサンがスルスルとこちらへ渡ってくると、何やらアラビア語で喋りながらついて来い、という仕草をするではないか。
迷う間もなく彼に従って何とか道路を渡るのに成功。
ありがとう、オジサン!
黒い民族衣装に髭面という典型的なアラブ人男性に内心戦きながらも「アカバに行きたい。バスターミナルはどこ?」と英語で訊いてみる。
すると「バス」と「アカバ」だけはわかったらしく、再びついて来いという身振り。
「知らない人について行ってはいけません」という子供向けの警告が微かに頭をよぎれど、ここは彼に頼るしかない。
石でも入っているのでは、と思えるような重いスーツケースをひきずる手がむくんで力が入らず、でこぼこ道を苦心しながら必死で追いかける私を見かねたのか、少し先を歩いていたオジサンはスタスタと戻ってくると、黙って私のスーツケースを掴むと再び歩き出した。
不思議なのはその時「このまま彼がスーツケースを持ち逃げするかもしれない」という懸念が全く浮かばなかったことだ。
私がこの後ヨルダンで無謀とも思える行動に走ったのは、この時のオジサンの親切に触れたからかもしれない。
ともかくバスターミナルなどといえるものは存在せず、大通りからかなり入った場所にヨルダン南部への長距離バスを運行している会社のオフィスを見つけた。
「地球の歩き方」によるとその辺りに同じようなバス会社が何社か集まっているはずだが、周囲を歩いてみても私が入ったトラスト社以外みつからないのだった。
以前「『地球の歩き方』は『地球の迷い方』と書名を変えるべきだ」と言った人がいたが、私も時々そう思う
1時間後の8時にアカバ行のバスが出る予定だったのでチケットを買うと、形ばかりの待合室でスーツケースを広げて生理用品を取り出し、まずは念願のトイレへ。お世辞にも清潔とは言えないが無いよりマシ、と我慢して使う。
アラブ式トイレは水を使って手でお尻を拭くのでホテル以外では当然紙など置いていない。
この時ほどポケットティッシュの有難さを実感したことはない。
予定時刻を過ぎても一向に来る気配のないバスを、ほとんど動けないほど弱っていた私はチケット売場の奥の冷たい椅子に座り震えながら待った。
このままバスが来なかったらどうしようと不安になったが、日本を出た以上時間通りに交通機関が動く国などドイツ以外にないのだからと自分を納得させることで精一杯だった。
紅海のリゾート、アカバへ
ようやくやってきたアンマン市内発のバスは当然のことながらほぼ満席。
黒いベールを被った太ったお婆さんの隣りに座れという添乗員らしき女性の指示に従う。
座席に収まりきらないお婆さんの巨大なお尻が私の座席の半分まで占領していた…。
こういう時、小さいって素敵、と思う。
狭いが席は確保できたし、5時間後に眠りから覚める頃には楽園のようなアカバに着いているはず、と安心した私はまたしても甘かった。
バスはオンボロで隙間風がヒュルルと音を立てて入ってくるので寒すぎて眠れやしない!
寒いとトイレも近くなるのは当然なのに、途中の給油所で10分以上も止まりドライバーと添乗員はトイレに行ったくせに乗客の降車は認めないとは何事だ。
降りようとした私を押しとどめ、性格の悪そうな添乗員の女性は車内のトイレを使えという。
実は先程そのトイレに入ろうとして、あまりの汚さと臭いに恐れをなして諦めたのだった。
すごすごと席に戻り、極限まで耐える覚悟をしたものの旅先で膀胱炎になどなるのは真っ平なので、意を決して車内トイレに向かった。
ウズベキスタンで経験した掘建て小屋ドボン式トイレを思い出す。
匂いは同じだが、耐えられないのは床が汚物にまみれていることだ。
念のためジーンズの裾をまくり、息を深く吸い込み爪先立ってトイレに突入した後は、あまりに吐き気を催す体験だったので、便器を拭いたかとかどうやって後処理したかなどは全く思い出せない。
ゲロ噴出寸前の酔っ払い状態でトイレから脱出したことのみかすかに記憶に残っているというのは、非常に悲しいことだ…。
セクシーなイケメンが受付してくれるアミーラ・ホテル
そんな訳でアカバに着いたとき、私の体力と精神力は限界に達していた。
唯一の救いは、震えながらバスから降りた瞬間、フワッと暖かい空気に包まれたことだ。
アミーラ・ホテル。シャワーのフックは壊れていたけど、何よりエアコンがあった!!
かすかな潮の香りと春らしいふんわりした陽気に「天国だぁ〜」と呟きながら、朦朧とした意識のまま「地球の迷い方(笑)」の地図を頼りに手近な宿を探す。
ここでも実際の場所と地図はかけ離れており、またしても石と化したスーツケースを引きずり、ホテル街を探してウロウロすることに。
そんな時、どこからともなく声がかかる。
「Are you looking for a hotel? Then this is the best. ホテルを探しているのかい?このホテル、いいよ」
声のする方を見上げてみると、菓子屋らしき店の二階から男が顔を出して向かいの建物を指さしている。
ええい、ままよ!と思って行ってみると、それはガイドブックで目星をつけていた安宿だった。
おじさん、ナイス♪
かくして入ったアミーラ・ホテルの部屋は、少々古ぼけてはいたものの格安な値段のわりに設備が充実していたし、受付してくれたイケメンの流し目がめちゃくちゃセクシーだった(ヒョウ柄の毛布は彼のシュミ?)。
部屋のドアがなかなか開かなくてイケメンのお兄さんに助けを求めたら「このドア開けるのコツがいるんだよ♪」と睫毛バサバサのアイライナーでも描いてるんですか、と聞きたくなるほど女性顔負けのセクシーな目を細めてニッコリされてしまった
それで少しお疲れ気分が回復したのか、記録によると着いて早々洗濯などをしている。
だが、それが限界だったらしく午後二時頃暖かい陽射しが差し込み、心地よい風がカーテンを揺らす快適な部屋のベッドに倒れ込んだまま、翌朝までひたすら眠った。
世界一周旅の始まりはこちらから。
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