2021年09月22日
映画で旅するカナダ Canada in CinemaA
カカナダを舞台にした映画、といって思い出せる映画は少ない。
というより、正直グザビエ・ドラン監督の名前しか出てこなかった私…。
ただ、カナダで撮影された映画なら、たくさんのお馴染み映画がある。
というのもカナダ政府が国策として映画産業の発展に取り組んでいるからだ。
なかでもバンクーバーは「ハリウッド・ノース Hollywood North」とも呼ばれ、アメリカを舞台にした数多のメジャー作品でも、バンクーバーでロケを行っているものは多い。
若い女性に大人気のヴァンパイア・ムービー『トワイライト』シリーズでは、フォークスの高校の撮影など、バンクーバーを中心にブリティッシュコロンビア州で多くロケが行われている(フォークスの街自体はアメリカ)し、トム・クルーズ主演の『ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル』のシアトルのシーンも実はバンクーバー。その他『ゴジラ』、『ジュマンジ』など本当に無数の映画が実はバンクーバー近辺で撮影されている。
ヨーロッパだとパリやロンドンの中世時代を描く映画の多くがプラハやブダペストで行われているのと同じような状況だろうか。
今回は、映画自体の舞台がバンクーバーという、バンクーバーで撮影された映画の中から、
『死ぬまでにしたい10のこと』と『エレジー』の2本をご紹介します。
若くして死ぬということ
「23歳で余命2ヶ月と宣告される2児の母」というシチュエーションが涙を誘うが、この映画はただのお涙頂戴劇ではない。無表情な印象の主演、サラ・ポーリーの淡々とした態度が静かな感動を呼び起こす、「生き方」を考えるための映画だ。
彼女のしたいことリストに載るのは「毎日娘たちに愛してると言う」「娘たちが、そして夫が愛せる新しいママを探す」「娘たちの18歳の誕生日までのメッセージを残す」など、まずは家族のこと。
若いのにこんなに重いものをひとりで背負って、ギリギリまで彼女は自分がガンでもうすぐ死ぬことを誰にも言わなかった。
そんな彼女の支えは担当医師ひとり。彼に全てを託して死んでいく。
夫にも母親にも知らせないままリストのほとんどを達成して、夫以外の男と恋に落ち、彼を夢中にさせ、父親にも会って過去を許してちゃんと話す。
誰かのために生きるという強さ
けして幸せとはいえない子供時代を送り、さらに若い女の子が自分のためだけにお金や時間を使っている間、彼女は母と夫と子どもたちの世話をして働きながら死の準備をした。
それって、ものすごいことだと、自分のためだけに生きている私は思う。
彼女の望みが全て叶って(映画では出てこないけど、きっと家族でビーチにも行っただろう)良かった、神様ありがとう、と私が言いたい。
何をリストに書くかに、その人の人生が見事に表れる。
私のリストは自分がしたいことばかりで埋まってしまう…。
最後に彼女が恋人に言うセリフは、「もし」の先がないだけに悲しく響く。
「人生は案外ステキよ。あなたは私の一部を見て恋に落ちたんだから。わずか10%を見て。もし全部を見たら、愛してくれたかしら?」
たった2ヶ月でも、やろうと思えば人はたいていのことができると、彼女は証明した。
映画を観終わった後、あなたは「死ぬまでのしたい10のこと」リストを書きたくなるにちがいない。
【主演女優】無表情の悟り系マルチ・タレント、サラ・ポーリー
縛られたくない男、将来が欲しい女
『死ぬまでにしたい10のこと』と同じ監督が、再び若くして病に侵される女性を、今度は年上の男性との純愛を軸に描くラブ・ストーリー。設定はニューヨークだが、撮影のほとんどはバンクーバーで行われた。
この映画のペネロペ・クルスは、まさに芸術作品のような美しさだ。
知的な大学教授がメロメロになるのも無理はない。聡明な学生であるこんな若い美女がベン・キングスレーのような老人を本気で愛するなんて、確かに彼が自身を持てないのもわかる。映画の撮影時すでに30歳を越えていたが、女子大生という役に何の違和感もない見事な若々しさ。
この映画の主人公デヴィットは、若い頃結婚したが縛られることと責任に耐えられず家族を捨てた男。ひたすら女性との自由な関係を望む彼と続いているのは、昔の教え子であるキャロラインただ一人。自立した女性である彼女だけは、デヴィットを理解し、縛ろうとしないからだ。
キャロラインを演じるパトリシア・クラークソンも美しい。
なんでこんな美女2人がベン・キングスレーのようなスキンヘッドのジジイと?!と思うのは私だけではないだろうが、インテリでセクシーな初老の男ってなぜかモテるものなんだよねー。
そんな彼が50を過ぎて初めて心から愛したのがコンスエラだった。しかし30という年の差と彼女の完璧さが、彼を苦しめる。2年付き合った2人だが、彼との将来を望むコンスエラに対し、デヴィットはどうしても一歩を踏み出せなかった。
心から愛したひと ー 純愛
そして心から愛した男が自分との人生に踏み出す勇気を持てなかったことが、コンスエラに別れを決意させる。
しかし、その別れは彼女の体にしこりを作った。2年後、乳癌で乳房を切除することに。
手術の直前、デヴィットに会いに行ったコンスエラは「私の体まで、あなたのように愛してくれた人はいなかった」と、別れてもなお彼を忘れられなかったことを伝える。
乳房を失った彼女を、デヴィットは愛せるのか?
ラストシーンを観て私は、きっと残りの人生全て賭けて、彼は彼女を愛し続けるだろうと思った。
純愛だ。文句ない純愛だ。
愛に年齢は関係ない。嫉妬で気が狂いそうなほど誰かを愛して離したくないと思うのなら、信頼するしかない。自分が相手に相応しいかどうかよりも、何があっても離れないことだ。
それが、純愛。
【主演女優】魔性の女!ペネロペ・クルス
でも『それでも恋するバルセロナ』を見ると、やっぱりこの2人って相性良いのね、と思わされるのだから、人間の縁ってわからないものよねー。
『オール・アバウト・マイ・マザー』の頃の純真そのもののペネロペから、『ある愛へと続く旅』の情熱的なペネロペ、ハビエルとの3度目の共演作『誰もがそれを知っている』まで、何時間でもペネロペの魅力を語れそうなくらい好きな女優さんである
「君には相手を礼儀正しくさせるなにかがある。優雅なる厳格さだよ」
というデヴィットのセリフは、そのままペネロペ・クルスに当てはまるのではないだろうか。
というより、正直グザビエ・ドラン監督の名前しか出てこなかった私…。
ただ、カナダで撮影された映画なら、たくさんのお馴染み映画がある。
というのもカナダ政府が国策として映画産業の発展に取り組んでいるからだ。
なかでもバンクーバーは「ハリウッド・ノース Hollywood North」とも呼ばれ、アメリカを舞台にした数多のメジャー作品でも、バンクーバーでロケを行っているものは多い。
若い女性に大人気のヴァンパイア・ムービー『トワイライト』シリーズでは、フォークスの高校の撮影など、バンクーバーを中心にブリティッシュコロンビア州で多くロケが行われている(フォークスの街自体はアメリカ)し、トム・クルーズ主演の『ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル』のシアトルのシーンも実はバンクーバー。その他『ゴジラ』、『ジュマンジ』など本当に無数の映画が実はバンクーバー近辺で撮影されている。
ヨーロッパだとパリやロンドンの中世時代を描く映画の多くがプラハやブダペストで行われているのと同じような状況だろうか。
今回は、映画自体の舞台がバンクーバーという、バンクーバーで撮影された映画の中から、
『死ぬまでにしたい10のこと』と『エレジー』の2本をご紹介します。
『死ぬまでにしたい10のこと My Life Without Me』
(2003/加/106分)監督:イザベル・コイシェ ♪ 彼女は23歳、あと2ヶ月の命。 初めて「生きる」と決めた。 ♪ 【Story(ネタバレ)】 バンクーバーに住む23歳のアンは、失業中の夫と幼い2人の子供とトレーラーで暮らしている。ある日突然ガンによる余命2ヶ月の宣告を受けたアンは、誰にも打ち明けずに、残された時間でしたいことをノートに書き出していく。死ぬまでにしたい10のことを、彼女はどれだけ実現できるのか。 |
若くして死ぬということ
「23歳で余命2ヶ月と宣告される2児の母」というシチュエーションが涙を誘うが、この映画はただのお涙頂戴劇ではない。無表情な印象の主演、サラ・ポーリーの淡々とした態度が静かな感動を呼び起こす、「生き方」を考えるための映画だ。
彼女のしたいことリストに載るのは「毎日娘たちに愛してると言う」「娘たちが、そして夫が愛せる新しいママを探す」「娘たちの18歳の誕生日までのメッセージを残す」など、まずは家族のこと。
若いのにこんなに重いものをひとりで背負って、ギリギリまで彼女は自分がガンでもうすぐ死ぬことを誰にも言わなかった。
そんな彼女の支えは担当医師ひとり。彼に全てを託して死んでいく。
夫にも母親にも知らせないままリストのほとんどを達成して、夫以外の男と恋に落ち、彼を夢中にさせ、父親にも会って過去を許してちゃんと話す。
誰かのために生きるという強さ
けして幸せとはいえない子供時代を送り、さらに若い女の子が自分のためだけにお金や時間を使っている間、彼女は母と夫と子どもたちの世話をして働きながら死の準備をした。
それって、ものすごいことだと、自分のためだけに生きている私は思う。
彼女の望みが全て叶って(映画では出てこないけど、きっと家族でビーチにも行っただろう)良かった、神様ありがとう、と私が言いたい。
何をリストに書くかに、その人の人生が見事に表れる。
私のリストは自分がしたいことばかりで埋まってしまう…。
最後に彼女が恋人に言うセリフは、「もし」の先がないだけに悲しく響く。
「人生は案外ステキよ。あなたは私の一部を見て恋に落ちたんだから。わずか10%を見て。もし全部を見たら、愛してくれたかしら?」
たった2ヶ月でも、やろうと思えば人はたいていのことができると、彼女は証明した。
映画を観終わった後、あなたは「死ぬまでのしたい10のこと」リストを書きたくなるにちがいない。
【主演女優】無表情の悟り系マルチ・タレント、サラ・ポーリー
1997年『スイート・ヒア・アフター』の子役で注目され、『死ぬまでにしたい10のこと』のヒットで世界的に名を知られることとなる。ゾンビ映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』の主演などもしているが、主にカナダ映画界で活躍する演技派。ジュリー・クリスティ主演の『アウェイ・フロム・ハー』の脚本・監督などもしている。悟ったようなすっきりとした無表情がやけに印象に残る女優だ。 |
『エレジー Elegy』
(2007/米/112分)監督:イザベル・コイシェ ♪ 老いていく男、病に冒されていく女。 このラスト、あなたはどう観ますか? ♪ 【Story(ネタバレ)】 大学教授のデヴィット(ベン・キングスレー)は30歳も年下の生徒コンスエラ(ペネロペ・クルス)と恋に落ちる。自由な生き方しかできないデヴィットは、20年もセックスだけの関係を続けている女性がいながら、コンスエラの美しさにのめりこんでいく。彼女の男性遍歴を聞いたことで激しくコンスエラを愛し始めるが、真剣なコンスエラに対し、デヴィットは年齢差のこともあって本心を言えずにいた。やがて彼女の両親に会う約束を守らなかったことで、コンスエラからの連絡は途絶えた。そして2年後、ようやく彼女のことを忘れたと思っていたデヴィットに、乳癌を患っているコンスエラから再び連絡が来る。 |
縛られたくない男、将来が欲しい女
『死ぬまでにしたい10のこと』と同じ監督が、再び若くして病に侵される女性を、今度は年上の男性との純愛を軸に描くラブ・ストーリー。設定はニューヨークだが、撮影のほとんどはバンクーバーで行われた。
この映画のペネロペ・クルスは、まさに芸術作品のような美しさだ。
知的な大学教授がメロメロになるのも無理はない。聡明な学生であるこんな若い美女がベン・キングスレーのような老人を本気で愛するなんて、確かに彼が自身を持てないのもわかる。映画の撮影時すでに30歳を越えていたが、女子大生という役に何の違和感もない見事な若々しさ。
この映画の主人公デヴィットは、若い頃結婚したが縛られることと責任に耐えられず家族を捨てた男。ひたすら女性との自由な関係を望む彼と続いているのは、昔の教え子であるキャロラインただ一人。自立した女性である彼女だけは、デヴィットを理解し、縛ろうとしないからだ。
キャロラインを演じるパトリシア・クラークソンも美しい。
なんでこんな美女2人がベン・キングスレーのようなスキンヘッドのジジイと?!と思うのは私だけではないだろうが、インテリでセクシーな初老の男ってなぜかモテるものなんだよねー。
そんな彼が50を過ぎて初めて心から愛したのがコンスエラだった。しかし30という年の差と彼女の完璧さが、彼を苦しめる。2年付き合った2人だが、彼との将来を望むコンスエラに対し、デヴィットはどうしても一歩を踏み出せなかった。
心から愛したひと ー 純愛
そして心から愛した男が自分との人生に踏み出す勇気を持てなかったことが、コンスエラに別れを決意させる。
しかし、その別れは彼女の体にしこりを作った。2年後、乳癌で乳房を切除することに。
手術の直前、デヴィットに会いに行ったコンスエラは「私の体まで、あなたのように愛してくれた人はいなかった」と、別れてもなお彼を忘れられなかったことを伝える。
乳房を失った彼女を、デヴィットは愛せるのか?
ラストシーンを観て私は、きっと残りの人生全て賭けて、彼は彼女を愛し続けるだろうと思った。
純愛だ。文句ない純愛だ。
愛に年齢は関係ない。嫉妬で気が狂いそうなほど誰かを愛して離したくないと思うのなら、信頼するしかない。自分が相手に相応しいかどうかよりも、何があっても離れないことだ。
それが、純愛。
【主演女優】魔性の女!ペネロペ・クルス
この映画にベン・キングスレーが出演する際、彼の妻がペネロペとの浮気を心配したというエピソードがある。 そんな映画界でもモテモテの肉食系小悪魔の異名を持つペネロペ・クルスは、過去にトム・クルーズ、マシュー・マコノヒー、マット・デイモン、ニコラス・ケイジなど大物との華麗なる恋愛遍歴を持つが、2010年に昔の恋人ハビエル・バルデムと結婚、子供を産んで以降は落ち着いた家庭を築いているようだ。 個人的にもペネロペのファンである私には、ハビエルとペネロペが「美女と野獣」にしか見えない。(だってハビエルってどう見ても怪物系のお顔でしょ?海外では人気あるみたいだけど…) |
『オール・アバウト・マイ・マザー』の頃の純真そのもののペネロペから、『ある愛へと続く旅』の情熱的なペネロペ、ハビエルとの3度目の共演作『誰もがそれを知っている』まで、何時間でもペネロペの魅力を語れそうなくらい好きな女優さんである
「君には相手を礼儀正しくさせるなにかがある。優雅なる厳格さだよ」
というデヴィットのセリフは、そのままペネロペ・クルスに当てはまるのではないだろうか。
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