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2020年04月28日

世界一周の旅:北米編A【カナダ】港湾都市ハリファックスから、カナダで最も有名な灯台へ行く

A voyage round the world : North America Edition A Go to the most famouse lighthouse in Canada from the port city Halifax【July 2011】

アトランティック・カナダへ

駆け足でのニューヨーク滞在の次は、『赤毛のアン』で有名なプリンス・エドワード島への足掛かりとなるカナダのハリファックスへ飛ぶ。

ワンワールドの世界一周航空券には、ニューヨークから直接プリンス・エドワード島へ飛ぶ航空路線が存在しないためだ。ここからバスにてプリンス・エドワード島へと向かう。ただの中継地点にしてしまうには、この辺りは有名な自然の景勝地が多いので勿体ないとばかりに、ついでにハリファックスでの2泊を組み込んだのだった。

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アトランティック・カナダ最大の街、ハリファックスの夕景。街は港に向かって緩やかに下る丘に沿って広がっているので、シタデルからは巨大な港が見渡せる。


最初ハリファックスという所がどんな場所なのか私は全く知らなかったのだが、アンが大学生活を送った街、といえばわかり易いだろうか。
カナダ東部大西洋岸に面したアトランティック・カナダはプリンス・エドワード島、ニューブランズウィック州、ノヴァスコシア、そしてニューファンドランド・ラブラドール州から成り、ハリファックスはノヴァスコシア州の州都である。

この地域は、カナダ建国の歴史をたどるうえで重要な地というだけでなく、美しい自然でもツーリストを魅了している。本当は、北米で最も美しいドライブ・ルートといわれるケープ・ブレトン島カボット・トレイル、更には映画『シッピング・ニュース』の舞台となったカナダの最北に位置する世界遺産の島ニューファンドランド島まで足を延ばしたかったのだが、いかんせん一人旅。たった2泊のハリファックス滞在では、ノヴァスコシア州南岸のライトハウス・ルート半日ツアーが精いっぱいだった。

世界遺産の港町、ルーネンバーグへ行くツアーは事前に下調べをしていなかったので、催行日程に合わず断念。ケープ・ブレトン島のハイランズ国立公園には様々なトレッキング、ハイキング・ルートがあり、豊かな自然を楽しめるので、訪れてみたい場所が盛りだくさんすぎる〜ということで、アトランティック・カナダを巡る旅は、いつかゆっくりしてみたいことのひとつとして、今回はおあずけ

さて、「ノバスコシア」とはラテン語で「新しいスコットランド人の国」という意味だそうで、もともと北米でスコットランド人が最初に入植した場所、いわばフロンティア。しかし、この辺りはアカディアとも呼ばれ、フランスとイギリスによる領土争いが熾烈を極めた場所。その争いでフランスが破れ、ケベック地方から切り離されたアカディアはイギリスの支配下に入るも、アカディアンと呼ばれるフランス系住民たちは離散を余儀なくされた。

ディアスポラ(民族離散)といえばユダヤ人が有名だが、アカディアンも似たような過酷な運命を歩んだという。そんな悲しい歴史をまだ知らなかった私は、単純に「綺麗なところだなぁ」と感動しながら、いつかまた来たい…と思っていたのだった。


映画のロケ地となった有名な灯台 

今回行くことができなかった世界遺産の街ルーネンバーグは、日本映画『ハナミズキ』(2010)に登場したので記憶に新しい。私が訪れたペギーズ・コーヴのライトハウスも、ヒロイン紗枝の思い出の場所としてこの映画に登場する。

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『ハナミズキ』(2010/日)

生田斗真、新垣結衣主演の純愛ストーリー。釧路、東京、ニューヨークを舞台に二人の高校時代からの約十年間に渡る切ない恋を描く。ハリファックス、ルーネンバーグ、ニューヨークでもロケが行われた。

釧路に住む高校生紗枝(新垣結衣)は康平(生田斗真)と恋に落ちるが、紗枝は東京の大学に進学、康平は北海道で漁師になり、遠距離恋愛に。クリスマス、久々に再会した紗枝に、康平は自作の船の模型をプレゼントする。そこには「ガンバレ」と書かれた旗が。大学卒業後、北海道へは戻らずニューヨークで働くことを選んだ紗枝は、船の模型を康平に返す。ふたりは気持ちを残しながらも別れ、お互い別々のパートナーと新たな人生を歩きだす。

数年後、自分のルーツ、生まれた場所であるルーネンバーグに来ていた紗枝が店のショーウィンドウに飾られた思い出の船の模型を見て康平がこの街に立ち寄ったことを知り、港へと駆けつけるがすでに船は出港していて出会えず、というシーンはルーネンバーグが舞台だ。

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生田斗真が船の模型を置いていった店にのように、船の模型がディスプレイされたハリファックスのお店。

ルーネンバーグからもほど近いペギーズ・コーヴのペギーズ・ポイント灯台は、紗枝が幼い頃父を亡くした後に母親と訪れた思い出の場所として登場する。そのペギーズ・コーヴへ、半日ツアーに参加して出かけた。

ハリファックス近辺の半島は風光明媚な海岸線として知られており、ドライブの絶景ルートに挙げられている。しかし、ローカルな交通網が今一つ発達していないので、自力で周るのは不可能に近い。いくらこれ以上お金に羽根が生えるのを阻止したくてもツアーを利用する以外、私には手がないのだった。

ペギーズ・コーヴ Peggy's Cove という小さな漁村には、世界を旅する海の男たちの行く手を照らす灯台がある。そして巨大な平たい岩の上に建つフォトジェニックなその小さな灯台は、実はカナダでも有数の人気観光スポットであり、大型バスで乗り付ける観光客も多い。

ハリファックスのツアー会社で申し込んだそのペギーズ・コーヴ半日ツアーは、フタを開けてみると、何と私一人の貸切。4人で申し込んでいたはずの女の子たちが、集合場所に現れなかったためだ。そんな訳で大幅に遅れて出発となった半日ツアーの客は私ひとり、つまり格安プライベート・ツアーに申し込んだようなラッキーな状況と相成ったのだった。Lucky me

ワゴン車にガイドのハロルドと彼の甥で、ハリファックスでその夜行われるメタリカの野外コンサートのためにニューファンドランド島から出てきたガイド見習い、リックの3人が悠々と座り、至れり尽くせりツアーが始まったのだった。

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途中、太古の昔に溶岩が冷えて固まった跡に森ができつつある海岸で下車し、岩の上を少し歩いたりと、通常のツアーでは車窓で終わってしまう景観を体験できて超ラッキー。ゴロゴロとあちこちに転がった大きな石を見ていたら、幼い頃両親に連れられて行った鬼押出園(おにおしだしえん)が思い出された。

浅間山噴火の溶岩流が造り上げた自然の景勝地で、黒々とした奇岩群がまだ熱いような気がして怖かった記憶がある。父の手が、ずっと私の手を握っていてくれた。その父も今は、大人になってひとりで旅をしている私をあの世で見守ってくれている。もう、手を握ってもらわなくても、私は世界をひとりで歩ける。その事実が誇らしくもあり、少し寂しくもあった。

個人の小さな旅行会社なので、ありきたりなガイドだけでなく、乗車中いろんな話をしながらの、まるで友人とピクニックにでも行くような楽しいツアーだった。ハイテンションでファニーなハロルドと、シャイな若者リックという対比がまた面白かった。

私の世界旅や巡礼の話、次の目的地プリンス・エドワード島の情報、ハロルドの家族のこと、リックの住むニューファンドランド島のことなど話ははずみ、ニューヨークで凹んだ私の英語に対する苦手意識も少しだけ回復された。

ペギーズ・ポイント灯台は、刻々と移り変わる劇的な空を背景にしたダイナミックな写真スポットとして有名だが、私が訪れた日はぼんやりとした曇り空で、残念ながら印象的な写真とはならなかった。(私に写真撮影のスキルがないからでもあるが…

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父のことを思い出した後だっただけに、映画『ハナミズキ』でこの灯台は紗枝の両親との思い出の場所として登場することに、感慨深い思いだった。

灯台は、いつだって人間に特別な感情をもたらす。暗い夜の海上を漂う船にとって、灯台の光は命綱ともいえる。けれど、光を発していない昼間の灯台は、何の変哲もないただの塔。白壁と赤い屋根でどれも似たり寄ったりに見える。それでも、そのどこにでもありそうな灯台が、霧の中で真っすぐに光を投げかける時、それは人々の道しるべとなる。

人生の指標。船の行く手を照らす灯台守の仕事とは、なんとロマンティックなのだろう…。小さな丸い塔のほんの狭い空間で寝起きする灯台守。想像するとちょっとファンタジックで、少しだけ憧れてしまう。

どんよりした空の下、寒さに震えながらペギーズ・ポイント灯台を見た後は、すぐ近くにあるペギーズ・コーヴ村落の眺めの良い海辺のカフェの庭で、ハロルドの奥さんが作ったというランチを広げる。タッパーに詰め込まれたサンドイッチなど手作り感いっぱいで、本当にこじんまりとした良いツアーだった。

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途中雨が降ってきてしまい、心地よい海風に吹かれながらのランチが中断されたのは残念だったけれど。突然落ちてきた大粒の雨に慌てて、ピクニック・セットのようなたくさんのお料理(本来5人の客と2人のガイド、7人分のはずだったから)を3人でレストランの中に運び入れたりして、何だかハプニングそのものがいちいち楽しかった。

警戒と自己開放のバランスが難しい女の一人旅。そして元々人見知りでシャイな性格もあって、どうしても孤独に陥りがちな一人旅の途中で、いくつものこんな小さな出会いに力をもらいながら、私は旅を続けている。メルアドひとつ交換するわけでもなく、もう会うこともないほんの小さな邂逅。一期一会が、旅を豊かにしてくれる。


どこか親しみの持てるハリファックスの街

ハリファックスはカナダ大西洋岸では最大の港湾都市で、ウォーターフロントには、大型から小型まで無数の船が集まっていた。夜の闇が降りると、緑や黄色の光が眩いほどに空に向かって放たれ、ハーバー周辺を明るく照らし出していた。
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川崎のような工業地帯に見える対岸のダートマスへは、レインボー・ブリッジのような巨大な橋が架かり、その景色が、何となく横浜を思い出させた。カナダにいるのに、横浜に住む友人に電話したらすぐにでも出てきてくれるような、そんな気がした。

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ハリファックス・シタデルで行われていたメタリカの野外コンサートのため、多くの騎馬警官が警備していた。


『北米編B世界一くつろげるアンの島プリンス・エドワード島』へつづく…
★ノヴァスコシアを舞台に、カナダを代表する画家モード・ルイスを描いた映画『幸せの絵の具』の記事は、こちら。



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