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2020年07月04日

相関係数を使った有効な分散ポートフォリオ構築

FXチャート4.jpg

前回の投資信託コラム『リスクとリターンから見る投資対象の選び方』では、複数のセクターの投資信託を組み合わせることによって、リスク・リターンのバランスが改善されることを説明しました。


今回の投資信託コラムでは、その理由とバランスの良いポートフォリオを組むうえで大切な『相関係数』についてご説明します



複数セクターの投資信託組み合わせが有効な理由


前回の投資信託コラムで資産には株式、債券、不動産の3種、地域には日本国内、先進国、新興国の3種が大きく存在し、セクターとしてはそれぞれを掛け合わせた9種があることをご説明しました。


これら9種のセクターの投資信託を組み合わせることでリスク・リターンのバランスが改善されるのは、それぞれのセクターが独立した動きをしないためです。


具体的には、世界景気が好調なときは、皆がリスクを積極的に取りに行きリターンを求めようとしますので、株式市場や新興国市場に資金が流れやすくなります


これが一度世界経済の失速が懸念されると(今回のコロナショックが最たる例です)、皆リスクから逃げようと、株式や新興国に入れていた資金を引き揚げ、リスクの低い債券や現金に換えようとしますので株式市場や新興国市場の下落と共に債券市場や先進国市場の上昇が発生(欧米に投資家が多く、彼らが自国通貨に資金を戻すことで欧米通貨高になりやすいため)したりします。
(一昔前は、日本円はスイスフランと並んで安全通貨の位置づけにあったため、今回のような世界経済失速が起きると円高になりやすいものでしたが、最近は日本国債の極限を越えた利回りの低さなどのせいか、その傾向は薄れているように思います。)


このように、どこかのセクターが沈めば、どこかのセクターが浮かび、全体で見ればそれほど大きな浮き沈みがなくなるため、複数のセクターの投資信託を複合することでリスクを低減することが出来ます


このようにリスクは互いに打ち消しあう中で、リターンはそのままポートフォリオ比率に従った平均になりますので、全体としてリスク・リターンのバランスが改善されることとなります


すなわち、各セクター毎のリスクの打ち消し度に応じたポートフォリオの組み方を検討することがリスク・リターンの最適化を図る上では重要であり、その際に役立つのが『相関係数』という概念になります。


相関係数とは?


相関係数について、以下にWikipediaに記載されていた定義を引用します。



相関係数は、2つの確率変数の間にある線形な関係の強弱を測る指標である。

相関係数は無次元量で、−1以上1以下の実数に値をとる。

相関係数が正のとき確率変数には正の相関が、負のとき確率変数には負の相関があるという。

また相関係数が0のとき確率変数は無相関であるという 。



つまり、2つの投資信託の値動きに対して相関係数を取った時に、相関係数が1に近ければ両者は同じような値動きをしていることを、-1に近ければ両者は逆の値動きをしていることを、0に近ければ両者は独立した値動きをしていることを示しています。


ポートフォリオのリスク低減を図る上では、できる限り逆の値動きをする物同士を組み合わせる事が大事ですので、相関係数が-1に近づくような組み合わせを優先して組み込むことが大事です


投資信託Aと投資信託Bの相関係数の求め方は、


[AとBの相関係数]=[AとBの共分散]÷([Aの標準偏差]×[Bの標準偏差])


という式で求めることが出来ますが、ExcelのCORREL関数を使えば一発で求めることが出来ます


具体的には、A列に任意の期間(1年分、3年分など)の投資信託Aの毎日の基準価額を入力し、B列にもA列で入力した期間と同じだけの投資信託Bの毎日の基準価額を入力します。


その後、空欄でCORREL関数を立ち上げ、データ1にA列のデータを、データ2にB列のデータを指定し、OKボタンを押すだけで投資信託AとBの相関係数を求めることが出来ます。


ちなみに9セクターの投資信託の過去にさかのぼった基準価額のデータは、三菱UFJ国際投信のeMAXISシリーズのサイトから入手することが出来ます。

eMAXISデータ.gif

eMAXISシリーズのトップサイトである上図の中の赤丸で示したボタンをクリックすることで、eMAXISシリーズ全種の設定来の基準価額データを入手することが出来ます。


そして、出てきたデータの中から以下のファンドの「基準価額(分配金再投資)」のデータを利用すればよいです。

日本国内株式⇒eMAXIS TOPIXインデックス
日本国内債券⇒eMAXIS 国内債券インデックス
日本国内不動産⇒eMAXIS 国内リートインデックス

先進国株式⇒eMAXIS 先進国株式インデックス
先進国債券⇒eMAXIS 先進国債券インデックス
先進国不動産⇒eMAXIS 先進国リートインデックス

新興国株式⇒eMAXIS 新興国株式インデックス
新興国債券⇒eMAXIS 新興国債券インデックス
新興国不動産⇒eMAXIS 新興国リートインデックス


次の項目では、上記データから算出した相関係数を基に最適なポートフォリオの組み方についてご説明します


各セクターの相関係数に基づくポートフォリオの組み方


以下は、前項でご紹介した、三菱UFJ国際投信が運営しているeMAXISシリーズにおける各セクターに該当する投資信託の2017年1月4日〜2020年5月15日までのデータを基に算出した各セクター同士の相関係数の表です。
(なお、概ねの傾向は多少時間がたっても変わりませんが、利用する時点のデータで相関係数を求めなおしたほうが望ましいです。)

最新の相関係数.gif
(サムネイルをクリックすると別ウィンドウで拡大画像が見れます。)


前項でご説明したように、相関係数はなるべく-1に近いもの同士を組み合わせていく方がリスク低減に有効です。


従って、一番負の数字が多い新興国不動産を主軸に据えればいいのではないかと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、それは早計です


実は、新興国不動産のセクターが他のセクターと負の相関係数になっているのは、他のセクターが経済の原理に従い、市場拡大している中で新興国不動産だけが逆行していることによるものであるからです


ここで、前回の投資信託コラム『リスクとリターンから見る投資対象の選び方』で記載した各セクターのリスク・リターン表をもう一度見てみましょう。

投資信託のリスク・リターン.gif


上表の新興国不動産セクターをご覧いただければわかる通り、9セクターの中で唯一の平均マイナスリターンとなっています


新興国不動産セクターも使い方によっては効果を発揮しうると思いますが、扱いがとても難しいため初めての方にはあまりお勧めしないセクターになります
(新興国セクター、不動産セクターはちょっとクセが強い印象があるため、初心者の方は一旦対象外にしてよいと思います。)


では、ポートフォリオを組むにはどうした良いかというところなのですが、正直なところ、これは皆さん個々人の要望を基に主軸を据えた後に、リスクを低減させるには?という観点で他のセクターを組み合わせていくという方法をとるのが良いと考えます


例えば、リターンを重視したいということで、先進国株式セクターを主軸に据え、リスク低減のために相関係数の低い国内債券を加えていく、などです
(今回は初心者向けに新興国セクター、不動産セクターを外していますが、中級者以上の方は9資産全てで検討してみても面白いと思います)


このようにして検討したポートフォリオが。全体として見た時どのくらいのリスク・リターンになるのかというのは『長期投資予想/アセットアロケーション分析』というサイトのシミュレーション機能を使えばすぐに分かるのでお勧めです


まとめ


投資信託のリスク・リターンを考えながらポートフォリオを組む上で大切な相関係数の概念について今回はご説明しました。


理屈は分かったけど実際にポートフォリオを組むのは難しいという方は、松井証券にある「投信工房」という使用料無料のシステムを利用するのがおすすめです


簡単な質問に答えていくだけで、あなたの考えや状況に最適なポートフォリオを提案してくれます


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2015年から株式投資、2017年からFXを始めて、投資にはまった男。株式は長期投資中心に、年間利益をほぼ毎年更新中(2019年は約240万円)。今後、個人投資が益々重要になると思われる中で、新しく投資を始める初心者向けに役立つ情報を届けたいと考えブログを始める。   <免責事項>       当ブログに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねます(おすすめ銘柄の紹介や相場動向に関する私見記事を基にした取引による損害、など)
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