将に君子豹変であった。
妻の「家の近所の桜の方が綺麗に一杯咲いていたよ。登るのは止めよう」の一言が何故か嬉しかった。
観光初日の電車の切符の最終地が三原駅であり、そこから港まで徒歩4分との事で乗船場に朝一駆込んだ。
波止場のロッカーに重いリュックを預け、片道の船舶代一人1500円支払い乗船。
40数分後高速船の最終港に着き、其処に待機していた町営バスに乗り込む事になった。
バスで連絡橋を渡り、となりの岩城島の積善山登山口で下車し、登山口で係員と警察官と談話。
一昨日の暴風雨でほとんどの桜は落花してしまったとの事であり、頂上の展望台まで往復するのに最低3時間はかかりますよとの事であった。
後から来た妻にその事を話すと「そうなんだ。家の近所の桜が一杯咲いていたから見なくてもいいや」と言うので、これは3時間強の強行登山は無くなったなと、心中密かに喜ぶ。
それでも妻は「ここ迄来たんだから少しは前に行ってみようよ」と歩き始めた。
10分も歩いたら最初のトイレが出て来た。
トイレの前に綺麗な桜が咲き、叔母さん二人が茣蓙を敷き始めていたが、そこで花見をするのだろうと容易に想像できた。
登山口から最初のトイレ休憩所の前の桜
トイレに入る前は、「展望台迄行くのは止めて、急ぎ船で戻って他を観光しようよ」と言っていたので、私は明日の観光予定であった尾道の千光寺公園ロープウエイからその近辺の観光をしようと、妻がトイレから出てくる迄の数分間で予定を変えていた。
ところが、トイレから出てきた妻は前言を全く無視し「さぁ、登ろう。ここまで来たんだから途中で予定を変えたらいけないよ」と真逆の発言。
結果、標高377メートル、登山時間1時間半との説明を受け一歩一歩歩き始めることになった。
その脇をフェリーから下りて来た観光客が遠慮がちに通り過ぎてゆく。
途中の駐車場では山頂が満車の為、調整の為強制待機させられていた。
一台下山してきたら一台登らせるというスタイルの規制を、櫻花の観光時期は警察も動員されしっかり安全に配慮していた。
歩けど歩けど距離は縮まらず、はるか山頂の展望台が遠くに見えたまま、一向に近ずく気配なし。
一時間以上歩いても依然あと1キロ35分とか、訳の分からぬ表示、一般的な距離と時間表示が違うのである。
ウンザリした頃やっと、展望台近くの広場でワゴンの臨時土産ショップ発見した時素直に嬉しかった。
登山口から二番目のトイレの近所から 山頂の展望台を望む
タイ味噌とレモン、果汁100%のジュースなどが売られていた。タイ味噌1個700円。12個在庫があった内8個買い占めてしまった。
後から来た人が慌てて買っていたから、お店にとっては福の神みたいな者であったろう。
コーヒーとジュースを「本物は旨いね」と大きな声でPRしたので周りの人もつられて注文していた。
小さなオレンジジュースが500円の為お店の人が遠慮がちに「少し高いからね」と言うので、「本物を売っているのだから大威張りで売ってください」とこれまた周りに聞こえるように大きな声で。
嫌味な爺である。
帰りのバス停近辺から積善山展望台を望む