2017年01月25日
長い文章ですが暗号通貨をされている場合は読んでおいてくださいね
仮想通貨交換業者の登録規制にかかる内閣府令の公表について
http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20161228-4.html
◆(別紙20)認定資金決済事業者協会に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第六号)【新旧対照表】
◆(別紙22)仮想通貨交換業者に関する内閣府令(新設)
◆(別紙29)事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係16仮想通貨交換業者関係)(新設)
※平成29年1月27日までパブリックコメント募集が行われています。
【注意事項】
※本記事の内容は筆者の個人的見解であり、内容に関する責任は負いかねます。
※本記事は、大石哲之氏、東晃慈氏の運営するビットコイン&ブロックチェーン研究所()への寄稿記事を短くまとめなおしたものです。
ビットコイン&ブロックチェーン研究所: Synapse
全体を通しての感想
1. そもそもこの規制の対象は?
今回の規制は、仮想通貨交換業者(仮想通貨交換所や仮想通貨販売事業者)を、利用者保護やマネロン対応などの観点から登録事業者にしようとするものである。そして、登録事業者が取り扱うことができる仮想通貨も、利用者保護、公益性の観点などから問題がないかを確認されることになる。
今後は、日本国内で仮想通貨の交換(購入や売却、他の仮想通貨との交換)を事業として行う場合は、登録事業者において、登録を受けた仮想通貨にかかるサービスのみを行うことができることになる。
これは、個人の利用者にとっては、日本で市場を通して(交換所などを利用して)、仮想通貨を交換(購入や売却、他の仮想通貨との交換)したい場合の手段が、登録事業者とそこで取り扱いのある仮想通貨に基本的に限定されることを意味する。
つまり、登録事業者での取り扱いのない仮想通貨は、基本的に個人間でなければ自由に交換できなくなるということであり、クラウドセールなどで大量に購入した仮想通貨は、登録事業者で取り扱いがなかった場合は、国内では換金が難しくなることになる。なお、登録事業者が取り扱うことができないからといって、その仮想通貨が消えてなくなるわけではない。あくまでも日本国内での市場を通した自由な交換(換金)が適法にできなくなるだけである。
また、個人の利用者が、自己責任で、様々な仮想通貨を取得し、使ってみる、ブロックチェーン技術発展のために作成、研究することなどは問題ないと思われる。もしここで、交換(換金)を行う場合は、「対公衆性」と「反復継続性」の点から「業」として規制対象になる可能性もあるため、個人で交換を行う人で相応の規模になっている場合は、早い時期に弁護士などに相談するほうがよいであろう。
2. 登録を受けられる事業者は?
今回出た仮想通貨交換業者に対する登録要件の詳細は、金融機関としての内部管理態勢としては一般的な内容と言えるものであるが、小規模な仮想通貨交換業者が登録を受けようとするには、はかなりハードルが高いものと考えられる。
登録時の審査でこのレベルが厳格に求められると、現状は、登録要件をクリアできる事業者は少数に留まると思われ、一時的に仮想通貨交換取引が地下に潜ることになり、業界の健全性は低下することも考えられる。
そこで、例えば一定程度内部管理態勢が整備されている事業者であれば登録を認めておき、その後継続的に態勢整備を指導していくよう対応が行われるかもしれない。この点は、逆に登録要件を厳格に運用し、すでに態勢整備ができている金融機関を仮想通貨交換事業に参入させ、プレーヤーを小規模事業者と交代させたいという考えがあるのかもしれない。
実際にどのような事業者が登録を受けられるのかは今後の業界動向を考えるうえでも大きな注目点になるであろう。
3. マイナーな仮想通貨はどうなるか?
今回の相応に厳しい要件を踏まえると、マイナー仮想通貨専業の交換業者、特に自分で発行して、それを売り出し、投資資金を集めているような事業者は、最初から登録を諦め、日本での事業撤退や海外への移転を行うところが多数出てくることになると予想される。
この場合、そのような事業者は、日本の利用者に対する仮想通貨の交換サービス提供はできなくなるため、日本で投資を行っている利用者は、投資した仮想通貨が容易に換金できないという問題に直面することになるであろう。この点は大きな問題になる可能性がある。
一方、これから利用を始める大部分のユーザにとっては、登録事業者を相手に、ある程度の流動性等の確認された仮想通貨を対象に取引ができることから、被害を受けるリスクは大きく減っていくと考えられる。
ただし、当局としての非登録事業者への対応は、まずは文書での警告や社名の公表程度のため、しばらくの間、非登録事業者が今までのように活動を継続していく可能性もある。
これに対しては、登録事業者や業界団体による積極的な情報公開などが重要になるであろう。
4. 業界団体はどうなる?
業界団体は、当局から認定を受け、「認定資金決済事業者協会」となることが求められる。
今回、認定資金決済事業者協会に求められる業務内容もある程度出てきたが、相当程度資金や人材などのリソースを用意しなければ業務が回らない内容と思われ、登録事業者数が少数にとどまると、資金拠出などの点で運営が難しくなるかもしれない。
特に、登録規制が始まると、今まで以上にライトユーザが大量に仮想通貨取引を始めることが予想される。この場合、秘密鍵を容易に紛失することや、価格変動に伴う損失などの相談、苦情が多く登録事業者と協会に対しても寄せられるであろう。
認定資金決済事業者協会にかかるポイント
それでは、まず認定資金決済事業者協会(いわゆる当局公認の業界団体)にかかるポイントについてみていくことにする。
1. 仮想通貨リストの公表
当局が、登録事業者が取り扱う仮想通貨の適切性を判断する基準の一つとして、「認定資金決済事業者協会が公表する情報を参考にする」と書かれている(ガイドライント1-2)。
この意味するところとして、認定資金決済事業者協会に「登録事業者が取り扱うに相応しい仮想通貨のリスト(ホワイトリスト)」を公表させることとし、このリストに記載が無い仮想通貨を取り扱うことを、登録申請時に事業者が申し出てきた場合は、よほどの理由がない限り、当局としてこれを認めることは難しくなるのではないかと読み取れる。
世の中にはすでに多様な仮想通貨があり、中には、コミュニティで詐欺の疑いがあるといわれているものも存在する。この中から当局として「大丈夫」と言えるものをすべて細かく分析、判断していくことは実務的に難しいため、まずは認定資金決済事業者協会のリストで対象範囲を絞り込み、そのうえで細かく見ていきたいということであろう。
また、認定資金決済事業者協会は、公表するホワイトリストに記載のある仮想通貨で大きな利用者被害がでるような事態になれば、協会としての責任も問われるため、かなり限定的なリストにならざるを得ないと考えられる。
2. 当局公認の業界団体は1つ?
公認の業界団体については、業界の健全な発展及び利用者利益保護のために、資金決済に関する法律に基づき、内閣総理大臣が認定を行うことになるため、1つにするという記載はないものの、複数の公認業界団体が乱立するようなことはまず想定されず、1つにすることを当局側からも求められるのではなかろうか。
3. 登録事業者になるには認定資金決済事業者協会への加入は基本的に必要
登録事業者となるための登録申請には、加入する認定資金決済事業者協会の名称も必要とされているため、認定資金決済事業者協会に入らないとして登録事業者申請を出すと、その理由をかなり厳しく問われると思われる。
4. 認定資金決済事業者協会に求められる業務
以下の対応などが求められており、協会には相応の態勢整備や業務負荷がかかることになり、加入事業者には相当程度のコスト負担が求められることになると思われる。
当局との定期的な意見交換、密接な連携
認定資金決済事業者協会としての苦情対応態勢
法令違反とはいえない軽微な事項については、認定資金決済事業者協会が改善指導等を行うことができる
業界の健全な発展のために、自主規制規則の制定、特に利用者保護の観点からの分別管理やレバレッジ取引等の指針策定など
内閣布令での仮想通貨交換事業の登録事業者にかかるポイント
つぎに、内閣布令での登録仮想通貨交換事業にかかる記載をみていく。
1. 登録申請書類(第四条〜)
登録申請においては、3年間の収支見込みまで求められており、申請には相応の準備が必要な内容になっている。また、書類に加え、態勢整備面について、ヒアリングや実地調査も含め検証するとされている。
主な申請時に必要となる項目
取り扱う仮想通貨
加入する認定資金決済事業者協会名称
3年間の収支見込み
取扱う仮想通貨の概要説明
組織図、特に内部管理業務
管理担当責任者の履歴書
社内規則
紛争解決機関もしくは苦情紛争処理措置
2. 申請様式
申請様式は雛形が定められており、登録申請書の様式1号では、取扱う仮想通貨と法定通貨、他の仮想通貨との交換レートの決定方法、金銭と仮想通貨の分別管理方法などの記載が必要になっている。
3. 財産基礎(第九条)
最低資本金は一千万円以上とされている。
4. 情報の安全管理措置(第一二条〜)
個人情報の適切な管理、業務を別会社に委託する(外部委託)場合の、委託先の適切な管理、モニタリングなどが求められている。
5. 仮想通貨と円や外貨との誤認防止、利用者への情報提供(第一六条〜)
仮想通貨の特徴の箇所で、「特定の者によりその価値を保証されていない」、「特定の者によりその価値を保証されている場合は、当該者の名称、保証内容を利用者に説明せよ」とあり、特に後者の点は、当局として「価値保証型の仮想通貨」の登場も念頭に置いている点が伺え、非常に興味深い内容となっている。
6. 利用者からの金銭、仮想通貨の受領(第一七条〜)
利用者から金銭、仮想通貨を受領したときは、遅延なく、その受領内容を利用者に伝える必要がある。特に利用者と反復継続して取引を行う場合は、三ヶ月を超えない期間ごとに、取引記録、利用者の金銭、仮想通貨の数量等について情報提供を行う必要が記されている。
7. 利用者保護措置(第十八条〜)、社内規則等(第十九条〜)
利用者保護態勢や社内規則の適切な整備が求められている。
8. 利用者財産管理(二十条〜)
仮想通貨の管理方法として、交換業者が自分で管理する場合は、交換業者と利用者の仮想通貨の明確な分離、どの利用者の仮想通貨であるか直ちに判別できる状態(帳簿で判別できる状態など)が求められている。
交換所での仮想通貨以外の金銭の預かりについては、銀行預金か、信託銀行への金銭信託の形での保管(利用者区分管理信託)としての適切な管理が求められている。
9. 分別管理監査(第二十三条)
毎年一回以上、会計士か監査法人による監査を受けることが定められている。
10 .苦情処理と紛争解決措置(第二十五条)
適切な苦情処理と紛争解決態勢の整備が求められている。
11 .帳簿書類の作成と保管(第二十六条〜)
手数料なども含めた詳細な取引記録や、営業日毎の利用者の金銭、仮想通貨数量の記録、分別管理監査結果の記録などが定められている。(対象により10年〜5年間の保存が必要)
12 .仮想通貨交換業に関する報告書(第二十九条〜)
様式11号に従い作成することになる。これは事業年度ごとに作成し、3か月以内の報告が必要となる。
具体的には、自己勘定取引、顧客勘定取引の別に、どの仮想通貨と交換したかという切り口も含め、取引件数や、平均金額まで報告が求められている。
13 .利用者財産の管理に関する報告書(第三十条)
様式13号に従い作成し、四半期毎に作成、1か月以内に当局報告となる。金銭や仮想通貨の残高についての残高証明書の添付も必要となる。
事務ガイドラインのポイント@
内閣府令を実務面からサポートする事務ガイドラインは、チェックリストとして当局検査などで利用される可能性もある。
1. 仮想通貨の範囲、適切性の判断基準
登録事業者が取り扱う仮想通貨が、「資金決済法で規定する仮想通貨(1号仮想通貨と呼称)」に該当するかは、以下の点などから当局が「個別具体的に判断」するとされた。
利用者保護、公益性の観点で問題がないか
認定資金決済事業者協会が公表する「登録事業者が取り扱うに相応しい仮想通貨のリスト(ホワイトリスト)」に記載があるか
「仮想通貨が不特定の者に対し対価の弁済に使用できるか」という点では、利用できる店舗が限定されていていないか、仮想通貨の発行者が利用可能店舗を管理していないか
発行者による制限なく、不特定の者と円もしくは外貨、もしくは「資金決済法で規定する仮想通貨」間での、購入、売却、交換が可能で、そのための市場が存在するか
特に、前払支払手段(電子マネー)、ポイントとの違いとして、前払支払手段(電子マネー)とポイントは、利用できる店舗が不特定ではなく限定されており、発行者による制限がなく、円や外貨、他の前払支払手段やポイントと交換できる市場がない点が明確化された。
発行者による価値の裏付けがあっても、発行者による制限なく、支払いに利用でき、自由に換金、交換できるならば「仮想通貨」になり得る可能性がある。これにより、銀行発行コインなどで、銀行により価値の裏付けが行われ、それが「仮想通貨」となれば、価格変動の影響を受けず、法定通貨のように転々と広く流通する可能性が考えられる。
2. 仮想通貨による先物取引等の位置付け
決済するときに仮想通貨を使わず、金銭で差金決済を行うだけであれば、この取引は、「仮想通貨の交換」には該当しない点が示された。
3. 「業」として仮想通貨の交換を行う範囲
個人での取引が「仮想通貨交換業」に該当するか否かの点では、「対公衆性」と「反復継続性」の点があれば、個人での取引ではなく「業」としての取引となり、仮想通貨交換業として登録が必要になる点が示された。
4. 新規発行仮想通貨の売り出しについて
流動性がないので仮想通貨交換業者が取り扱うことはダメということではなく、「総合的に判断する」とされた。新規発行仮想通貨を仮想通貨交換業者が扱うことも、適切に当局と調整を行い、認定資金決済事業者協会のホワイトリストに加えられれば、可能になると考えられる。具体的には銀行発行仮想通貨などが出てくるとこれに該当すると思われる。
事務ガイドラインのポイントA
仮想通貨交換業者の監督上の着眼点
事務ガイドラインでは、当局が登録仮想通貨交換業者を監督するうえでのポイントが細かく示されている。なお、仮想通貨交換業者には専業規定は設けられていないため、他の業務との関係性などは実態を踏まえ監督を行うとされている。
1. 求められる態勢整備
以下の点などが示されている。
最低資本金1千万円に加え、規模や特性を踏まえ十分な資本金確保に努めているか
内部管理、内部監査、利用者対応、反社対応、犯収法対応、コンプライアンス対応にかかる態勢の確立、整備
利用者の経験や知識、取引形態を踏まえた情報提供ができる態勢整備
社内規則の整備、研修等の実施態勢
事務ミス等に対する再発防止などのPDCAサイクルの整備
利用者の個人情報やクレジットカード番号情報等の管理態勢整備
適切な苦情処理態勢整備
システムリスクの適切な管理、システム監査の実施
事務の規定整備、適切な事務リスク管理態勢、内部監査の実施
外部委託の適切な管理態勢の整備
2. 金銭と仮想通貨の分別管理
分別管理態勢として以下の点の整備などが明記されている。
利用者の個々の持分が直ちに判別できる態勢とその有効性の検証態勢
毎営業日、利用者持ち分の仮想通貨について、社内の帳簿残高とブロックチェーン上の残高に差異がないことを確認し、差異がある場合の分析と不足時は5営業日以内に解消できる態勢
毎営業日、利用者持ち分の金銭について、社内の帳簿残高と銀行などの口座残高に差異がないことを確認し、差異がある場合の分析と差異を2営業日以内に解消できる態勢
自己保有の仮想通貨と、利用者の仮想通貨の暗号鍵等の保管場所を明確に区分
ホットウォレットとコールドウォレットの仕組みによる管理
分別管理状況の定期的な監査
事務ガイドラインのポイントB
当局としての対応
事務ガイドラインでは、当局として、無登録事業者への警告などが示されている。
1. 登録事業者への行政処分にかかる主な監督ポイント
立ち入り検査や、オフサイトモニタリングなどを通じ、法令遵守態勢やガバナンスなどに問題があるとされた場合は、対応策等の報告を事業者に求め、内容によっては、業務改善命令、業務停止命令、登録取り消し処分を行うことも記載されている。
2. 無登録事業者への対応にかかる主な監督ポイント
以下の対応を行う点が記載されている。
当局として無登録事業者の実態把握に積極的に努める
無登録に至った原因に、故意、悪質性がなく、利用者保護の観点からも問題がない場合は、直ちに登録を求める。そうでなければ、捜査当局への連絡と、文書による警告を行う。文書による警告後も是正しない場合は、捜査当局への告発を行う。
無登録で業を行っていると断定するまでは至らない場合でも、その恐れがある場合は文書による照会を行う。
「警告」、「告発」を行った場合は、当局ホームページで公表を行う。
3. 外国仮想通貨交換業者にかかる主な監督ポイント
外国仮想通貨交換業者について、日本国内で業務を行う場合は登録が求められており、未登録の外国仮想通貨交換業者に対しては、国内への取引勧誘の禁止、特に日本国内向けサービスは対象としていない旨の明記等が求められている。
4. その他のポイント
当局による仮想通貨交換業者へのヒアリング、オフサイトモニタリングの実施
認定資金決済事業者協会と連携し、法令違反とはいえない軽微な事項で協会が改善指導を行う方が適当な場合は、協会に監督指導を要請する。
以 上
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◆(別紙20)認定資金決済事業者協会に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第六号)【新旧対照表】
◆(別紙22)仮想通貨交換業者に関する内閣府令(新設)
◆(別紙29)事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係16仮想通貨交換業者関係)(新設)
※平成29年1月27日までパブリックコメント募集が行われています。
【注意事項】
※本記事の内容は筆者の個人的見解であり、内容に関する責任は負いかねます。
※本記事は、大石哲之氏、東晃慈氏の運営するビットコイン&ブロックチェーン研究所()への寄稿記事を短くまとめなおしたものです。
ビットコイン&ブロックチェーン研究所: Synapse
全体を通しての感想
1. そもそもこの規制の対象は?
今回の規制は、仮想通貨交換業者(仮想通貨交換所や仮想通貨販売事業者)を、利用者保護やマネロン対応などの観点から登録事業者にしようとするものである。そして、登録事業者が取り扱うことができる仮想通貨も、利用者保護、公益性の観点などから問題がないかを確認されることになる。
今後は、日本国内で仮想通貨の交換(購入や売却、他の仮想通貨との交換)を事業として行う場合は、登録事業者において、登録を受けた仮想通貨にかかるサービスのみを行うことができることになる。
これは、個人の利用者にとっては、日本で市場を通して(交換所などを利用して)、仮想通貨を交換(購入や売却、他の仮想通貨との交換)したい場合の手段が、登録事業者とそこで取り扱いのある仮想通貨に基本的に限定されることを意味する。
つまり、登録事業者での取り扱いのない仮想通貨は、基本的に個人間でなければ自由に交換できなくなるということであり、クラウドセールなどで大量に購入した仮想通貨は、登録事業者で取り扱いがなかった場合は、国内では換金が難しくなることになる。なお、登録事業者が取り扱うことができないからといって、その仮想通貨が消えてなくなるわけではない。あくまでも日本国内での市場を通した自由な交換(換金)が適法にできなくなるだけである。
また、個人の利用者が、自己責任で、様々な仮想通貨を取得し、使ってみる、ブロックチェーン技術発展のために作成、研究することなどは問題ないと思われる。もしここで、交換(換金)を行う場合は、「対公衆性」と「反復継続性」の点から「業」として規制対象になる可能性もあるため、個人で交換を行う人で相応の規模になっている場合は、早い時期に弁護士などに相談するほうがよいであろう。
2. 登録を受けられる事業者は?
今回出た仮想通貨交換業者に対する登録要件の詳細は、金融機関としての内部管理態勢としては一般的な内容と言えるものであるが、小規模な仮想通貨交換業者が登録を受けようとするには、はかなりハードルが高いものと考えられる。
登録時の審査でこのレベルが厳格に求められると、現状は、登録要件をクリアできる事業者は少数に留まると思われ、一時的に仮想通貨交換取引が地下に潜ることになり、業界の健全性は低下することも考えられる。
そこで、例えば一定程度内部管理態勢が整備されている事業者であれば登録を認めておき、その後継続的に態勢整備を指導していくよう対応が行われるかもしれない。この点は、逆に登録要件を厳格に運用し、すでに態勢整備ができている金融機関を仮想通貨交換事業に参入させ、プレーヤーを小規模事業者と交代させたいという考えがあるのかもしれない。
実際にどのような事業者が登録を受けられるのかは今後の業界動向を考えるうえでも大きな注目点になるであろう。
3. マイナーな仮想通貨はどうなるか?
今回の相応に厳しい要件を踏まえると、マイナー仮想通貨専業の交換業者、特に自分で発行して、それを売り出し、投資資金を集めているような事業者は、最初から登録を諦め、日本での事業撤退や海外への移転を行うところが多数出てくることになると予想される。
この場合、そのような事業者は、日本の利用者に対する仮想通貨の交換サービス提供はできなくなるため、日本で投資を行っている利用者は、投資した仮想通貨が容易に換金できないという問題に直面することになるであろう。この点は大きな問題になる可能性がある。
一方、これから利用を始める大部分のユーザにとっては、登録事業者を相手に、ある程度の流動性等の確認された仮想通貨を対象に取引ができることから、被害を受けるリスクは大きく減っていくと考えられる。
ただし、当局としての非登録事業者への対応は、まずは文書での警告や社名の公表程度のため、しばらくの間、非登録事業者が今までのように活動を継続していく可能性もある。
これに対しては、登録事業者や業界団体による積極的な情報公開などが重要になるであろう。
4. 業界団体はどうなる?
業界団体は、当局から認定を受け、「認定資金決済事業者協会」となることが求められる。
今回、認定資金決済事業者協会に求められる業務内容もある程度出てきたが、相当程度資金や人材などのリソースを用意しなければ業務が回らない内容と思われ、登録事業者数が少数にとどまると、資金拠出などの点で運営が難しくなるかもしれない。
特に、登録規制が始まると、今まで以上にライトユーザが大量に仮想通貨取引を始めることが予想される。この場合、秘密鍵を容易に紛失することや、価格変動に伴う損失などの相談、苦情が多く登録事業者と協会に対しても寄せられるであろう。
認定資金決済事業者協会にかかるポイント
それでは、まず認定資金決済事業者協会(いわゆる当局公認の業界団体)にかかるポイントについてみていくことにする。
1. 仮想通貨リストの公表
当局が、登録事業者が取り扱う仮想通貨の適切性を判断する基準の一つとして、「認定資金決済事業者協会が公表する情報を参考にする」と書かれている(ガイドライント1-2)。
この意味するところとして、認定資金決済事業者協会に「登録事業者が取り扱うに相応しい仮想通貨のリスト(ホワイトリスト)」を公表させることとし、このリストに記載が無い仮想通貨を取り扱うことを、登録申請時に事業者が申し出てきた場合は、よほどの理由がない限り、当局としてこれを認めることは難しくなるのではないかと読み取れる。
世の中にはすでに多様な仮想通貨があり、中には、コミュニティで詐欺の疑いがあるといわれているものも存在する。この中から当局として「大丈夫」と言えるものをすべて細かく分析、判断していくことは実務的に難しいため、まずは認定資金決済事業者協会のリストで対象範囲を絞り込み、そのうえで細かく見ていきたいということであろう。
また、認定資金決済事業者協会は、公表するホワイトリストに記載のある仮想通貨で大きな利用者被害がでるような事態になれば、協会としての責任も問われるため、かなり限定的なリストにならざるを得ないと考えられる。
2. 当局公認の業界団体は1つ?
公認の業界団体については、業界の健全な発展及び利用者利益保護のために、資金決済に関する法律に基づき、内閣総理大臣が認定を行うことになるため、1つにするという記載はないものの、複数の公認業界団体が乱立するようなことはまず想定されず、1つにすることを当局側からも求められるのではなかろうか。
3. 登録事業者になるには認定資金決済事業者協会への加入は基本的に必要
登録事業者となるための登録申請には、加入する認定資金決済事業者協会の名称も必要とされているため、認定資金決済事業者協会に入らないとして登録事業者申請を出すと、その理由をかなり厳しく問われると思われる。
4. 認定資金決済事業者協会に求められる業務
以下の対応などが求められており、協会には相応の態勢整備や業務負荷がかかることになり、加入事業者には相当程度のコスト負担が求められることになると思われる。
当局との定期的な意見交換、密接な連携
認定資金決済事業者協会としての苦情対応態勢
法令違反とはいえない軽微な事項については、認定資金決済事業者協会が改善指導等を行うことができる
業界の健全な発展のために、自主規制規則の制定、特に利用者保護の観点からの分別管理やレバレッジ取引等の指針策定など
内閣布令での仮想通貨交換事業の登録事業者にかかるポイント
つぎに、内閣布令での登録仮想通貨交換事業にかかる記載をみていく。
1. 登録申請書類(第四条〜)
登録申請においては、3年間の収支見込みまで求められており、申請には相応の準備が必要な内容になっている。また、書類に加え、態勢整備面について、ヒアリングや実地調査も含め検証するとされている。
主な申請時に必要となる項目
取り扱う仮想通貨
加入する認定資金決済事業者協会名称
3年間の収支見込み
取扱う仮想通貨の概要説明
組織図、特に内部管理業務
管理担当責任者の履歴書
社内規則
紛争解決機関もしくは苦情紛争処理措置
2. 申請様式
申請様式は雛形が定められており、登録申請書の様式1号では、取扱う仮想通貨と法定通貨、他の仮想通貨との交換レートの決定方法、金銭と仮想通貨の分別管理方法などの記載が必要になっている。
3. 財産基礎(第九条)
最低資本金は一千万円以上とされている。
4. 情報の安全管理措置(第一二条〜)
個人情報の適切な管理、業務を別会社に委託する(外部委託)場合の、委託先の適切な管理、モニタリングなどが求められている。
5. 仮想通貨と円や外貨との誤認防止、利用者への情報提供(第一六条〜)
仮想通貨の特徴の箇所で、「特定の者によりその価値を保証されていない」、「特定の者によりその価値を保証されている場合は、当該者の名称、保証内容を利用者に説明せよ」とあり、特に後者の点は、当局として「価値保証型の仮想通貨」の登場も念頭に置いている点が伺え、非常に興味深い内容となっている。
6. 利用者からの金銭、仮想通貨の受領(第一七条〜)
利用者から金銭、仮想通貨を受領したときは、遅延なく、その受領内容を利用者に伝える必要がある。特に利用者と反復継続して取引を行う場合は、三ヶ月を超えない期間ごとに、取引記録、利用者の金銭、仮想通貨の数量等について情報提供を行う必要が記されている。
7. 利用者保護措置(第十八条〜)、社内規則等(第十九条〜)
利用者保護態勢や社内規則の適切な整備が求められている。
8. 利用者財産管理(二十条〜)
仮想通貨の管理方法として、交換業者が自分で管理する場合は、交換業者と利用者の仮想通貨の明確な分離、どの利用者の仮想通貨であるか直ちに判別できる状態(帳簿で判別できる状態など)が求められている。
交換所での仮想通貨以外の金銭の預かりについては、銀行預金か、信託銀行への金銭信託の形での保管(利用者区分管理信託)としての適切な管理が求められている。
9. 分別管理監査(第二十三条)
毎年一回以上、会計士か監査法人による監査を受けることが定められている。
10 .苦情処理と紛争解決措置(第二十五条)
適切な苦情処理と紛争解決態勢の整備が求められている。
11 .帳簿書類の作成と保管(第二十六条〜)
手数料なども含めた詳細な取引記録や、営業日毎の利用者の金銭、仮想通貨数量の記録、分別管理監査結果の記録などが定められている。(対象により10年〜5年間の保存が必要)
12 .仮想通貨交換業に関する報告書(第二十九条〜)
様式11号に従い作成することになる。これは事業年度ごとに作成し、3か月以内の報告が必要となる。
具体的には、自己勘定取引、顧客勘定取引の別に、どの仮想通貨と交換したかという切り口も含め、取引件数や、平均金額まで報告が求められている。
13 .利用者財産の管理に関する報告書(第三十条)
様式13号に従い作成し、四半期毎に作成、1か月以内に当局報告となる。金銭や仮想通貨の残高についての残高証明書の添付も必要となる。
事務ガイドラインのポイント@
内閣府令を実務面からサポートする事務ガイドラインは、チェックリストとして当局検査などで利用される可能性もある。
1. 仮想通貨の範囲、適切性の判断基準
登録事業者が取り扱う仮想通貨が、「資金決済法で規定する仮想通貨(1号仮想通貨と呼称)」に該当するかは、以下の点などから当局が「個別具体的に判断」するとされた。
利用者保護、公益性の観点で問題がないか
認定資金決済事業者協会が公表する「登録事業者が取り扱うに相応しい仮想通貨のリスト(ホワイトリスト)」に記載があるか
「仮想通貨が不特定の者に対し対価の弁済に使用できるか」という点では、利用できる店舗が限定されていていないか、仮想通貨の発行者が利用可能店舗を管理していないか
発行者による制限なく、不特定の者と円もしくは外貨、もしくは「資金決済法で規定する仮想通貨」間での、購入、売却、交換が可能で、そのための市場が存在するか
特に、前払支払手段(電子マネー)、ポイントとの違いとして、前払支払手段(電子マネー)とポイントは、利用できる店舗が不特定ではなく限定されており、発行者による制限がなく、円や外貨、他の前払支払手段やポイントと交換できる市場がない点が明確化された。
発行者による価値の裏付けがあっても、発行者による制限なく、支払いに利用でき、自由に換金、交換できるならば「仮想通貨」になり得る可能性がある。これにより、銀行発行コインなどで、銀行により価値の裏付けが行われ、それが「仮想通貨」となれば、価格変動の影響を受けず、法定通貨のように転々と広く流通する可能性が考えられる。
2. 仮想通貨による先物取引等の位置付け
決済するときに仮想通貨を使わず、金銭で差金決済を行うだけであれば、この取引は、「仮想通貨の交換」には該当しない点が示された。
3. 「業」として仮想通貨の交換を行う範囲
個人での取引が「仮想通貨交換業」に該当するか否かの点では、「対公衆性」と「反復継続性」の点があれば、個人での取引ではなく「業」としての取引となり、仮想通貨交換業として登録が必要になる点が示された。
4. 新規発行仮想通貨の売り出しについて
流動性がないので仮想通貨交換業者が取り扱うことはダメということではなく、「総合的に判断する」とされた。新規発行仮想通貨を仮想通貨交換業者が扱うことも、適切に当局と調整を行い、認定資金決済事業者協会のホワイトリストに加えられれば、可能になると考えられる。具体的には銀行発行仮想通貨などが出てくるとこれに該当すると思われる。
事務ガイドラインのポイントA
仮想通貨交換業者の監督上の着眼点
事務ガイドラインでは、当局が登録仮想通貨交換業者を監督するうえでのポイントが細かく示されている。なお、仮想通貨交換業者には専業規定は設けられていないため、他の業務との関係性などは実態を踏まえ監督を行うとされている。
1. 求められる態勢整備
以下の点などが示されている。
最低資本金1千万円に加え、規模や特性を踏まえ十分な資本金確保に努めているか
内部管理、内部監査、利用者対応、反社対応、犯収法対応、コンプライアンス対応にかかる態勢の確立、整備
利用者の経験や知識、取引形態を踏まえた情報提供ができる態勢整備
社内規則の整備、研修等の実施態勢
事務ミス等に対する再発防止などのPDCAサイクルの整備
利用者の個人情報やクレジットカード番号情報等の管理態勢整備
適切な苦情処理態勢整備
システムリスクの適切な管理、システム監査の実施
事務の規定整備、適切な事務リスク管理態勢、内部監査の実施
外部委託の適切な管理態勢の整備
2. 金銭と仮想通貨の分別管理
分別管理態勢として以下の点の整備などが明記されている。
利用者の個々の持分が直ちに判別できる態勢とその有効性の検証態勢
毎営業日、利用者持ち分の仮想通貨について、社内の帳簿残高とブロックチェーン上の残高に差異がないことを確認し、差異がある場合の分析と不足時は5営業日以内に解消できる態勢
毎営業日、利用者持ち分の金銭について、社内の帳簿残高と銀行などの口座残高に差異がないことを確認し、差異がある場合の分析と差異を2営業日以内に解消できる態勢
自己保有の仮想通貨と、利用者の仮想通貨の暗号鍵等の保管場所を明確に区分
ホットウォレットとコールドウォレットの仕組みによる管理
分別管理状況の定期的な監査
事務ガイドラインのポイントB
当局としての対応
事務ガイドラインでは、当局として、無登録事業者への警告などが示されている。
1. 登録事業者への行政処分にかかる主な監督ポイント
立ち入り検査や、オフサイトモニタリングなどを通じ、法令遵守態勢やガバナンスなどに問題があるとされた場合は、対応策等の報告を事業者に求め、内容によっては、業務改善命令、業務停止命令、登録取り消し処分を行うことも記載されている。
2. 無登録事業者への対応にかかる主な監督ポイント
以下の対応を行う点が記載されている。
当局として無登録事業者の実態把握に積極的に努める
無登録に至った原因に、故意、悪質性がなく、利用者保護の観点からも問題がない場合は、直ちに登録を求める。そうでなければ、捜査当局への連絡と、文書による警告を行う。文書による警告後も是正しない場合は、捜査当局への告発を行う。
無登録で業を行っていると断定するまでは至らない場合でも、その恐れがある場合は文書による照会を行う。
「警告」、「告発」を行った場合は、当局ホームページで公表を行う。
3. 外国仮想通貨交換業者にかかる主な監督ポイント
外国仮想通貨交換業者について、日本国内で業務を行う場合は登録が求められており、未登録の外国仮想通貨交換業者に対しては、国内への取引勧誘の禁止、特に日本国内向けサービスは対象としていない旨の明記等が求められている。
4. その他のポイント
当局による仮想通貨交換業者へのヒアリング、オフサイトモニタリングの実施
認定資金決済事業者協会と連携し、法令違反とはいえない軽微な事項で協会が改善指導を行う方が適当な場合は、協会に監督指導を要請する。
以 上
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