2018年01月10日
ビットコインについてジムロジャースが語る
News Picksより転載
【ジム・ロジャーズ】ビットコインへの「駆け込み乗車」はケガの元
「有事の円買い」は続くか
──第2回であなたは安倍首相の経済政策を批判し「辞任しなさい」と迫りました。とはいえ、「日本の経済は良くなっている」と評するエコノミストもいます。
ロジャーズ
確かに、短期的には良くなっています。企業の利益は伸び、株式市場は上向いています。私も日本株を持っているので分かります。
しかし、国民全体のムードとして、それほど活気づいているとはいえません。これは当然です。現在の活況は、人為的に刷られたお金と借金によって支えられているにすぎないのですから。
ジム・ロジャーズ/投資家
1942年米国アラバマ州生まれ。イェール大学卒業後、オックスフォード大学ベリオル・カレッジ修了。米陸軍に従事した後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスと国際投資会社クォンタム・ファンドを共同で設立。10年間で4000%を超える驚異のリターンを実現。37歳で引退し、世界を旅して回るかたわら、コロンビア大学で教鞭を執る。1998年8月に商品先物市場の指数である「ロジャーズ国際コモディティ指数」を創設。現在、シンガポール在住。
──なぜ日本は賃金が上がらないのだと思いますか。
需要が十分にないからです。原油価格が下落して、物価が低下気味なので、賃金が上昇しなくても生活水準が保てているのだと思います。
「自分にもっと金をよこせ」と喚く人が日本にはまだあまりいません。人々がもっと声をあげれば、変わると思います。
──日本株は今後、どう推移すると思いますか。
株価はこれからも上昇すると思います。だから私も日本株を買うのです。日銀が紙幣を刷り、その金で株や国債を買っているわけですから、株価が上がるのは当然です。
──外交面では、北朝鮮を取り巻く緊張が高まっています。「有事の円買い」という言葉がありますが、情勢がさらに深刻化した場合は円高が進みますか。
もし日本が北朝鮮と戦争になれば、円よりも米ドルが好まれるかもしれません。地図を見れば分かるように、アメリカは日本と朝鮮半島から物理的に遠いですから。
しかし、もし戦争が起きたとしても、長くは続かないでしょう。アメリカが北朝鮮に原子爆弾を落として1週間程度で終了、のようになると思います。これは最悪の事態ですが。
その場合、円もドルも高くなります。私はたくさんの米ドルを保有していますが、その理由の一つはこうした「戦争」のリスクを懸念しているためです。
ただ、仮に戦争になって北朝鮮がふきとんだ場合は、円やドルよりも韓国ウォンの方がさらに「買い」だと思います。現在は韓国も北朝鮮も防衛に多額の資金を投入しているわけですが、朝鮮半島が統一されれば、防衛のため無駄にお金を使わなくて済むからです。
これまでかかっていた莫大な防衛費がなくなり、国を発展させるための投資へと使われるようになるため、韓国ウォンは「買い」になると思います。
ビットコインはスタイルに合わない
──2017年はビットコインが急騰した1年でした。仮想通貨に対するあなたの考えは。
私はビットコインを保有していません。ビットコインを買わなかったことにがっかりはしていますが、それは保有していない誰もが思うことですよね。
私がこれからビットコインに飛びつくことはありません。私の投資のモットーは、「周りから無視されているような、安いものを買う」です。ビットコインは現在とても注目を集めていますし、価格も高いですから、私のスタイルに合いません。
──あなたからみた、「ビットコインの本質」とは。
良い質問ですね。私も確固たる答えは持っていません。
ビットコインは、もともと決済手段として出てきましたが、これだけ価格が乱高下すると、通貨としては使えません。そもそも、どんどん値上がりしているため、保有している人は誰も支払い手段として使おうとしません。
ビットコインは、お金を蓄える「価値貯蔵手段」としての役割は果たしていると思います。ビットコインを保有している人は、現に大儲けできているわけですからね。価値貯蔵というのは、砂糖でも、小麦でも、銅でもいいわけですが。
ただ、ビットコインが「安定した」価値貯蔵手段かはまだ分かりません。あと10年ほどすれば、はっきりすると思います。
政府が仮想通貨を発行する?
──ビットコインは、過去にあったどのような投資対象と似ていますか。
私の知る限り、ビットコインに似た投資対象はないです。金や商品のバブルというのはありましたが、本来「通貨」であるはずのものがこのように急騰したり、価格を乱高下させたりするのは見たことがありません。
「ビットコインは金よりも良い」と主張する人もいます。政府の手が入らず、金よりも供給が安定しているというのが彼らの言い分です。金を売ってビットコインを買う人も出てきています。私はそうはしませんが。
──あなたは子供のために金(ゴールド)を保有しているそうですね。
今までのところ、金はビットコインよりずっと安定しています。
金が9000年以上存在しているのに対し、ビットコインはまだできて9年ほどです。金はこの先9000年後も存在し続けるでしょうが、ビットコインが次の9年存在しているかは分かりません。
これは、仮想通貨自体がなくなるという話ではありません。インターネットによって我々の生活が激変したのは確かで、今後はお金もインターネット上に存在することになるとは思います。
中国に行くと、現金がほぼ使われていないことに驚きます。お茶を買うときも、車を買うときも、携帯をかざすだけです。インターネットはお金のあり方を変えるとは思います。
しかし、ビットコインが存在し続けるかどうかは、別の問題です。コンピューターを例にとっても、IBMという会社は、コンピューターを発明したわけではないにもかかわらず、広く知られています。一方、肝心の発明をした会社自体はあまり知られていません。
仮想通貨の世界でも、何かが生き残ることにはなるでしょう。それがビットコインなのか、別の通貨なのかは分かりません。政府は自分でコントロールできないことを嫌がりますから、何らかの形の仮想通貨を作って導入する可能性もあります。
次の「電車」は必ず来る
私はビットコインを逃しましたが、あまり気にしていません。これまでの経験から学んだことは、「何かに出遅れたときは、焦って飛びつくのではなく、別のものを見つけろ」ということです。
走り始めた電車に飛び乗れば、ケガをします。私のやり方は、駅に停まっていてまだ誰も乗っていない電車を見つけ、一番いい席に座って発車を待つことです。
ビットコインを逃したのは惜しいですが、悔やんでも仕方ありません。あまり心配することはありません。次の「電車」は必ず来ます。
【ジム・ロジャーズ】ビットコインへの「駆け込み乗車」はケガの元
「有事の円買い」は続くか
──第2回であなたは安倍首相の経済政策を批判し「辞任しなさい」と迫りました。とはいえ、「日本の経済は良くなっている」と評するエコノミストもいます。
ロジャーズ
確かに、短期的には良くなっています。企業の利益は伸び、株式市場は上向いています。私も日本株を持っているので分かります。
しかし、国民全体のムードとして、それほど活気づいているとはいえません。これは当然です。現在の活況は、人為的に刷られたお金と借金によって支えられているにすぎないのですから。
ジム・ロジャーズ/投資家
1942年米国アラバマ州生まれ。イェール大学卒業後、オックスフォード大学ベリオル・カレッジ修了。米陸軍に従事した後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスと国際投資会社クォンタム・ファンドを共同で設立。10年間で4000%を超える驚異のリターンを実現。37歳で引退し、世界を旅して回るかたわら、コロンビア大学で教鞭を執る。1998年8月に商品先物市場の指数である「ロジャーズ国際コモディティ指数」を創設。現在、シンガポール在住。
──なぜ日本は賃金が上がらないのだと思いますか。
需要が十分にないからです。原油価格が下落して、物価が低下気味なので、賃金が上昇しなくても生活水準が保てているのだと思います。
「自分にもっと金をよこせ」と喚く人が日本にはまだあまりいません。人々がもっと声をあげれば、変わると思います。
──日本株は今後、どう推移すると思いますか。
株価はこれからも上昇すると思います。だから私も日本株を買うのです。日銀が紙幣を刷り、その金で株や国債を買っているわけですから、株価が上がるのは当然です。
──外交面では、北朝鮮を取り巻く緊張が高まっています。「有事の円買い」という言葉がありますが、情勢がさらに深刻化した場合は円高が進みますか。
もし日本が北朝鮮と戦争になれば、円よりも米ドルが好まれるかもしれません。地図を見れば分かるように、アメリカは日本と朝鮮半島から物理的に遠いですから。
しかし、もし戦争が起きたとしても、長くは続かないでしょう。アメリカが北朝鮮に原子爆弾を落として1週間程度で終了、のようになると思います。これは最悪の事態ですが。
その場合、円もドルも高くなります。私はたくさんの米ドルを保有していますが、その理由の一つはこうした「戦争」のリスクを懸念しているためです。
ただ、仮に戦争になって北朝鮮がふきとんだ場合は、円やドルよりも韓国ウォンの方がさらに「買い」だと思います。現在は韓国も北朝鮮も防衛に多額の資金を投入しているわけですが、朝鮮半島が統一されれば、防衛のため無駄にお金を使わなくて済むからです。
これまでかかっていた莫大な防衛費がなくなり、国を発展させるための投資へと使われるようになるため、韓国ウォンは「買い」になると思います。
ビットコインはスタイルに合わない
──2017年はビットコインが急騰した1年でした。仮想通貨に対するあなたの考えは。
私はビットコインを保有していません。ビットコインを買わなかったことにがっかりはしていますが、それは保有していない誰もが思うことですよね。
私がこれからビットコインに飛びつくことはありません。私の投資のモットーは、「周りから無視されているような、安いものを買う」です。ビットコインは現在とても注目を集めていますし、価格も高いですから、私のスタイルに合いません。
──あなたからみた、「ビットコインの本質」とは。
良い質問ですね。私も確固たる答えは持っていません。
ビットコインは、もともと決済手段として出てきましたが、これだけ価格が乱高下すると、通貨としては使えません。そもそも、どんどん値上がりしているため、保有している人は誰も支払い手段として使おうとしません。
ビットコインは、お金を蓄える「価値貯蔵手段」としての役割は果たしていると思います。ビットコインを保有している人は、現に大儲けできているわけですからね。価値貯蔵というのは、砂糖でも、小麦でも、銅でもいいわけですが。
ただ、ビットコインが「安定した」価値貯蔵手段かはまだ分かりません。あと10年ほどすれば、はっきりすると思います。
政府が仮想通貨を発行する?
──ビットコインは、過去にあったどのような投資対象と似ていますか。
私の知る限り、ビットコインに似た投資対象はないです。金や商品のバブルというのはありましたが、本来「通貨」であるはずのものがこのように急騰したり、価格を乱高下させたりするのは見たことがありません。
「ビットコインは金よりも良い」と主張する人もいます。政府の手が入らず、金よりも供給が安定しているというのが彼らの言い分です。金を売ってビットコインを買う人も出てきています。私はそうはしませんが。
──あなたは子供のために金(ゴールド)を保有しているそうですね。
今までのところ、金はビットコインよりずっと安定しています。
金が9000年以上存在しているのに対し、ビットコインはまだできて9年ほどです。金はこの先9000年後も存在し続けるでしょうが、ビットコインが次の9年存在しているかは分かりません。
これは、仮想通貨自体がなくなるという話ではありません。インターネットによって我々の生活が激変したのは確かで、今後はお金もインターネット上に存在することになるとは思います。
中国に行くと、現金がほぼ使われていないことに驚きます。お茶を買うときも、車を買うときも、携帯をかざすだけです。インターネットはお金のあり方を変えるとは思います。
しかし、ビットコインが存在し続けるかどうかは、別の問題です。コンピューターを例にとっても、IBMという会社は、コンピューターを発明したわけではないにもかかわらず、広く知られています。一方、肝心の発明をした会社自体はあまり知られていません。
仮想通貨の世界でも、何かが生き残ることにはなるでしょう。それがビットコインなのか、別の通貨なのかは分かりません。政府は自分でコントロールできないことを嫌がりますから、何らかの形の仮想通貨を作って導入する可能性もあります。
次の「電車」は必ず来る
私はビットコインを逃しましたが、あまり気にしていません。これまでの経験から学んだことは、「何かに出遅れたときは、焦って飛びつくのではなく、別のものを見つけろ」ということです。
走り始めた電車に飛び乗れば、ケガをします。私のやり方は、駅に停まっていてまだ誰も乗っていない電車を見つけ、一番いい席に座って発車を待つことです。
ビットコインを逃したのは惜しいですが、悔やんでも仕方ありません。あまり心配することはありません。次の「電車」は必ず来ます。
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