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2015年10月25日

2009年9月 ある日突然に

入院中は暇なので別の部屋の人の名前を見て歩いていたら、心当たりのある名前が2人見つかった。
なんと同じ会社の他部署の知り合いが、同じ階に2人入院してきていたのだ。一人は個室、もう一人は4人部屋だった。個室の人は3日間の入院。小さな腸のポリープの切除。もう一人は胃癌だった。
2人の男性は挨拶に行ったらびっくりしていた。男性達は会社で見るより頼りなく不安気な様子だった。

他人だが個室にいる患者の中に、大きな声を出す年配の男性の患者がいた。院内の廊下に響き渡るほどの声を出す。大声が出るなんて元気だ。どうも構ってほしいようだ。日中はたまに車椅子姿でナースセンターにいることがあった。ナースセンターにいるとおとなしく静かで機嫌が良い勝手なジジイだ。病気になると、案外男性のほうが弱さを見せるものなのかもしれない。

私はドレーン引っ掛けによる膵臓の炎症で点滴だけの絶食生活が1週間続き、手術後3週間が経過した。
外科医は変わらず毎日様子を見に来てくれた。何度かドレーンを少しずつ短くするミニ手術のようなものをして様子を見た。膵液漏は減る様子がない。しかし目には見えないが間違いなく膵臓は治ってきているのだ。。

同室の患者は次々に退院していき、4人部屋に残ったのは胃癌の女性と私の2人になった。胃癌の女性は手術後も自分で起き上がらろうとせず寝たきり状態を続けた。手術後は一日も早く自分で立ち上がりリハビリに励み体力を付けなければいけない。もう十分に自分で立ち上がれるのに、この女性は寝たきりでいつも看護師や付き添いの男性を顎で使ったのだ。お蔭で床ずれができ、退院が伸びた。

先に退院していった年配の女性が、退院間際に胃癌の女性に「もっと自分で何でもしないと、治る病気も治らないよ」と注意した。その年配の女性は私に「これでちょっとマシになるかもね」とにこっと笑って退院された。
そんな胃癌の女性も退院が決まった。4人部屋に私一人になる。この後ろ向きな女性よりも早く退院したかったが、私の膵液漏れはまだ続いていた。残念だ。
胃癌の女性は退院が決まったのに、さして嬉しそうな様子はなかった。私は嬉しそうでもない女性におめでとうと祝う気持ちになれず、凹みながらさっさと寝た。

翌朝起きると、いつも膵液が200〜300ccほど貯まっているバッグに、膵液が殆ど無い。看護師さんが膵液を早く回収したのだろうか?と一瞬考えたが、そんなことはないだろう。
ひょっとして膵液漏が止まった?!嬉しくて声を出しそうになった。血圧と熱を測りにきた看護師さんに膵液のバックを見せ、「膵液が全然貯まってないんです!」と報告した。看護師さんも「ほんとだ!もしかすると止まったのかもね」と喜んでくれた。外科医にも膵液が貯まってないことを確認してもらった。外科医は明日の様子を見ましょう。明日が楽しみですね。とにっこりと笑ってくださった。

その日は一週間に一度の院長先生の回診日だった。先週の回診時、院長先生は私に「止まらない膵液漏は無いからね」と励ましてくださった。今回の回診で膵液が殆ど貯まってないことを報告すると、院長先生は「もうすぐ退院できるかもね」とにっこり笑ってくださった。「退院」。一番聞きたかった言葉だ。
その日は一日経っても膵液は殆ど出てこなかった。

徐々に膵液の量が少なくなると想像していたが、こんなに急に少なくなるものなのだ。とうとう膵臓の傷口が塞がったのだ。見舞いに来た旦那にすぐ報告し膵液のバッグを見せたが、旦那は疑心暗鬼な様子だった。明日になったらまた膵液が増えているのではないかと思ったようだ。
私は退院したら何を食べよう?会社では9月末に期末のまとめ資料の作成が必要だ。間に合うかな?急に退院が現実味を帯び、退院後にしたいことをあれこれ考えて夢心地になった。
明日も膵液漏が止まっていますように・・。祈るような気持ちで就寝した。

翌朝起きると、やはり膵液は殆ど出ていなかった。本当に止まったのだ。
外科医はもう退院できますよと言ってくださった。いつできるのか聞いたら、明日以降なら良いという。ドレーンも今日外してくれるというのだ。ドレーンを外した翌日に退院できるとは予想していなかった。
私は明日の午前中退院することに決めた。とにかく早く退院したかったのだ。胃癌の女性も明日退院が決まっていたので、同時に退院することになる。

ドレーン(管)を外すのは、あっけないほど簡単だった。ドレーンを外した後は大きな絆創膏1枚だけだ。
あまりに簡単なので「こんなので大丈夫なんですか?」と聞いたら、注意事項はお風呂に入る時は絆創膏の上にビニールの水防止テープを上から貼ってシャワーし、暫くは湯船に浸からないことと、重い荷物を持たないことぐらいだった。中から液が漏れたら絆創膏を貼りかえるだけで良い、自然に皮膚は閉じるのだという。
一ヶ月近く空いていたドレーンの穴がそんな簡単に塞がるとは。膵臓と臍の右横5cmほどを繋いでいたドレーンの道は自然に無くなるのだそうだ。人間の体はよくできている。

ドレーンから約1ヶ月ぶりに解放された。もう私の体は何の管とも繋がっていなかった。もう何処に行くにも手ぶらで歩けるのだ。ドレーンがあると寝ていても管が気になるし横になって寝れず腰が常に痛かったが、今日からはベッドで右を向いても左を向いても良いのだ。

医師にあと一日ですが、普通食を食べては駄目かと尋ねたら良いという。退院日の朝食は普通食に変えてもらった。やっと普通の食べ物が食べれる!夢のようだった。会社の上司や関係者に明日退院するとメールを打った。ベッドの周りの自分の荷物をまとめ整理した。明日の午前中に私は退院する。私はこの日の夕方、我慢できず病院の喫茶室で一人で久しぶりにミルクコーヒーを飲んだ。胃に浸みるような美味しさだった。
明日の病院の昼食はもう要らない。旦那と外で食べて家に帰るのだ!
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