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2015年10月23日

長引く入院中に知ったこと

インスリノーマの手術後二週間経っても膵液漏は止まらなかった。
同室の人達は手術後一〜二週間で元気に退院していき、患者が入れ替わった。
私は置いてけぼり状態だった。この膵液漏、いつまで続くのだろうか・・。

外科の担当医は毎日私の様子を見に来てくださった。時には手術後すぐに駆けつけたのではないかと思う恰好の時もあった。膵液漏は続いていたが、ドレーン(管)を少しずつ短くする(抜く)ミニ手術のようなものを数回受けた。担当医は外科医らしく、手術や治療に明け暮れておられる方だった。
いつもは白衣や作業着の担当医が、ネクタイ姿で部屋に来られた時があった。「お出かけですか?」と聞いたら、これから学会に行くと言われた。
先生が部屋から出ていった後、同室の年配の女性が「今日は先生、ええカッコやったね」と私に声をかけ、一緒に笑った。同室の女性達はみんな、私の担当医は毎日様子を見に来てくれて羨ましいと言った。
同室の人は乳癌、子宮癌、胃癌の患者で全員違う担当医だが、確かに毎日様子を見に来てくださるのは私の担当医だけだった。みんなが言うように膵液漏れが続いていても、先生が様子を見に来てくださるだけで心丈夫で救われた。

手術後すぐにお見舞いに来てくれた友達や会社の上司がいる。私は熱と気怠さで起き上がれず寝たきりだ。手術後に着替えた浴衣姿でいかにも「病人」だった。やつれた姿を見られるのは身内以外は嫌だった。特に男性に見られるのは辛い。私も病人とはいえ女性だ。

旦那は毎日見舞いに来てくれた。ナンプレの本を持ってきて、一緒に解いて遊んでくれた。
義父は一週間に一度、往復3時間の道のりを杖を付きながら見舞いに来てくれた。花瓶に花も持参してくれた。今でもリビングには義父から貰った花瓶があり、花を飾ったりしている。実の両親も体調が悪い中、見舞いに来てくれた。親戚の叔父さん、叔母さんも。身内、親戚とは有り難いものだ。

手術後二週間以上経ち体力が回復してくると、お見舞いに来てくださる方がとても嬉しかった。
会社の先輩女性は週に一度、会社の帰りに漫画の本を持って来てくれた。長編の漫画で、@〜D巻の5冊を置いて帰り、次に来る時は続きのE〜I巻を持参し、読み終えた@〜D巻を持って帰ってくれる。
会社では周りからは厳しい、怖いと恐れられた先輩であったが、私にはいつも優しい先輩だった。
会社で仕事を教えてもらい、病院では見舞いで励ましてくださった。こんな先輩は、なかなかいないのではないだろうか。見舞いの度に、会社での色んな出来事も話してくださり、先輩が訪ねて来てくださるのが待ち遠しかった。
会社の上司や同僚らも沢山来てくれた。ちょうど同僚(女性)らが見舞いに来ている時に病室に看護師の若い爽やかな男の人がいたことがある。看護師が部屋を出て行った後、話題でもちきりになった。カッコいい看護師に面倒を見てもらえて羨ましいと言うのだ。私がそういえば内科、外科の主治医も男前だと話すと、ますます盛り上がった。異性として見れるというのは、心身共に元気な時なのだろうなと後に感じた。

学生時代からの友達も代わる代わる訪ねて来てくれた。薬剤師をしている学生時代からの友達が、お見舞いに美味しいふりかけを持ってきてくれた。暫くの間、ふりかけのお蔭で味気ない食事がすごく美味しく食べれた。その友達は私の病気を知った時、混乱で取り乱すほど心配したと涙ぐんで言った。そんなに友達が私のことを心配してくれているとは思っていなかったので、正直驚いた。この病気で私が急死しても、泣くのは親達と旦那ぐらいだろうなどと想像していたのだ。私一人ぐらい死んでも、大したことはないだろうと。

私は自分の想像以上に、周りの人から大切に思われていた。深刻な病気になったお蔭でわかった。
私はとても人に恵まれていると身に染みて感じ、感謝した。
旦那とは恋愛結婚をした。恥ずかしい話だが、病気になったことで「この人と結婚して良かった」と心から感じた。結婚後毎日幸せな日を暮らしていたのに、旦那の存在が当たり前すぎてその有難みに気づかなかった。私の病気を一番心配し、迷惑をかけ、発作から守ってくれたのは旦那だ。毎日発作の時に旦那が世話をしてくれていなかったら、今頃私はいなかったかもしれない。

色んな人が見舞いに来てくれたお蔭で、励まされながら入院生活が続いた。
そんな時、トラブルが起こった。
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