介護保険施設に入居すると毎月どのくらいの費用がかかるの?入居の要件は?
自宅での介護サービスを利用してきたが、「介護度が進み自宅での生活が大変になってきた」、「本人の希望で施設サービスを利用したい」、「家族の負担を軽くしたい」など、いろいろな要因で介護施設の利用を考える場面があると思います。
かといって、有料老人ホームは、入居時に大きな一時金が必要であるばかりか、月々の負担も大きく、有料老人ホームは、相当な準備がなければ踏み切れません。
介護保険施設の場合は、入居時の一時金が要らないばかりか、月々の負担も割安であるため、家族の負担軽減やリハビリ目的の一時的利用も含めて検討することは、永い介護生活の乗り切り対策にもなります。
今回は公的介護施設の利用方法や費用面での検証してみますのでご参考になれば何よりです。
目 次
- 公的な介護保険施設にはどんな種類があるの?
- 「特養」「老健」等の公的介護施設の特徴と入居基準
- なお、「地域密着型サービス」にも類似の施設介護があります
- 「特養」「老健」「療養病床」等各施設の入居費用の目安1.各施設の利用に伴う費用項目2.居室タイプにより「施設介護サービス費」や「居住費」が異なります
- 【特別養護老人ホームの月々の負担費用の目安】
- 【介護老人保健施設の月々の負担費用の目安】
- 【介護療養型医療施設の月々の負担費用の目安】
- 【介護医療院の月々の負担費用の目安】
- 最後に!
|
公的な介護保険施設にはどんな種類があるの?
介護保険サービスが受けられる公的介護保険施設(社会福祉法人や医療法人等が運営)には、
・「特別養護老人ホーム(特養)」
・「介護老人保健施設(老健)」
・「介護療養型医療施設(療養病床)」
・「介護医療院」(療養病床から移行進む)
があり、これらを「介護保険施設」と呼びます。
(この他にも、「地域密着型グループホーム、」等があります)
必要とする介護の内容によって入所できる施設が違います。
「施設介護サービス」とは、「介護保険施設」に入居して受ける介護サービスです。
「特養」「老健」等の公的介護施設の特徴と入居基準
「施設介護サービス」は、施設に入居して24時間の介護を受けられるサービスです。
・入院後やリハビリで療養や機能回復のため短期的に施設で介護やリハビリを受けたい
・自宅介護で時々ショートステイを利用しているが、もう少し長期間、施設で介護を受けたい
・自宅介護が難しくなってきたので、しばらく介護施設で介護を受け機能回復に専念したい
・長期的に介護施設で介護を受けたいが有料老人ホームは費用的に無理
などといった場合は、まず、公的介護保険施設の利用を検討しましょう!
各施設の特徴や入居要件等は下表の通りです。
いずれの施設も、入居要件や入居期間の定めがあります。
なお、「特養」は、永年入居可能で入居時に一時金の必要性がなく月額利用料も有料老人ホームに比べて割安なため満室が多く、待機者が多いのが通常になっています。
このため、急には入居できない可能性が大であることに注意が必要です。
また、「老健」は3か月の期間限定ですが、3か月の自宅介護の後、再度受け入れてくれる可能性が高いので、自宅介護で何とか凌げる状況の場合は、過重な家族の負担軽減と本人の自宅願望を叶えるために「老健」の利用をおすすめします。
これにより、「特養」や「有料老人ホーム」への転居を凌ぐことができ、自宅での生活ができるだけ永く続けられます。手続きは少し煩わしいですが、是非活用されることをおすすめします!
<各施設の特徴・サービス内容・入居基準等>
特徴 |
サービス名 |
入居基準とサービス内容 |
「終身」入居 |
特別養護老人ホーム(特養)
※「介護老人福祉施設」とも言う |
「常に介護が必要で、自宅での介護が困難な方対象」の施設で、 食事や入浴などの日常生活の支援や機能訓練、療養上の世話などを受けることができる。
原則として、「要介護度3以上」が入居要件。
但し、要介護度1〜2の方は、やむを得ない理由(世話する家族がいない、一人暮らしの認知症の方等)などで入居できる可能性もある。 |
「期間限定」入居 |
介護老人保健施設(老健) |
「在宅復帰を目指している方を対象」とした施設で、 医学的な管理の下に医療や介護、リハビリなどが受けられる施設設です。
3か月が限度。但し、期間を開ければ再入居は可能!(従って、3か月施設利用、3か月自宅でデイサービス等利用、再度施設利用等で繋げていければ家族の負担軽減に繋がる)
原則として、「要介護度1以上」が入居要件。
「要支援1〜2の方」は利用することができません |
「療養」期間入居 |
介護療養型医療施設⇒介護医療院へ転換 |
「長期に亘って療養が必要な方」を受け入れる施設です。(普通、入院先病院での療養が長引けば病院で紹介されます?) 必要な医療や介護、リハビリテーションなどを受けることができます。
原則として、「要介護度1以上」が入居要件。
「要支援1〜2の方」は利用することができません
なお、「介護療養型医療施設」制度は廃止され「介護医療院へ順次移行中。 |
※補足
「指定」有料老人ホーム |
特定の指定を受けた有料老人ホーム |
介護保険適用の施設サービスに該当しません。
但し、自治体から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている有料老人ホームは、「介護付き」と呼ばれ、介護サービスに介護保険が適用され、提供される介護サービスのぽとんどを「定額制(包括報酬)」で受けられる。 |
なお、「地域密着型サービス」にも類似の施設介護があります
「地域密着型サービス」は、要介護高齢者や認知症高齢者が、介護度が重くなっでも、住み買れた地域でいつまでも生活でさるように創設された介護サービスです。
市町村により指定された事業者がサービスを行い、その地域に住む住民が対象となります。
「地域密着型サービス」が非常に充実してきており、こちらのサービスを利用した方が、本人も家族も地域に密着した生活が過ごせるようなので、是非「地域密着型サービス」も併せて検討されることをおすすめします!
<「地域密着サービス」における施設介護サービス>
類型 |
サービス名 |
サービス内容 |
施設介護サービス類似 |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) |
・認知症高齢者が5〜9人の少人数で利用者が家事を分担するなど共同生活をしながら日常生活の支援や機能訓練のサービスを受ける。
・「要支援1」は利用できないが、「要支援2」は、介護予防として利用可能 |
※補足 特定施設 |
地域密着型特定施設入居者生活介護 |
・入居定員が30人未満の軽費老人ホームや有料老人ホームのうち、指定を受けた施設で、日常生活の支援や機能訓練などを受けることができます。 |
施設介護サービス類似 |
地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護 |
・定員が30人未満の「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」です。
・「特老」と同様に、常に介護が必要な方を受け入れ、日常生活の支援や機能訓練などを行います。 |
「特養」「老健」「療養病床」等各施設の入居費用の目安
いずれの施設も入居時に一時金は不要です!
また、基本的には各施設には、ベッドや簡単な家具は備え付けられていますので初期費用は不要です。
従って、各施設で負担する費用は、月々の利用料や生活費に相当するもののみとなります。
1.各施設の利用に伴う費用項目
費目的には、月々の「施設介護サービス費」、「同加算(設備やプラスサービス等に伴うもので施設によるためここでは算定に入れず)」、「居住費(家賃に相当)」、「食費(1日3食)」、「日常生活費(理美容、レク代等)」等で構成されます。
各費目の算定基準
費用項目 |
算定基準 |
施設介護サービス費 |
24時間体制ケアで受けられる介護サービス費で要介護度、部屋タイプで決められている。
後ほど紹介する「施設介護サービス費」の数値は、「1割負担」の場合の計算値です。 |
同 加算費 |
当該施設での特別な設備費や人員体制増強等で付加される負担 |
居住費 |
家賃に相当、部屋タイプで負担すべき限度額が定められており、超えた分は保険者が負担します。
また非課税世帯などの低所得者には負担軽減措置が採られている。 |
食費 |
1日3食セットの食事代で限度額が定められており、超えた分は保険者が負担します。
また非課税世帯などの低所得者は負担軽減措置が採られている。 |
日常生活費 |
おむつ代は含まれないが、歯ブラシ、石鹸、化粧品、理美容代、電話代等は、原則、実費負担。 |
2.居室タイプにより「施設介護サービス費」や「居住費」が異なります
◎居室には、施設の造りから「従来型タイプ」と「ユニット型タイプ」があります。
従来型タイプは、各居室(個室や相部屋)が廊下に沿って並べられた造りであるのに対し、ユニット型タイプは、各居室(個室や相部屋)がリビングに接して設置されワンフロア―でユニット(まとまり)が構成される造りとなっています。
居室タイプ
従来型・個室 |
個室 |
従来型・多床室 |
定員2人以上の相部屋 |
ユニット型・個室 |
共用のリビングに接した個室 |
ユニット型・多床室 |
共用のリビングに接した多床個室(天井との隙間がある仕切り区分) |
なお、ユニット型は、10名前後の少人数グループごとに職員を配置するなどコミュニケーション重視の運営になっています。
従って、ユニット型の方がファミリー的な雰囲気で生活できるのでそういう雰囲気を好む方にはユニットがおすすめです。
また、ユニット型は個室が多いため居住費が若干高いので入居待ちが少ない傾向にあります。このため、早く入居したい場合は狙い目です。
◎「施設介護サービス費」は、従来型ホームとユニット型ホーム別に要介護度によって費用負担額が定められている。
施設介護サービス費用
|
従来型個室、従来型多床 |
ユニット型個室、ユニット型多床 |
要介護度 |
日額 |
月額(30日) |
日額 |
月額(30日) |
要介護1 |
559円 |
1万6770円 |
638円 |
1万9140円 |
要介護2 |
627円 |
1万8810円 |
705円 |
2万1150円 |
要介護3 |
697円 |
2万910円 |
778円 |
2万3340円 |
要介護4 |
765円 |
2万2950円 |
846円 |
2万5380円 |
要介護5 |
832円 |
2万4960円 |
913円 |
2万7390円 |
◎住居費、食費には負担限度額が設定されています
住居費、食費については限度額が設けられており、これを上回る部分については介護保険で負担することになり、結局、この限度額が負担すべきMax額となります。
なお、住居費及び食費については、本人を含めて世帯全員が非課税の場合は低減措置が設けられており、本人の所得により下表の通り3ランクに分けて軽減されています。
例えば、居住費の場合、下表でみると、従来型個室は、課税世帯では35,130円の負担になりますが、非課税世帯で本人所得が80万円以下の場合は、12,600円ですみます。
食費も、課税世帯では41,760円の負担になりますが、非課税世帯で本人所得が80万円以下の場合は、11,700円ですみます。
(注意:地域区分は東京1級地を適用、従って、ご利用の地域で若干数字が変わります。2020年8月時点)
【特別養護老人ホームの月々の負担費用の目安】
「特別養護老人ホーム」では、寝たきり状態や常時介護を必要とする重度の要介護者(原則要介護3以上)が、食事や排泄の介助などの介護サービスを受け乍ら、各種レクレーションなども行われ、少ない費用負担で長期(永年)に入所できる公的介護施設です。
入居要件:原則として、要介護3以上(特段の事情によっては要介護1〜2も入居可の)の人を対象とした介護施設です。
※特段の事情例:認知症で一人暮らしのため、常に見守りが必要な場合や同居家族の介護が無理な場合など
特別養護老人ホームの月々の負担費用は下表のようになります。
この表でわかりますように、要介護1の方では、従来型多床室(相部屋)で1か月96,600円で利用できます。
要介護5の方では、ユニット型個室の一番高い部屋で1か月141,800円で利用できます。
もちろん食費込みですので、年金でやっていける可能性がありますね。(年金が少ない方は、低減措置適用で、もっと負担額は低くて済みます!)
【特別養護老人ホームの負担費用月額目安】(要介護別・居室別)
(注意:地域区分は東京1級地を適用、従って、ご利用の地域で若干数字が変わります。2020年8月時点)
【介護老人保健施設の月々の負担費用の目安】
介護老人保健施設は、「要介護度1以上」が入居要件です。
また、療養及びリハビリ目的ですから入居期間は最長3か月となっています。
介護老人保健施設の月々の負担費用は下表のようになります。
この表でわかりますように、「要介護1」の方では、従来型多床室(相部屋)で1か月81,320円で利用できます。
「要介護5」の方では、ユニット型個室の一番高い部屋で1か月136,730円で利用できます。
もちろん食費込みですので、年金でやっていける可能性がありますね。(年金が少ない方は、低減措置適用で、もっと負担額は低くて済みます!)
【介護老人保健施設の負担費用月額目安】(要介護別・居室別)
(注意:地域区分は東京1級地を適用、従って、ご利用の地域で若干数字が変わります。2020年8月時点)
【介護療養型医療施設の月々の負担費用の目安】
病院に入院後のケースが多いのですが、長期療養のための施設です。
従って、療養の必要性がなくなれば退去しなければなりません。 介護療養型医療施設は、「要介護度1以上」が入居要件です。
介護療養型医療施設の月々の負担費用は下表のようになります。
この表でわかりますように、「要介護1」の方では、従来型多床室(相部屋)で1か月80,540円で利用できます。
「要介護5」の方では、ユニット型個室の一番高い部屋で1か月145,340円で利用できます。
もちろん食費込みですので、年金でやっていける可能性がありますね。(年金が少ない方は、低減措置適用で、もっと負担額は低くて済みます!)
【介護療養型医療施設の負担費用月額目安】(要介護別・居室別)
(注意:地域区分は東京1級地を適用、従って、ご利用の地域で若干数字が変わります。2020年8月時点)
【介護医療院の月々の負担費用の目安】
介護療養型医療施設と同様の長期療養施設です。
介護医療院は、「要介護度1以上」が入居要件です。
介護医療院の月々の負担費用は下表のようになります。
この表でわかりますように、「要介護1」の方では、従来型多床室(相部屋)で1か月80,240円で利用できます。
「要介護5」の方では、ユニット型個室の一番高い部屋で1か月146,210円で利用できます。
もちろん食費込みですので、年金でやっていける可能性がありますね。(年金が少ない方は、低減措置適用で、もっと負担額は低くて済みます!)
【介護医療院の負担費用月額目安】(要介護別・居室別)
(注意:地域区分は東京1級地を適用、従って、ご利用の地域で若干数字が変わります。2020年8月時点)
最後に!
以上のように、公的介護保険施設は、在宅介護が難しい、あるいは、在宅介護を続けながら、一時的に、リハビリに集中し機能改善に取り組みたい、一時的に家族の介護負担を軽減したい、などといった際に利用できる施設です。
なお、「地域密着型サービス」にも類似の施設として「地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護」や「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」などもあります。
在宅介護が大変になれば、是非、これら介護施設を有効に利用されることをおすすめします。
なお、施設入居の場合は、一旦入居すると簡単に変更はできないので、施設決定に際しては直接施設に赴いてスタッフと面会し、施設の状況やスタッフの対応、施設の立地、自宅からの距離等を勘案して、他と比較して決定されることをおすすめします!
下記の関連記事もご覧いただければ幸いです。
介護保険制度